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 紅茶を一口飲む。ジャムを入れた後の液体には果肉やら、種やらがそこかしこに浮かぶ様になる。不純物に見えて、それら全てが甘い。果肉に染み込んだ砂糖が高温で比較的濃く出された紅茶の中に混ざり合っている。


「最初に約束して欲しいことがある」番人はそう言った。


 どう動くのか未だ僕には判然としない。彼が何を望んでいるのか、何を目指しているのか分からない故だ。体が頷く事は無い。


「お前達がこの迷宮を、城を、どのように事細かに調べる事もおれが止める事は無い。無論、ここの住民もそうである。菊花も、キズキも」

「だが、どうか忘れないで欲しいのだ。ここは住居であるという事を、改めてな。今に人は生きている」


「……」


「砂糖の使用を抑えて、ジャムを紅茶に混ぜ込む様に選択している。分かるかもしれない、分かってくれなくても良い。約束はその部分だ」


「生活を破壊するなという事ですね」


「……いや、理解するだけで良い。不必要な忠告になるかもしれない」

 番人は両手でマグカップを拾い上げる。両の手を温める様に少しでも、指を伸ばして、握りつぶしてしまえるみたいに。


「お前はその『ミノタウロス』というものの為に情報が欲しいはずだろう。おれだって歳を重ねている。人が何を思って、どれ程の行動を起こすか位は想定がつく。およそ、お前は恩で動いている、お前に命令した者は失くす立場で動いている」


「僕が恩で動いているというのは、些か単調に過ぎると思いますけれど。後者の方は確かに僕も聞いたところです」


「『ミノタウロス』。先ほども言ったが、おれは知りはしない。少なくとも、お前がおれを信じるというのなら、その噂に決着をつける様な答えは与えられないという事だ。お前に命令した者の行動理念を聞いてなんだが」


「構いません。彼女もまたそれ程この場所な発見にのみ固執して、強い期待を覚える方では無いと思うので」


「それならば、おれの持つ情報を端的に伝えるのみだな」

 番人はふと思い出した様に、腕を大きく上げて高い位置にあるレバーに手をかける。グッと力強く下ろす。


「この迷宮の事は大方理解が出来ていると見える。おれは管理しているだけで、制作の全容に携わっていた訳ではない。大蝋翼機刻が四罪ヶ楽王断への贖罪として作り上げた城だ」


「贖罪と言いましたか」


「贖罪、罪滅ぼし。この島を四罪ヶ楽王断の物になるより前に所有していた悪徳団体は四罪ヶ楽の極刑に加えて、大蝋翼機刻と島の権利を明け渡したとされている。その団体に属してはいたから、その贖罪だ」

「しかしながら、かの天才の行動はおれも、菊花も、王断でさえ予想を超えているものだった。団体を王断がほぼ壊滅状態にした1週間後におれ達はそれを知った」

「1週間後、明け渡された島におれ達は上陸した。おれは技術者として王断に付いている訳じゃ無かったが一目見て何かがおかしいと思ったよ。小さな島に、小さな箱型のシェルターがある位の島だと聞いていたのに、それがたったの1週間で、たったの一人でこの城に建て替えられていたのだから」


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