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鳩野問う11


22


 機軸はがなり声を上げる。内側にはぐわんぐわんと大きな鈍い音がまた響いている。大きな歯車がガチガチと音を出す。


 体は機軸の道には慣れ始めていた。この暗さにも脳は嫌悪感を受け入れつつある。目は光と闇の明滅によって慣れを覚え込まされたが、目の細胞はその様な慣れを短時間で許容できる作り為されてはいない。未だ、中には暗闇が広がる。


「京介、この1時間は私と来てくれ。少し考えがあるんだ」

そう、鳩野和々は僕に言った。それを聞いていた怪盗と後輩も、その言葉に耳を傾けている。


「どんな考えがあるのだろうかな、鳩野女史には」僕の横に気体のように、怪盗が流れ込み侍る。小さな声で耳に言葉を残す。


「さぁ、知らないな」


「聞かされていないのか?」


「聞かされていない」


「それは恐ろしいな。流石、死にたがりと言った所か、怖いもの知らずなのだな」


「死にたいなら、もう他に怖いものが無いだろうとは、安直だな。僕はともかくとして、死にたがりはだって本当は死にたくは無いんだぜ、大抵生きたくないだけだからな。怖いものは怖い、当たり前だ」


「ほほう、弱さを強気に主張するではないか、嫌いではないが。それならば、尚更何も聞かずにここへ動く理由など無いだろうに」


「無いよ、気にするな、怪盗」

怪盗は目をぽっつりと開けると、また笑む。


「ならこれ以上は聞きはしないさ、さぁ、ロマン探しだ」


 香永遠と鳩野和々は隣を歩く。二手に分かれるつもりは変わっていないのだから、信用に出来る後輩に何かを引き継いでいるのか。


 そうこうしているうちに、螺旋階段に辿り着く。迷宮の中心部分に存在する螺旋階段。機軸の入り口と出口は螺旋階段から始まり、螺旋階段で終わる。


 庭園、機軸、迷宮。越えると、螺旋階段の先は別の世界を映している。タイムトリップでもしているみたいだ。


「ではそれぞれ、また1時間後に此処で落ち合おう、確かめて欲しい事は永遠に教えたから、怪盗はそれに従ってくれ」



23


 いざ、迷宮に戻りはしたが、やる事は大きくは変わらなかった。迷宮内部の地図を完成させる事、突き当たり、分かれ道、行き止まりに至ればそこを分かりやすいように蓄光シールや、目印をそれぞれが用いる。


 鳩野和々は僕の隣を歩く。怪盗が隣を歩いていた名残を思うと、その身長はかなり小柄で肩口に空気が流れて、変な感じがする。


 隣に歩いていれど、僕とワワさんであれば、道を決めるのは当然のようにワワさんの行うところになる。言葉を使わずとも彼女が先導してくれる。


「京介、一応、これは今の所の推察に過ぎないから、私は皆に伝える事はしなかった。香永遠に、私と同じ意見を共有してしまうと、彼女の考えを邪魔する可能性もあるからな。同時に発想が膨らむと言う事もあるだろうが……」


「どうしたんだ?」


「いや、理解されるかは分からないが。これでも、一応、先輩だからな。彼女は頑張っている、彼女の思惑がどうあろうとも、私は部活動での彼女を見ている。だから、そう、私との1年の差異がどう影響するかも分からないが、彼女には独自であって欲しい。強くあって欲しい」


 鳩野和々は暗闇に言葉を吐露する。僕はその彼女の姿を見てから、見えないように顔を前に向ける。


「優しいじゃ無いか」


「厳しいつもりは無いからな」


「怪盗と2人きりにして良かったのか。僕と2人きりにするのもいただけないだろうけれど、あの2人組は」


「大丈夫だ。あぁ、見えても自分の身くらいは守れるやつだ。不審者の1人をどうにか出来ないで、うちの新聞部で記者など出来ないよ」


 冗談なのか、本気なのか、ワワさんはそんな事を言う。十把一絡げにまとめられるような大学生部活動チームでは無いとは思っているけれど。まさか、一人一人に護身術まで身に付けさせているのか。


「さぁ、行くぞ。時間は無い。確かめられるだけ、確かめに行こう」

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