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中間回答2


 縄を腰に巻かれる怪盗。手首に巻かれていないのが残念でならないほどに、彼のその姿は違和感なく逮捕のそれだ。


「京介、説明はなしか?」


「いるのか?」


「あぁ、欲しいね。俺はどんな状況でも切り抜けられる算段はいつでも用意しているが、それでもだからと言って、いつでも用意しているその算段を利用するかは別だからな」


「今からでも逃げられるのかい、それは興味深いな。その縄、固結びも良いところだったぜ。この怪盗を逃さないという執念まで感じるようなキツく重苦しい結びだったぜ」


「何か彼女達にしてしまったかな。俺とした事が、人の地雷を踏まない事には幾分か能があると思っていたのだが」

 怪盗はその言葉を言いながら、改めて手で触って縄の縛りを確かめる。ほっそりとした男の腰をキッチリと締め上げている。逃げられるとは言っているが、容易には抜け出せそうも見えないのが僕の所見だ。怪盗と言いながらそのスタイルは確かにマジシャンみたいに見えなくも無いから変な期待もあるけれど。


「よく言うぜ、僕は君と出会ってから幾度となく地雷を踏み抜かれているぜ」


「それはそれは心外だな。嘘はよく無いよ。地雷なんて無いくせに」


「無いわけないだろう。大有り、ありありだよ。超地雷原、ピーキーの中のチーキーだよ。地雷を踏まないように歩くのが難しいくらいだ」


「なら、俺の性格云々より自分の性格を見直して欲しい、普通にな」

 

 暗闇が続く、先導する彼女達は一定の速さを止めない。彼女達はこちらに一言も発する事はない。やや、思考が空になる、誤魔化す。


「怪盗、今は何時だ?」

 僕に言われて、怪盗は胸元から懐中時計を取り出す。

 

「3時15分だ。ティータイムには良い頃合いかな」


 なるほど、確かにティータイムには頃合いかもしれないが、流石にこの砂埃がゆらり舞い続ける暗闇でそれを想像できるほど、紅茶に飢えてない、勿論クッキーにも。喉は渇き始めている。


「京介。方向、彼女達の歩きゆくペースの速さから察するにもう迷宮の外側に届く頃合いではないか。迷宮の謎が解けたから、その迷いの無さがあるとするならば、外側には確かな答えでもあるのか?」


「さぁ、それは運次第かな」


「随分と呑気な奴だな」


「そうか?君みたいに紅茶を飲みたくなるほど、緊張がほぐれてはいないのだけれど。けれど、喉は渇いたね。ただ、喉が渇くね。ひたすらに」


「およそ、それが緊張だ。緊迫(ロマン)かもしれないが、説明もなくこの状況では無理もないだろうな。そうなんだろう京介、知らないのだろう?」

 僕は下を向く。足元は沈みそうになる暗闇が海を作っていて、足先が見えたり見えなかったりする。でも足先まで視線を動かさずともそれはハッキリと見える。


 腰から伸びる縄が、僕の腰を回って、怪盗に繋がっている。


 確かに僕の腰にもきつく繋がっている。


「京介。何をされるのか、何をするのか。この状況を比較したらまだ警察に連行されている時の方が、俺はマシに思える。まさか、生贄にしようって訳では無いだろうな」


「さぁ、どうだろうね。そうかもしれない。彼女達は宗教学にも精通していると言っていたし、あるいは。悪魔を召喚する為に、山羊の代わりにグツグツ煮られるかもね」


「俺は大怪盗になるが、かつての大泥棒みたく釜茹では勘弁だな」


「一応聞いておくけれど、君の言う今の状況からでも脱出出来る方法って言うのは、僕にも使えるもの?」

 僕は聞いた。焦りの中のぼんやりの僕の意識が、心境を置き去りにして、落ち着いた声でそう聞いた。怪盗はそんな僕の表情を見て、一つ笑む。


「……ハッハッ、ある訳無いだろう。あれは僕の戯言ロマンだ」

 


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