青年郎党7
…
「それで、君は彼女のどこが好きなんだい?」
暗闇の階段を数段降りたところ、何も誰も言い出さなかった空間に突如言葉が発される。
「えっ、何でどうしてそんな事が気になるんですか!?」
「どうしてって、年頃の女の子なら珍しくも無いと思うが」
人付き合いが極端に少ない島の7年を過ごしたキズキにも、記憶がない小学生時代があった。正確には、同級生の名前を思い出す事は出来ないけれど、文化や常識、習った事だけが残る小学生時代が。
だから、ある程度そういう話に女子が食いつきが良い事は覚えがある。しかし、キズキは勝手に目の前の彼女はその分類に当てはまらないものだと考えていた。
不運なことに、違った訳だが。
「知ってどうするんですか、そんなこと!」
「ん?どうもこうもしないけれど、ただの好奇心だ。純朴で、純粋な。いや、しかし知ってどうするかと言うのは面白いな、脅しの為の情報にはなるのか」
「脅すつもりなら、教えません」
「脅さないなら、教えてくれるのかい?」
「…………」返す言葉に窮する。躙り寄るような鳩野和々の話し方は、キズキとの距離をじわじわと狭めていき、逃げ場がなくなっていく。逃げ道を、話を逸らす方法を、考えなくては……そうだ。
「香永遠さんは気にならないでしょう、こんな話?」
この話が始まってから、未だ無言を貫く彼女だ。およそ、彼女は興味の外を歩んでいるはずだ。ならば、彼女と徒党を組んで、別の話をする流れにしよう。自分だって、彼女らの気を引けるであろう話の2つ、3つはある。その流れにさえなればきっと。
「え、私も気になります。教えてもらえるなら聞かせてもらいたいです!」
駄目だった、全く。飛びつくような勢いで返答する香永遠の答えは紛れもなかった。目の前の2人はどうしようもなく女子をしている。
「大学で聞けるようなありふれた話ではないのでしょうし、もちろん、聞きたいです。見聞を広げる為にも是非」
香永遠、彼女は先輩よりも余程自分の中でブレーキを持たない性格のようだった、いやそれが分かっていて鳩野和々は助け舟を彼女に送らせたのだ。それが最大のミスになる事を理解しながら。
暗闇で見えないが、キズキには自分に向かう希望の視線が向けられているのだ分かった。いや、人に話すこと事態は珍しくはない。恥ずかしさはあったけれど、あの怪盗を名乗っていた陽路影牢さんには話した。
経験豊富そうだろうと風貌から予想し、同性の人生の先輩にアドバイスを貰おうとする事は普通の流れであった。
けれど、今の場合は違う。女性である。異性である。緊張は一入だ。避けられるなら避けたい、今の心臓の拍動の強さから。
「出会いはどんな風だったんですか?」
「……それはその」
「ほら、少しずつで良いですから。どんな出会いだったのですか?」
「……で……あいは浜で手紙を見つけた時でした」




