中間回答10
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「あなたは番人と名乗るが、この島の歴史とは何なのです?」
「全てを話す事は出来ない。君が全てを知る必要も、余裕もこの島には残されてはいない。四罪ヶ楽王断はおれ達をこの島において旅に出た。この島の歴史はあの王の物だったというのに」
「捨てたとあなたは表現する」
番人はこれまでに無いほどの速さで僕の方を見た。血走った目と筋は刺す様にこちらに飛ぶ。そしてまたゆっくりと男は下に沈む。ぐったりと色まで抜け落ちる様だった。
「捨てられた。ふむ、それは無い。あの四罪ヶ楽王断においてそれは不可能だ」
「というと?」
「極刑王が出来ることは極刑のみだ。一も二もなく、十も九もない。ただ、それだけの存在なのだ。それ以外が出来るような者ではない。無いものを買うことも、買ったものを無くすこともない。ただ、極刑の代金として物を飼うだけなのだ。全てがそうだ。だからこそ、この島の全てはかの王の物」
「この島も、あなた達も、大蝋翼機刻もという事ですね」
男は閉口する。二人とも何も話さない数分が流れる。僕は座っている部分と自分の肌との接触に違和感を感じて、座り直す。怪盗を見やる、まだ動かない。
「ここからはどう帰るつもりなのだ。床は一定方向に進むのみ、行きの方法で帰ることは出来ない」
「そうですね。随分とやんちゃな選択をしていると自分も自分に言いたいものですよ。それも分かった上で僕らをここへ送り込んでいる女子大生には後で難癖をつけとかなければ」
「女子大生?」
「先ほど言った、僕の知り合いですよ」
「それはまた嫌な関係性だな」
「そうでもないです。隠し事をするよりはデメリットがあっても表立って自分を見せてくれる方が」
「変な奴だな」
「いや、しがない男ですよ」
プシュー。壁の奥で何かしらのガスが抜けた音がする。全ては目の前の番人の操作で起きている変化なのは明らかだが、何が起きているのかは一つも判別はつかない。
「けれどここから出る方法はあるのでしょう。無論、あなたという存在が居るからには」
「ある、今は出れないが。1時間後には出ることが叶う。しかしながら、よく分かるじゃないか。お前はここへ来る前から帰る方法がある事を知っていた」
「いや、知らなかったですよ何も。ただ、どの時間でも迷宮の中心と簡単に向かえる線が引かれているとなると、話は別です。それは人為的な構造だ」
「迷宮の機軸、迷宮内、城内、それらを確認したところ内部に管理施設は無かった。まぁ、ファンタジーさながらの発明家がいるのだから、別にそんな物無く完全自立型の装置だと言われれば手も足も出ませんが、迷宮内にそれに繋がりそうなぼんやりとした道があれば自ずからそうかと思っただけです。だから知らなかった、何も」
「なるほど、命を賭ける程の推理では無いと思うが」
「それなら問題はありません。賭ける程の命というだけの事ですから」
ガチャリと歯車が回る。番人はまたこちらを見る。視線は弱く冷たい。
「1時間、長く感じそうだ。それにここは冷える、茶でも淹れてやる」




