極刑島13
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四罪ヶ楽真空、彼女が室内スペースから出ると、内側はやけに広く感じられた。寂しいほどに伽藍とした雰囲気が隙間のないはめ込み式のガラス窓から無理やり、入り込んでくるようである。
朝日は未だ僕を優しく照らしている。朝日を夕日かと誤認してしまいかねない程に空気は重く、空間は冷たい。まだ今日は始まってまもないというのにも関わらず。もうすぐ、悲願が叶うというのに。
僕は落ち込みそうになる気持ちを無理やりに持ち上げようとする。
『船内の皆さんにご連絡申し上げます。この船はまもなく目的地である極刑島に到着いたします。繰り返します、船内の皆さんにご連絡申し上げます。この船はまもなく目的地である極刑島に到着いたします。』
丁寧に運転席に座っているところが背中だけ見えるキズキ君の声が船内アナウンスとして、室外と室内、両方に十分に伝えられた。やや、ふるると体が震えた。
船内アナウンスは僕にもちゃんと届いた。しかし、それを心配してなのか、僕という人間の木偶の坊のような行動の遅さからなのか、室内スペースにワワさんが入る。
上から、二つの頭頂部。ドアの開け放たれたそこにワワさん、シートの上の僕。ワワさんが僕に話しかける。
「京介、もう少しで到着するみたいだ」
「うん、ワワさん、そうみたいだね」
僕のその態度に、少しばかりワワさんはすんとした顔に表情を動かす。
「大丈夫か、酔ったのなら外に出ると良い、風が心地いい。島の近海に位置しているだろうが、まだ時間はある上陸する前に体調は整えておいて損はしないと思う」
「いや、大丈夫。ただ、気を引き締めないといけないなとちょっと思っていたところなんだ」
「『ミノタウロスの噂』か?それとも別件か?」
「……もちろん、『ミノタウロスの噂』についてだ」
僕は姿勢を前に倒して、あっけらかんと言い放つ。
「それは、それはありがたい事だ。協力者がここまで、真剣に事を考えてくれているとはな」
「いや、普通の意見だよ。ただの普通のしがない人間の意見だ」
ワワさんは目を細める。真面目な姿の、真面目な髪型の、真面目な眼差しが僕を見た。僕はぐらっと後ろのシートに身体を倒す。顔を上に一緒にあげると天井には少し汚れが見える。
ガバッと身体を起き上がらせる。
「さぁ、外の景色でも見ようかな」
「あぁ、そうすると良い」
ワワさんはそんな言葉を返した。ガラスの向こうには朝日が水平線に浮かぶ。明けの光は静かに空気を暖め始める。




