鳩野問う10
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新聞部、ミノタウロスの噂を解き明かす。目的は彼らの行動と直結し、今、彼女達は血眼であーでもないこーでもないと小さく言葉にしながら、何か手掛かりを探す。
時間は12時と40分、簡単な挨拶と会話を歴史研究家・催馬楽古学と行ったところ。僕ら2人の会話は落ち着き、2人して、食卓で悩みこむ3人の背中を見つめる。
「古学さんはこれからどうされるのですか?」
「どうしましょうか。あの青年に話を聞きに行くか、もしくはあの女医の先生の所へと向かう事にしましょうかね」
「迷宮へは行かないのですか。僕らとしては人は多いに越した事は無いのですけれど」
「それはご遠慮させていただきますよ。今は若者が挙って謎を、噂を解明しようとしている所だ。それを横槍など大人のして良い事では無いでしょう。午前中に引き続き城の中で出来る事を済ませますよ」
「たかだか黒い城でも見る人が見れば見える所もありますから」
そう言うと、紳士はさっと翻りその影と形を食堂から消し去る。その姿を僕をのぞいた3人が見る事は無い。集中をしていると言うのもあるだろうが、そもそも自分に関する人としてまだ意識していないと言うのが大きいだろう。
どうしようか、もうすぐで13時になる。その時になれば、また迷宮が動き出す。この12時からの1時間を思考する事に費やしたのも、少々の痛手である事は否めないだろう。
このまま、13時まで至るのなら、更に1時間動かないのか、それとも方向性が皆無のまままたあの暗闇の中で地図を作成するのか。時間は迫る、鳩野和々は地図を一心不乱に見つめ続ける。
僕は彼女の背中を見る。怪盗と後輩は小さくキラキラする会話を続けている。割れたガラスを通して彼らを見ているみたいに、鳩野和々と2人では違う時間が流れているように見えた。
僕はその割れ目からやや怪盗と後輩の側に近寄る。揺れる様に自分の定位置を探し求めて、ようやく落ち着いた場所からワワさんを見る。
少し斜めに動いたから、背中だけが見えていた視界から、地図の中身が映る様になる。
正確に見える地図が横にいる香永遠から流されてくる。たった3枚の紙切れ、それをパラパラとアニメーションでも確かめる様に見る。
鳩野和々の顔はじんわりと崩れていく。何かが彼女の中で蠢いている様に顔の筋肉は自然に彼女の顔をにんまりと笑顔を作らせる。
「なるほど、ここには何かある」
鳩野和々は今までに無い、声色を発する。
ガラスは亀裂を時間を戻して無くす。鳩野和々はこちらの世界に戻ってくる。声をかけたら聞こえ、触れたら気づくことが出来るように。
「何か分かったのかい?」
「まぁ、そうだな。分かったと言うか、とりあえず12時を無駄にした代償と、それから無駄になりかけた13時を取り戻す事ぐらいは出来るだろう」
そんな言葉を発する鳩野和々の顔は先程地図を眺めて笑っていた顔とは打って変わって無表情になっている。対比によって、気がつけば自分の頭の中から彼女の笑みがどのようなものだったか霧散していた。
「それは頼もしいでは無いか。それで『ミノタウロスの噂』は解き明かせるのか?」
「それは知らない。知るわけもないだろう。それを今から確かめに行くだけなのだから」
13時の10分前、鳩野和々は途中経過における十分な答えを胸に抱き。再び、迷宮に潜る事を僕らへと告げる。




