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28.


 いつ起き上がるのがベストなのか、自分に問いかける。もう何分も前に目は覚めていたのだが、先程あんな醜態を晒して、手も足も出ず背負い投げに近い一本を完璧に取られて、気を失ったのだから仕方ない。


 完全にタイミングを損なった。どうしよう。


 半目で周りを見る。堂山銅鑼と名乗った巨体の男と浮向京介が向かい合って話している。未だチカチカとする頭で彼らの会話を聞いていたが、徹頭徹尾話を記憶する事は出来た。


 これと言って、情報は引き出せてはいない。極めて協力的で無駄話はしない2人でミノタウロスへ辿り着く為に必要な会話を繰り返しいる。


「で、薄目でこっちを見ている怪盗さん、そんな事を想起しないで起きてくれ。もう帰る時間になるのだからな」


「気づいていたのか」


「気づいていたさ。お前の性格だから、すぐに起き上がる事は無いだろうと踏んでいたし、本気で隠すつもりも無かったのだろう?」


 時刻はここへ来てからもうすぐ1時間が経とうとしていた。堂山銅鑼も体を座り続けて固まっていた体を腕、背中へと稼働させる。


 怪盗もまたヒョイと体を軽やかに起き上がらせると、巨躯の番人を一瞥する。


「俺は影路陽牢、怪盗だ。無論、とびっきり最上級のな」


「最上級か、笑わせるな」


「冗談のつもりは無かったが、今は仕方がない。冗談は過去と未来に影響されて、その意味を逆転させる事もある。実にロマンだろう、そうなれば」


「そうなれば、な。」


「そうなるさ」

 番人の言葉をいつものように飄々と怪盗は避けていく。


「怪盗など馬鹿馬鹿しい。誰に教わったのか知らないが、子供のお遊びなら辞めておけ。老人の忠告だ」


「ロマンは年齢も性別も選ばない。等しく平等に与えられた自由だ、なればこそロマンで、だからこそロマンだろう」

 僕は彼らの会話の断片を少しずつ理解する。彼らの中で僕の知りえない共通認識があるのが分かる。

 口を挟む気にはならない。死ぬ前に知りたい情報など、ある訳がない。興味を持ってしまって、気持ちが揺らぐのも好まない。


「時と場所を考えろ。ここは四罪ヶ楽だぞ」


「だから、ここに来たのだろう。ロマンが眠る、この島に」


 番人はやや冷たく投げるような笑いを怪盗に向ける。目は合わせていない。


「やはり、色々な奴がこの島には来ている様だな、好ましくない。さぁさ浮向京介、もう1時間が経つ、帰る時間だ。そこのもやしみたいに細い男を連れてな。そこまでは送る」


 初めて、番人は僕の方を向いた状態で立ち上がった。巌の様に大きい形がやや姿勢の悪い前傾でこちらに向かう。


「行くぞ」番人の低い声が鈍く発され消える。

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