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極刑島8

 牛の胃の一番について思案する女、鳩野和々。


「いや、まぁいい。今、いの一番に考える事は、胃の一番でも無く、イの一番でも無いのだから」

 諦める時にはキッパリと諦めると言った性分なようで彼女はさっとお手上げの態度を取る。


「まぁ、帰って焼肉は食べるのだけれど」と、わわさん。やはり、諦め切っている訳でも無いようである。


「さあ、そうだなさっきは『このツアーで私達が何かを何故探さなければいけないか』のかの何故探さねばならないの部分について話したのだけれど」

 何か鳩野和々、通称わわさんという平和主義者はどこか急ぎ足というか、話し方の順序立てになおも苦労している様だった。必要なのか。


「島に着いてからというのでは遅いのかい?探検は実地に基づいて説明するのが楽な所もあると思うけれど」


「それも一理あるがダメだ。これは無論、島に着くまでにちゃんと話しておかなければいけない事なんだ。何も知らないまま、島に上陸したらおよそ我々は損する形になるのでな。知らないまま見た美術作品に直感的で、視覚的な感動しか生まれない様にそれと対峙する。これから我々が直面するものに対してそう言った意識で当たると言うのも悪くはない発想なんだが」


「美術を楽しむ訳では無いのだろうが、初見の発想というのは重要な観点ではあると思うが、損するのか?」

 僕の言葉にわわさんは考える。


「損すると思われる。もちろん、未だ知らずだが。日数の事と私達が対面するものの事を考慮すると、日数内で行える数十回の調査のうち、一回たりとも無駄にはしたく無いと言うのが私達の意思なんだ」


「幾度と調査に踏み入らないといけないものなんだな、この極刑島のその目的地と言うところは。幾度とって、サバイバルを急にやれと言われても無理だぜ。準備をしてさえいない」


「無論、10万円払って野宿やらをする訳では無いのだから、住居スペース自体は確保されているはずではあるんだけれど、実際に住人もいる様だしな。彼とかがまさにその様だし」

言いながら、運転席にいるキズキ青年を指さす。


「それに、わわさん。極刑屋・四罪ヶ楽王断も住んでいるはずだ」


「それはそうだな。それこそ、野宿などは間違いなく無いだろう。戦国時代以前からのあらゆる戦いの後の遺恨を解消する処刑人一家・四罪ヶ楽だものな。およそ、金にはことかかんはずだ」


「デカい屋敷でもあるんじゃないか?」


「あるかもな、1人で住むサイズでも無いやつが。かの四罪ヶ楽王断、噂では見栄を張るタイプの様だしな期待を超えてくるかも知れない、常人の我々の位なら。しかし、屋敷はどれ程大きくても構わないんだ」

重ねて、わわさんら住居スペースには全くもって興味を示していない様だった。まるで、知識を持ってこなかった僕にとって彼女のその判断というのがどこから来ているものなのか判別が不可能だった。島の探し物なら、居住地に何かヒントとなるものが飾られていても不思議では無い。そもそも、人類はかの島に踏み入る事などほとんど敵わなかったはずだ。たとえ、踏み入れたとしても生きて帰れる予定があったものなどいないはずだ。


 探し物をするにして情報が少なくても良い場合があると思えない。金を探すには火山や水脈から金脈の在処を探る様に、殺人事件の犯人を探すのに証言や、証拠を探す様に、ヒントが少ない方が良いとは思わない。


「私だって、全てを隈なく探したいと思うのだけれどな。私たちが探している物というのは、およそそう簡単には見つからないはずだ。というより、見つからない様に出来てる。見つかってはならない様に出来てる」


「見つかってはならない様に出来てる?」


「私達には出来る限り見つからない様に、彼等から見つかってはならない様に出来てるってことだ」


「分からなくなった。何を探しているんだ、君達が探している物は不倫の証拠やパパラッチのようなセンシティブなものでは無いはずだろう?であれば見つからない様にとはなんだ。まさか、生物とは言わ無いだろう。無人島でも無い、そんな島で」


「それがそうらしいんだ。私達も疑心暗鬼ではあるんだが、それが生物と言うのかは不明ではあるのだが何せ目的の噂というのがそもそもだからな」


「そうだ、その噂とやらをさっさと教えてくれないか。そうすれば自ずと意味も理解できるだろうから」

その言葉に対して、鳩野和々は意を決するといった態度で迎える様だった。何がそこまで言い辛いのかは本当に謎だけれど、それらも丸めて、ひっくるめて答えを聞けば、早かろう。


「そう、これが河童とか、のっぺらぼうとか、ろくろ首だとか、化け猫だとか、鵺だとかなら話やすいんだけれどね」

「その島に関する噂。存在を疑われている生物というのは、この国の古来のと言うでも無い。全くの外側の生き物、伝説。それも聞いて驚く西洋の怪物、ミノタウロスなのだと言うのだ」



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