青年郎党9
…
「その手紙のままに君はこの島に辿り着いたと言う事だね、キズキ君」
「はい、そうです」
鳩野和々はキズキに確認をとって、出会いの全てに満足したようだった。一瞬、間が開いたがそこに香永遠が言葉を挟み込む。
「うん、うん、うん。やっぱりすごい良かったです。まさにプラトニック、恋愛とはやはりかくあるべきです」
「…………」
「それで、島に着いてからは彼女に会ったんですか?つまりその面と向かってと言う意味で」
「いえ、会っていません」
「あら、そうですか」
「けれど、ちゃんと迷宮を抜けられる様に道標を残してくれてはいましたよ。キラキラした彼女の印で。だからこそ、自分が単身、無知のままにこの城へ侵入出来た訳ですし」
「良いお話ですね」
「それからは彼女の眠る部屋のすぐ側まで掃除をする毎日です」
キズキは快活に笑う。
「本当に彼女のことを想っているのですね」
「いや……まぁ」
「だって、自分が送った手紙の内容は忘れている割に、彼女からの手紙の内容は随分と細かく覚えているのですもんね。そこから想像出来る彼女への想いの大きさというのは。もう、ね」
キズキ、シュッと赤面、着火を覚える。
「いえ、だからそのそれは、そこが説明するに際して必要だと考えたからで、別に彼女の手紙の内容だけでなく、自分の手紙の内容だって全てといえどおおよそは覚えていますよ、えぇはい」
「でも勿論、彼女からの手紙は全て保管しているのですよね。事細かに覚えている理由など、その条件から測れば簡単ですよ。私にとっては地図を測るのと同じくらいには」
「ずばりあなたはその手紙を読み返している。今でも大事に、何度も」
「えっ!、えぇ、まぁ、むぅ、えと」
我先にと、言葉にもならない音が口の中を包みこむ。しどろもどろになって何から言えば良いのかわからなくなる。言葉にせずとも分かるのは、咽せ返るような恥ずかしさだけだ。
火照る耳の先、届く音もぼんやりとしてきた中。「永遠、下を見てみろ」一閃冷たく鋭い声が届く。
「先輩、何か見えたんですか?」
「光だ。目を凝らせばやっと見えるくらいの薄らとした光が漏れている」
話し声に釣られてキズキも下を覗く。
「どこに通じているのでしょうか」
「さぁ、分からないな」
「高さから予想すれば迷宮に入るのでしょうか。もしかすると、秘密の部屋とかがあるんですかね。ミノタウロスが迷宮に存在するとはそう言った意味なのでしょうか」
鳩野和々は言葉を返さない。高さが下がっていく程に空気がどんどんと硬くなる。
「……床から光が漏れている」鳩野和々が小さく。
「何が見えますか?」
鳩野和々は開いた床から景色を覗こうと、体を低くする。
「2人とも、もし私に何かがあったら一目散に逃げて良い」
更に彼女の体はさらに低くなる。ゆっくりと小さくなって、中を覗き込む。「……これは」鈍い声が響く。




