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人身牛頭5

 ミノタウロス。クレタ島の怪物。少年少女を生贄として食う化け物。彼を閉じ込めていたとされる建造物、クレタ島の迷宮、ラビリントス。


「ミノタウロスの姿をした者の写真から位置を推測して極刑島へと至り、そして今は迷宮にいる。これはどう言った偶然か。何かある、そうに違いない」

ワワさんは力強く言葉を使う。


 確かに偶然にしては共通項がある。いや、ミノタウロスと迷宮だけなのだけれど、けれどそれらが一つずつ存在するならば兎も角、二つ揃うとなると話が変わってくる気は僕もする。


「もしこの迷宮に製作者、設計者がいるのなら、それらの人間がここを迷宮にすると決定したはず。クレタ島のラビリントスを作り上げたダイダロスの偽者と言うか、ダイダロスの模倣者と呼べる者が」


「ダイダロスの模倣者か。記事の主役としては面白い。ミノタウロスがこの島に存在した理由になるかは判じ得ないが、何も意味も無くこの迷宮が存在する訳ではもちろん無いだろう。それが酔狂だとしても、大事な意味付けだとしても」


「この迷宮の作成者の話はまた島の住人にでも聞く他ないな」


「まぁ、そうだな」

ワワさんは一つ息をつく。


「僕はクレタ島に行った事は無いから知らないのだけれど、本当に迷宮ってのは存在するのか、神話の中の話では無く?」


「いや、ラビリントス自体は神話のものだと言うのが、今のところの通説だ。こう言った迷宮の神話の出所も、複雑怪奇に作られていた、クレタ島の宮殿・クノッソスがモデルになっているという話だ。つまりはミノタウロスは存在しなかったと言う訳だ」

 ミノタウロスは存在しなかったと言う訳だ。そう、ワワさんは言い切る。一番、君が言ってはいけないセリフな気がするけれど、君達はミノタウロスの存在を信じてここまで、こんな絶海の孤島にまで来ている訳で。


「いや、私は別にミノタウロスの存在自体を信じている訳じゃ無い」


「おいおいおい、ちょっと待て。君はミノタウロスの存在を確認するためにここに来たんじゃ無いのか。だからそう、君の感覚が、記者としての違和感が、それが仕事をしたからここへ来たんじゃ無いのかい?」


「私は自分の感覚に則って行動している。それに間違いは無い。件のミノタウロスだって、その存在が確認出来る事を何よりも大事にしているよ。勿論、コラムの為には絶対に外せない条件だと言えるだろう」

「ただ、別に私はこの写真のミノタウロスが、ミノタウロスである事に拘りを持っている訳じゃ無い。私の感覚に引っかかったのは、写真と隠匿され続けていた極刑島との繋がりだ」

「何かがあるのは間違い無い。しかしながら、それがミノタウロスであると確信を持っている訳では無い」


 迷宮にミノタウロスがつく、そう言ったのは彼女のはずだけれど、彼女はそんな事も宣いつつも、冷静に事の次第の流れを考えている様だった。


「そもそも、牛一頭の重さは約700kg。比率で見れば、体重50kgの人間の頭が5kgと言われているから、体重に対して牛の頭は70kgだ。そこまで重たく無くても、数十kgはあるだろう。これが人間の頸椎、背骨にのしかかる訳だ。人は牛のような堅牢の首では無い、分厚い骨もなければ、赤身も、脂身も、筋肉もあまりに足りない」

「加えて、写真を見れば頭部より下は明らかに華奢だ。まるで女のようでさえあった。S字に湾曲した背骨がその頭の重量に耐える事が出来たとしたもの、そのまま動く事が出来るとは到底思えない」


「だとすれば……?」


「やはり、あれはミノタウロスでは無い」


「ミノタウロスでは無い」


「でもだからこそ、奇妙じゃ無いか?ほぼ間違いなく人身牛頭のミノタウロスでは無いものがそこに証拠としてあるのにも関わらず、得てして集まる情報はミノタウロスに近寄ってくる。違和感が止まらない」

「ミノタウロスはいない、だが何かが蠢いてこの中にミノタウロスを作り上げようとしている。意味があるのだろう、そうする意味が彼には、彼らには」

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