前夜暗闘3
前夜暗闘3
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医務室。僕の視点からでは室内にある時計を見る事は出来ない。雲は悠々と動くのに、時間が分からないのは落ち着かなかった。
体は調子は戻っては来ている。けれど、1人で出歩くのは気が引けた。もし1人で外に出て帰って来れないなんて事になるのは僕の性格としては避けたいのだ。
「浮向君、お客さんだよ」
春花車菊花は僕のベッドを隠すカーテンをさっと開けて言うと、また見えない所に消える。
「随分と顔色が悪いな、京介」
僕を訪ねてきたのは新聞部の先輩の方だった。いつもながらに落ち着いた声で僕に毒づく。
「ワワさん、君は元気そうで良かったよ」
彼女は僕の返答に顔をややしかめるが、すぐに普段の無表情へと切り替わる。
「聞いたよ。廊下の窓から落ちたらしいな」
自殺未遂の話はどうやら、他の人に対してそういう風に説明されているらしかった。僕は窓の外をじっくりと観察していたが、勢い余って体が外に出てしまい地面に落下した。運良く落ちていたロープの山に落ちた為、重傷は免れた。
文面にすると、物凄く馬鹿っぽいけれど自殺をするつもりだったんだと事実のまま伝えられるよりかは幾分もましだ。
恥ずかしいけれど。
「そう言う事もある。私だって考え事をして電柱に当たる事もしばしばだ。側溝に足を入れてしまって3歩ほど歩いた事もある。その時は地面で滑って初めて気づいた」
「…………」
「それに君が何を見ていたのか知っている者なら、君の行動を愚行とは簡単には思わない。君はあの窓から怪盗の姿を確認していたのだからな」
「その姿を確認した後に、落下してしまった訳だが結果としてそれに気がついた春花車菊花さんによって見事に落ち着いた」
「それ僕のおかげって言えるのかな?」
「私はそう思うけれど」
ワワさんがそう言うならそうなのかもしれない。ならば、あまり深く考える必要もないか。その姿を想像して自分の鈍臭さに込み上げるものがあるのは僕だけなのだったら。
「それで何故ここに来たんだい。僕の見舞いの為に足を運ぶ程君は良い性格をしていた訳じゃない。そう、僕は認識しているけれど」
彼女の表情が悪い顔になる。僕と怪盗に面倒事を押し付けた時と同じように彼女の性格がストレートに表現された顔。
「私も大分性格の悪い奴として見られているな」
「自分でそう言ったんじゃないか」
「それもそうだな。私は君のお見舞いをするくらいなら、ワワさん式平和パンチをお見舞いする方が性格には合っている」
「痛いのか?」
「痛い。すごくな」
全然平和的では無かった。僕は少し彼女との間に距離を作る。
「……それで何故その平和パンチをしない代わりに、僕のお見舞いなどに時間を割いてるんだ。君は新聞部の活動をするのが優先事項だろう」
「昨日、怪盗が私の部屋を訪ねてきた際に幾つか物品を盗まれたみたいだ。その道具が無いと、何を探すにもあの迷宮では満足には出来なくてな。それを探したい」




