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「1週間、そんな馬鹿な話があるのですか」


「そんな話があったのだ。この世界には天才がいる。約10年前の伝説の殺し屋が、一昔前の義賊の大泥棒が、少し前に死んだ黒く巨大な小説家が、そして四罪ヶ楽王断がそうである様に、大蝋翼機刻もまた発明の天才だった。この世界はそういう世界だ」


 出来てしまっていたと番人は語る。黒々とし、上からその他を見下ろす為にできている様な塔の形をした城。


「四罪ヶ楽王断、その当人は姿を気に入っていた。中にどう言った仕組みがあるかなど一切気にする事はなく。おれ達にそれぞれの仕事と居場所を割り当てた。用途不明の部屋がやけに沢山存在するのはその為だ。そもそも使う人間の意図に沿うはずも無かった」


「ではこの建物の構造は語るまでもなく、皆知らないという事ですね?」


「まぁ、そうだ。しかし誰だってそうだろう。どんな家に住んでいようとその建物の姿を本当に全て知っているのは、それを建てた人間だけなんだ。おれ達は知らない、自分の生活における最低限以外には詳しくはな」

「もし、『ミノタウロス』とやらが隠された空間に存在しているというのなら無論話は別だが。おれはこの建物の分かる限りの整備と迷宮内の巡回を仕事としている。それでも迷宮内にはそれは確認出来ていない、信用してくれて構わない」


 至って冷静に紅茶を啜りながら語る。嘘を吐いている、何かを隠しているという感じは見受けられない。頑として誠実をこちらに表現している。


「ではそうですね。そのこの島を所有していた悪徳団体というものの事はどれくらい知っていますか?」


「さぁ、おれは四罪ヶ楽王断に付いていると言っても、関係性はただの罪人だからな。あれがどんな仕事をしているかなど多くの場合知る事は無い。そこらは罪人では無い奴に聞くべきだ」


「罪人では無い人とは、春花車菊花さんですか」


「そうだ。あれだけは関係が違う、正確にはキズキも違うが。彼女は特別だ」


「なるほど」


「まぁ、しかしミノタウロスと言ったか。大蝋翼機刻の性格を鑑みれば、それを生み出そうと言うのは不思議では無いとは思うがな。奴は未だこの世に存在しない事象を存在させる事に執着する人間だった。そう言うところもまた、天才にして、四罪ヶ楽王断に気に入られた部分だった」


 神話には存在する生物ミノタウロス。そもそものところ、ここが東の海であれなんであれ、存在しない事が普通の存在なのだ。例え、どれだけ西へ向かったとしてもその存在は確認されていない。


 『未だこの世に存在しない事象』。僕は記憶に留める様に一つ想起させる。


 

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