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紫羅欄花1


40


 時を同じくして、極刑城内部。部屋に篭る人々には異様な空気感が流れていた。ミノタウロスからの全ての人間に対しての殺害予告によって警戒する動きが求められたからだ。


 誰もが、誰かといる事の方が危険であると判断し、全会一致で個人でいる状態を求めた。


 警戒心が皆の中に生まれたのは不幸中の幸いではあった。四罪ヶ楽真空の処置も無事に終わって、全ての人間が落ち着いていた。


 春花車菊花は今の動きを部屋の中から考えていた。事件後、処置が落ち着いて後の明け方。全員が集まった状態での意見交換に参加していなかった者が2人いる。


 四罪ヶ楽真空とキズキだ。


 その時は参加出来る状態ではなかったが、2人の状態を鑑みて意識は戻っているはずだ。真空は分からないが、少なくともキズキは。


 新聞部の2人はそのキズキの話を聞きに行っただろう。私が提供した情報のみが彼女達の持つ有益な情報になり得るものだった。


 彼女達は今どこにいるか。キズキは部屋に残ったままだろうか。昔の彼を知っている者からすれば、その答えはイエスなのだろうが。


 その結果を知る事は出来ない。新聞部の彼女達の判断力を思えば、この均衡状態を守るメリットは分かっているはずだ。


 誰もが部屋を出る事に前向きにはなれない、動くことが出来ない、たとえ犯人であろうと。この状態はかなり良い。


 その上で名目上、捜査を行える彼女達が事件の究明をしてくれるのが1番である。無論、今日、死を予定している小断を見つける事が出来ればだが。


 出来るだろうか。疑問は尽きず、落ち着き払う事は難しい。今は座して待つのみなのだ。菊花は自分に言い聞かせる。


「王断、お前がいればこんな状況も簡単に解いてしまうのだろうけれど……」


 静かな空気。音のならない建物。その連続が均衡状態の証明である。それが一度でも逸脱する状態というのはそれ多くの場合、私達の負けである。


 菊花は耳を澄ませることだけに専念していた。自分にできる事はそれだけだと知っていた。このまま動くことがなければ良い。そう思いたい。思っていたかった。


 彼女は扉に居着く苔のように静かに冷たくべったりと。長く無音に溶け込んでいる。


 耳の緊張。過ぎる時間。


 バタム。いつか、そんな音が響いた。

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