親子の塔1
29
螺旋階段を下る。また番人の背中が僕の視界の前に来る。僕と怪盗はその後に続く。
「床はもうすでに動き終わっている。お前達が予想した通りに15度の角度を毎時間刻む」
階段の最後の段を降りると、廊下が続いている。されど、床に空いている穴は存在しなかった。例の不可思議な壁だけが廊下の先にあるだけのシンプルな細道。
壁の前に番人は立つ。何やら、その背中を観察していると目の前の壁を張り手で突き飛ばしてしまいそうな気配もあるけれど、それをすると取り返しがつかないと言う所では無い。
製作者がいない今、無闇に破壊するのは面倒が多い事はこの番人はよく知っている。だから普通にポッケに手を突っ込むと鍵を取り出した。彼の手の大きさからすれば、小さすぎる棒状の鍵を壁にあった鍵穴に差し込む。
迷宮にある鍵穴を見るのはこれで2度目になる。これはこれは、もし自分で探すとなると1時間程度では足りないな。
ガラガラと動き始める壁は砂埃を下に落としながら、上へと吸い込まれる。
「じゃあな、もう2度とここへは戻ってくるんじゃ無いぞ」
言い捨てて番人は闇の中に消える。
僕らはゆったりとまた方角を忘れることなく、中央を目指していく。この時間でも中央へ向かう道のりは簡単に判断が出来た。間違っている分かれ道までは遠く、近い分かれ道に間違いはない。
間違いはないのだから、すぐに中央の螺旋階段に到着した。そこに新聞部の2人が待っていると予想したのだが、それに反して彼女達が待機している現実は無かった。
彼女らの痕跡が無いどころか。彼女達の物品である所の、僕らを支えていた縄は未だに外側へと真っ直ぐに伸びている。
割とそこらの回収は適当なのか。
「怪盗、縄を回収する。少し手伝ってくれ」
「もう必要無いのかい?」
「大丈夫だ、このまま伸ばしていても利用方法は無いさ」
僕はそんなふうに怪盗に説明しながら、縄がどこに縛られているかを確認する。縄から螺旋階段までを見回して、その根本を探す。
螺旋階段のある中央の円形部。そこには階段の部分でない床に穴が空いている。そこに繋がっていた。
「螺旋階段の軸の中に金属の棒が突き立っているのか」
迷宮の機軸に乱立する多くの煉瓦造りの柱の中にもこの様な棒が真っ直ぐ立っており、それを軸にしてこの全体を動かしていると考えるのが妥当かな。
結び付けられた縄を少し手を伸ばして取り外す。これは縛るのより、外す方が骨が折れそうだ。それに気がついて、彼女達はそのままにしていったのか。そもそも任せるつもりだったのか。
怪盗はすぐに伸び切った縄を引き終える。丁寧に何重の円に巻き取っていく。
「とりあえず、階段の上にでも置いておこう。また戻ってくるのは分かり切っている訳だし」
簡単に言葉をまとめて、上へと階段を登り始める。




