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親子の塔9



 獄道教。


 元仏教系派生宗教、あの獄道教か。今朝方、僕が住んでいたあのアパートの一室に尋ねてきた人物。それが信仰していた宗教であるところの獄道教であると言うのだろうか。


 何の因果だ。偶然か、何の引き合わせだ。


「どうかしましたか?」


「久方ぶりに聞いた宗教の名前だったので、思い出すのに手間取っていただけですよ」


「そうか。君はこの宗教を知っていたか」


「…………」


「有名な宗教では無いかもしれないが、一時期は少々の名を馳せた」


「僕が生まれるよりも前の話ですよね。故に詳しくは知りません」


「私が生まれるよりは後の話だったよ。だからと言って詳しく知っている訳ではないが、けれど獄道教はあの時代、力を持っていた。宗教の根本が、根元が、成り立ちが、とても革新的で革命的だったからではなかったし、極めて優秀な先導者の元成り立っていた訳ではなかったが」

「君も聞き及んでいるかな、大蝋翼機刻、彼の親はその獄道教の信者だった、両親共に実に信心深かった。まぁ、宗教など浅深は様々あれど、平たく見れば珍しくもない。誰が信仰していようと変な話でもない」

「大蝋翼機刻は発明の天才だった。この宗教の最盛期ですら、彼はまだ中学生の齢で言われるままに自在に物作りに励んでいたらしい。しかし、それに限界が来た、世界は随分と合理的に回っていて、高い所から低い所に落ちるのは道理であり、それがひっくり返る事は許されない」


「四罪ヶ楽王断の執行ですね」


「そう言う事だ。どこの差金でどこの命令かなど、どの執行でも知りはしないが、どこかからまたバランスを取るための行動を取らされた。王断は獄道教の2番目の開祖を殺して、大蝋翼機刻の身柄を確保した」

「そこからは堂山銅鑼、彼も知る所だから何も言うまい」


 四罪ヶ楽。獄道教。大蝋翼機刻。極刑島。手紙。相続金。そしてミノタウロス。


 何やら情報が多い。整合性がうまく取れていないし、繋がりもやけに不明瞭だ。けれど繋がっている。噂が現実に繋がろうとしているのだ。


 ミノタウロスが噂から、印へと現れる。過去から現在へと近づいて来ている。


「と、まぁ、こんなところかな。十分な情報共有だった」


「えぇ、まぁ」


「ふぅ……私は言葉にし、君も言葉にし、己の中にある情報を整合させてまた相手に返還した。私はそうやって音にしないともう一つ理解の深みへと落ちるのが遅いから君を利用させてもらったよ」

「さて、とりあえず私の話はまとまった、故に次は君の本題だ。別に長々話すつもりも無いが話をしたからには避けれないからね」

「では君の極刑の話だ」


 本職、彼女はその真なる意味を十分に噛み締めて、相対する僕に力強くそう言葉にした。


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