表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

人助けラヴァーズ

 今日の授業は、いつも以上に身が入らない。

 原因は間違いなく昨日の出来事。


 結局彼女の意思を尊重し、一年という機関だけ付き合うことになったのだが、俺の疑問は晴れないままだ。何故、彼女は俺なぞにご執心なのか。過去にあったことがある風だったが、いつ出会い、何をもってここまでの好意を持つようになったのか。


 精一杯過去をたどるも一切彼女にかかわるような情報は見つからない。

 そもそも、俺は記憶力がかなり悪い。小学生の時のことなどは一切覚えていないから、おそらくはそれぐらいにあったのだろうが……。


 いや、この疑問はもう捨て置こう。とどのつまり、俺が彼女に絆されなければよい話だ。

 これまでのやり取りで、俺と彼女は間違いなく釣り合っていないことは明確に分かった。あとは彼女がそれを理解し、自分にふさわしい人を探していけるようにムードを持っていくことを目標とすべきだろう。なァに、別に難しい話ではない。俺と付き合っていくうちに、俺という何の面白みのない人物が露呈していくだろうから、それを隠さずに見せつければよい。

 

 後は、勝手に彼女が夢から目覚めるのを待つだけ。

 

 彼女が過去の何を見ているのかは知らないし、知る由もないが、これだけは言える。

 過去はくだらないものだ。俺はそれを知っている。過去がいかに人を狂わせるか。過去がいかに、無意味で、残酷なのかを。

 確定して、それ以上変えられないくせに、いつまでも人間の心に住み着いて離れずくっついて、未来という光の中に影を落とす。

 

 そんなものに固執している彼女を、俺は見過ごせない。

 実に傲慢だとは思う。恐らくは彼女自身は助けてくれなどとは一切考えていない。

 が、俺のこの偽善ともいえるエゴで彼女が救われることを祈ろう。



「せんせぇ~!多分日山クン今のところ聞き逃してるからもう1回いってやって~!」


 斜め後ろに座る神崎が余計なことを言い出す。

 野郎、俺が上の空の状態であることを目敏く見つけやがって、先生にチクりやがった。

 

「おぉん?ええ度胸しとんな日山ァ。なんや、先生の話なんぞ聞かんでもええってか。これはテストの点がたのしみやのぉ~」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよセンセ!俺ちゃんと聞いてますって、ほら板書もちゃんとしてるでしょ」

「はっ、わかっとるわい。ちょびっとちょけただけや。ほれ、つづけんぞぉ~。今度はちゃーんと聞いとけよぉ~」


 焦って立ち上がり、ノートを掲げ自分の無罪を主張する。

 その様子に半笑いで手を仰いだ教師。

 

 全く、神崎のせいで目立ってしまったではないか。

 当の本人はにやにやと俺を見て笑っていやがる、俺の平穏を返せこの野郎。


 「……」


 進んでいく授業をちゃーんと聞きつつ、俺は外に目をやった。

 青い空が目に入る。

 いつも通りの見慣れた青空、俺にとっての平穏の象徴だ。

 空よ、願わくば彼女に自由を与えたもう。なんて祈ってみたりして。

 


 *


 今日の授業はいつも以上に身が入らない。

 理由はもちろん昨日の出来事。

 そこまで賢くなかったアタシが本当に頑張って勉強して先輩と同じ高校に入って、それでも数か月間は拒否されることが怖くて言い出せなかった。でも言えた。ちゃんと、言葉にして伝えることができた。好きです、と。

 

 嬉しかった、ちゃんと告白することができて、なんと憧れの先輩と制約があるとはいえ、付き合えることになったんだ。

 少しでも気を緩めると口角が上がってふにゃふにゃの笑顔をさらしてしまう。


 結局彼はアタシのことを忘れてしまっている様子だったけど、しょうがない。ほんとは覚えていてほしかったけど、彼の過去のことを言うのはとてもできない。

 きっと先輩はアタシが何で先輩に惚れこんでいるのか疑問に思っていることだろう。


 そしてこう結論付けるはずだ。

 アタシを過去から解放してやらないとって。

 自己評価の低さと、周りを優先する気質はたぶん変わっていないはず。


「しおりんどったの?」

「えへへ、アタシの想い人はいい人だなぁって」

「また惚気?よく愛想つかされないね」

「うん、ほんとに。それもこれもみんな先輩がいい人なおかげ」


 だから、きっと。

 アタシは彼の助けになるんだ。


 この思いはきっと偽善だろう。

 だれも、たぶん先輩自身も助けてくれだなんて思っていないはず。


 だけどアタシは見たんだ、感じたんだ、助けを求める姿を。

 先輩に助けられたアタシが、今度はきっと……。



 待っていてくださいね。先輩。

 過去も、未来も全部……アタシが支えになりますから。


 

 

一先ず切りのいいところです。

正直初めての恋愛小説でどうんなもんか、自分でもようわかってません。

もし、面白いと思っていただければ評価してくださると喜びます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ