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親子の塔7



 この国では7年間。行方不明になってから7年間が経てば、失踪宣告をする事ができる。平たく言えば、法律上死亡を確定させる事ができる。


 申立人の権利がある者を挙げれば、配偶者、相続人、そして財産管理者が該当する。


「私はここの管理者として四罪ヶ楽王断に任された存在だ。だからこそ、今の配偶者としての権利がある四罪ヶ楽真空は私にこの話を通しに来た。あの人だって自分の仕事があるし、事を荒げたく無い気持ちがあるのだ。長引かせるのも双方にメリットはない」

「彼女はこう言った、『ワタシ達は四罪ヶ楽王断を殺す権利を持っている』と」


 表現の仕方は色々あるかもしれないが、確かに人を殺す権利と言える。それが終われば、確かに相続が始まり、完全に全てが凍結されて、故人が関する生きた部分も誰かのものになっていく。


「四罪ヶ楽真空、彼女が何をやっているか。知っているかい?」


「いえ、何も」


「彼女はデザイナーなんだ、その道では有名な。彼女の嗜好は世界の嗜好にもなると言われるほどの人で、故に世間に出ることなど稀だ。世界で一番、外見より中身だけを見られた女性かもしれない」

「彼女には彼女なりのブランドイメージがあり、それは彼女そのものと言っても良い。明らかにブランドが彼女であり、彼女だけがブランドの中身を表現している」


「彼女はそういう理由で、公には出来ない事が多いという訳ですか」


「そう言う事だ」


 引く手数多の引っ張りだこ。彼女のデザインは世界の規律を一変させうる。春花車菊花は重ねてそう言う風に表現する。誇らしげと言うよりかは、彼女の事実を個人同士のフィルターを通さず純粋に述べた様である。


「でも待ってください。しかしながら、それはまた妙ですね」


「妙?」


「はい、彼女は有名なデザイナーで自分という存在が世界的に見てもかなり堅牢に確立されていると僕は認識しましたけれど、でも何故ならば、そこまでして四罪ヶ楽王断の相続を強く意識しているのでしょう。外に出る事を出来るだけ避ける当人が出張るまでして、僕にはそのバランスが分かりません」


 彼女は僕の顔をまた見る。顔から下って、首を見る。首で視線は止まって、それを半周ぐるっと見る。僕の首は随分と白く細い、視線を切る様に自分の首を左手で撫でる。


「……もしこの国の中に優遇されている名前があるとすれば、君は信じるかい?」


「えと、それはその苗字を持っているだけで優遇されるという意味ですか?」


「そうだ」


「にわかには信じられませんね。名前を持っているだけで優遇されるというのは、この実利だけで回っているはずのこの国においてメリットが少ない。連続する信用のおける内部での世襲、金銭的な権力などを有する財閥などとは、どうあろうと内部にはメリットがある。基本、ルールは動かす側に利がある様に回っている」

「けれど、名前などで決めていればそれはいずれ破綻する」


「だからもしもの話なのだよ、それだけで優遇措置をとってくれる集団が存在し、独立した巨大な組織があるとすれば君はそこにあやかりたいと思うかい?」


「もし、そうであるならば。確かにそれは生きやすくはなるかもしれない。ぼんやりとした誰かの庇護と言うのは」


 彼女は僕の顔を見て、笑む。机の上で手を組む。

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