始まりラヴァー
ご閲覧いただきありがとうございます。
誤字脱字などあれば言っていただければ幸いです。こんな青春送ってみたかった、みたいなあと思わせれるよう頑張ります。
朝起きて、朝飯を食べ終えそれを片し、ゴミ袋と学生鞄をもって家を出る。
何の変哲もない一日の始まり。
俺に与えられた、素晴らしく平穏な日々は今日も続いていく。
そう、続いていくはずだったのだ。
*
「先輩っ!私と、沖田栞と!付き合ってください!好きなんです!」
「――――はぁ?え、俺を?」
俺は思わず疑問の声を漏らした。
その反応に、俺を困惑させている張本人……沖田栞が上目遣いで見つめてくる。
何故だ。何故、この少女は俺なんぞに告白をしてきたのだ。
この子に好かれるようなこと……もっと言えば、人に好かれるようなことは何1つしていないと自負している。
何か、何か理由があるはずだ。彼女が俺に告白してきた理由。
探れ、探るんだ。この子の表情や周りの状況から彼女がこの行動をとるに至った何かを嗅ぎ取れ。
「あのう、先輩……?」
おずおずとこちらの様子をうかがってくる沖田。
ふと気づく。こいつは俺のことを『先輩』としか呼んでいない、つまりそこから導かれる答えは。
「あぁ……沖田さん。君は恐らく人違いをしているじゃあないかな?」
「日山善先輩。間違えるはずありませんよ!」
俺の回答はどうやら見当違いだったらしい。
だとすると、残された可能性といえば……。
何かの罰ゲームか……?
しかしそんな雰囲気はなかったが……。
「待ってほしい、理解できない。そんな突飛なことはないだろう」
「突飛でも何でもないですよぅ、先輩のことずっと好きだったんです!」
「ずっと……?」
ずっとって……やはりこの子は勘違いをしているんじゃあないか?
沖田栞といえば、一個下の学年で有名な美少女だ。そんな人間と知り合いだなんて記憶は俺にはないし、一方的に認知されている可能性も低いだろう。俺の容姿が彼女から見て魅力的だったのだろうか、確かに……可能性は否定できないが……そんなことあり得るのか?わざわざ自分の属する学年ではなく、1つ上の関わりのほぼ無い男の容姿を把握することなぞ考えられないが……。
「先輩……?」
「あぁ、すまない、つい癖でね考え事を……ってえぇ?!」
つい思考しすぎて、目の前の彼女を置き去りにしてしまっていたことに気づく。
そして驚愕。目の前の少女は体をわなわなと震わせ今にも泣きだしそうではないか。
「ま、まって、なぜ君は泣きそうなんだ……?!」
い、いけない。これはまずいぞ、いくら勘違いが原因とは言え男が女を泣かすなんてあってはならん。さらに人気はないとはいえ公共の広場で誰かに見られでもしたら、俺の平穏な生活に悪影響を及ぼすことは想像に難くない。これは早急に何とかしなければ。
「落ち着いてくれ、とりあえず落ち着こう、落ち着いて考えるんだ」
「うぅぅ…………!」
どうしたらいい、何が正解だ。早く思考を回せ、最適解でなくてもいい、とりあえずの回答を出さなければ……この子の感情をこれ以上刺激させず、俺にも不利益を齎さない一手を……!
「じ、時間を置こう……!そうだ、時間をおいてまた、話し合おう。もうそろそろチャイムも鳴る頃じゃあないか?大丈夫、俺は君の味方だ、君を傷つけやしないさ」
「ほんとですか……?」
涙目で俺に聞いてくる沖田。
よし、いいぞ。突発的に考え付いたにしては耳障りの言いこの言葉は沖田的にグッド判定だったようだ。
「勿論さ、今は互いに困惑しているだけなんだ。ちゃん合理的に話し合えば、俺たちは理解しあえるはずだ。ただそれだと時間が足りない、だから、ね?」
「じゃあ放課後っ!今日の放課後はお時間ありますかっ?!」
「今日……か」
どうしたものか。
思考を整理するためにもう少し時間が……具体的に言えば四日から五日程時間が欲しかったが、これ以上の交渉は難しい可能性が高い。ここは今を切り抜けられた事を喜ぶべきだろう。
幸いにして今日の予定は買い物をするぐらいで、その買い物も別に必須な用事ではない。明日か別の特売の日にずらしても何ら問題ない。早急に解決したい問題でもあるし、ここは沖田の要求を素直に飲み込むべきだろう。
「うん、何もないな」
「ではっ!放課後にっ!」
俺の回答を聞いて笑顔で去っていく沖田の後姿を見ながら、ようやくの一息をつく。
人に告白されるなんて、俺の短い人生において初めての経験だ。
ただ、引っかかることが多すぎる。彼女の言葉に嘘はないのだろうが、そんなことがあるとは到底信じられない。互いのためにも、ちゃんと納得できる着地点を探らないとな……。
「さて、行くか」
これからのことを考えると足が重くなるが、始業時間に遅れるわけにはいかない。
沖田とは違い、ゆったりとした足取りで俺は教室に向かった。
はぁ、俺の平穏は保てるのだろうか。
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