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人助けラヴァーズ  作者: 鯱眼シーデン
疑似ラヴァーズ

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12/29

11:揶揄いラヴァーズ

 白の意味深な言葉には敢えて踏み込まず、俺は自分の役割を全うする。

 発泡スチロールの板に黒色の塗料を塗っていく。指名された役割は看板、チラシ作成と黒板アート。

 手遊び程度に絵を嗜んでいただけだが、まさかこんなポストを宛がわれることのトリガーになろうとはね。


「さてと。取り敢えず下地を塗ったはいいが、どんなデザインにしようかね。お化け屋敷らしく血みどろにしてみるか……フォントは普通にしてバックに柳やらなんやらをガチャガチャと設置するか……」

「お、やってるね」


 後ろから声をかけてきた白。


「なんだ、ハニーか。お前は別に残ってまでやるような作業はなかったんはずだろ?どうしたよ」

「そうだねえ。僕ほどになると、自分の能力のキャパをしっかりと把握しているからね。それ以上の仕事は請け負わないようにしているのさ。……それはそうと面白い情報を入手したんだよ、それを話しに来たんだ」


 またどっかから情報を仕入れてきたのかこの情報屋は。そういえば、沖田が告白してきた初日に彼女の情報を俺に伝えてきたな。一体どこまで張り巡らされているのだろうか、こいつの情報網は。


「俺ぁ見ての通り忙しいんだがね」

「おや、バイトはなかったはずだけれど?」


「だからだよ。バイトがない日はいつも沖田が突撃してくる。まあ、流石にあいつも文化祭の準備だって言ったら引き下がるとは思うがね」

「あぁ、成程。最近友達付き合いが悪いのに拍車がかかったのもそれが原因かい」

「そうだよ。気にしちゃいないがな」


 元々友達なんて多くて困ることはあれど少なくて困ることはないと思っている質だから、付き合い悪いと大多数に思われようがどうでもいい。その程度で関係が切れることはないし、もしあったとしてもそのような関係は歪なもので、いずれ崩壊していたに違いない。篩にかけられたってコトだ。


「その意見には同意だね」

「なあ、俺口に出してた?」


 あまりにも自然に俺の心の言葉に同意してきた白。俺はリアクションをとるのに数秒時間を要した。


「顔に出ていたよ。あまり口数は多くないけれど、表情は誰よりも雄弁だね、善は」

「そこまで言うか。沖田も似たようなことを言っていたな、そういえば」

「なら彼女は君の事をしっかり見てくれているんだね、安心だ。それと、僕が持ってきた情報と言うのはその沖田ちゃんについてなんだけれどね、これがなかなか話題になっているんだよ」


 話題。確か白曰く沖田は色んな人から告白を受け悉くを断っていたという事らしい。入学して数週間で複数人から告白を受けるぐらいだから、やっぱりあいつは人気者なのだろう。そして、そいつがやる出し物も必然的に人気になるって寸法だ。


「なんとね、メイド喫茶だって!」

「メイドぉ?」


 そういわれ、俺は図らずもフリフリの可愛らしいメイド服を着た沖田を想像してしまった。


「本当に分かりやすいねえ。残念ながら沖田ちゃんが実際にメイド服で接客をするのかは不明だ、もしかしたら裏方になるかもね」

「べ、別に沖田の話題をしていたから想像してしまっただけで、視たいとかそういう気持ちはないぞ。不可抗力ってえやつさ」

「はは、男のツンデレは需要が少ないよ」


 

 俺を揶揄いクツクツと特徴的な笑い声をあげている白を後目に、俺は看板に向き直る。

 文化祭まで後二週間、長いようで短い時間だ。ぐだぐだしていたらあっという間にしめきりをむかえてしまう。


「まあいいや、行くか行かないかは君が決めなよ。僕らは茶々を入れるだけだ。」

「――んだよ」

「いや別に~。善はさ、もっと素直になっても、いいんじゃあないかな?と思ってね」


「お節介な奴」

「ははっ。まさか善に言われるとは思わなかったなー、お節介の擬人化みたいな人間に」


 なんだそれ。

 

 

 *

 六月第二週。俺と沖田は放課後茶店で駄弁るかわりに、教室に集まって作業をしていた。


 沖田も自分のクラスの準備で色々と押し付けられたらしい。彼女も俺と同じようにチラシ作成と立て看板のデザインを任されたようだ。


「お前、絵上手いな」

「先輩の絵の方が上手じゃあないですか、お世辞下手ですねえ」


 違う。そうじゃあない。確かにリアルタッチの絵ならば俺の方が上手く見える。しかし絵のうまさはリアルさだけで測られるものではない、絵とは観測者に何をどう伝えるかのツールなのだからリアルに描けるだけの作家は下の下だ。その観点からして、沖田は俺の数段上を行く。


「いつから描くようになったんだ?」

「中学生の頃ですね。期間にすると1年ぐらい……ですかねえ」


「マジか。たったそれだけの時間でこれまでうまくなるもんか、参ったな。この分野なら先輩らしいところを見せられると思ったのに」

「なんですかそれ」


 沖田は笑っている。

 しかし俺にとっては笑い事ではない。白に聞いた話だが、沖田は入学テストでは主席というじゃあないか。運動神経は知らんが学力でも恐らく負けているのに、これでは先輩の面目というものが……。才色兼備とはまさにコイツの事だ。


「お前、弱点ないんだな」

「は、はは!なんですかさっきから!照れちゃいますよぅ~!もぅ!」


 俺の肩をバンバンと叩く沖田の声色は、少し上ずっているように聞こえた。

おもしろい、つまらない等、どんな感想・評価でもいただければ私はとてもうれしく思います。

もしよろしければぜひともお願いいたします。


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