第1話: お母さん、僕、人間辞めることになりました。
(あれ・・・ここは・・・?)
目を覚ますと、俺は見知らぬ場所に立っていた。
周囲は白く輝き、どこまでも続くかのような空間に包まれている。
現実離れした光景に戸惑いながらも、俺は自分が交通事故に遭った直後のことを思い出す。
だが、今いる場所は明らかに地球ではなかった。
「そっか、死んじゃったんだな・・・。」
(くそ―、まさか20歳童貞のまま死ぬなんて!!あ、相手はいなかったけど・・・。)
突然、優雅で清らかな声が響く。その声の主は、白銀の翼を持つ天使だった。天使は美しく神秘的な姿で微笑みかける。
「秋山寛人さん、ようこそ。この場所は神の領域です。あなたは、生まれ変わり、神々が管理する異世界へと転生することになります。」
美人だ。声も実にいい。
「お、お姉さん、天使ですか?じゃあ僕は天国に行けるってことですね?」
「うーん、ちょっと違います。これはあなた方になじみのある姿を顕現しているにすぎません。そしてあなたは天国に行くのではなく、異世界へ転生するのです。行先は私たちが管理している惑星、『アルテナ』です。」
(異世界転生なんてアニメの世界だけかと思ってたけど、まさか自分が体験することになるとはなー。勇者になって魔王を倒すとか、そういう感じかな?)
天使の言葉に、少しずつ状況を理解し始める。
「お姉さん、僕は勇者として選ばれたとかそういうことでしょうか?」
天使は静かに頷きながら答える。
「アルテナでは、神々への納税として『ダンジョンコア』を収集することが義務付けられています。ダンジョンコアは、惑星中に存在するダンジョンを攻略することで採取される貴重な資源で、あなたたちが『レアアース』と呼ぶものです。これを神々に捧げることで、惑星の安定が保たれています。」
「神々への納税とかあるんですね。ダンジョンコア…そんなものを僕に集められるのでしょうか?なにか能力みたいなものを頂けるのでしょうか?」
「大丈夫です。そのために、あなたを魔銃として転生させることにしました。あなたの魂と魔銃との適合率が非常に高かったため、ダンジョンコアを効率的に集める役割を担ってもらうのです。」
(え、魔銃・・・?)
俺はその言葉に衝撃を受ける。
魔銃として転生するなんて、思いもしなかった。
「魔銃って…僕はもう人間じゃなくなるのでしょうか?」
天使は優しく微笑みながら答える。
「確かに肉体はありませんが、あなたの意識はそのまま保たれます。そして、その力を持ってダンジョンを攻略するのです。」
「え、それって拒否できませんか?」
「面倒だな・・・。」
「あれ、今なにか言いました?」
「いえ、何も。拒否した場合、あなたの魂はこの宇宙の藻屑となり、2度と生ある物として生まれ変わることはできません」
(この人、たぶん実はそんなに優しい人じゃないぞ・・・。)
明らかに言葉に棘があるし、何より内容が怖すぎる。
「わ、わかりました。よろしくお願いします。」
「わかって頂けて嬉しいです。しかし、あなた一人ではその力を十分に発揮できません。だからこそ、あなたが転生する場所は、魔銃を扱うにふさわしい者の近くに設定されています。」
「魔銃を扱うにふさわしい者…?」
おっさんは嫌だ、と言いたいところだが、発言権はなさそうだ。
「そうです。その者の名はアイン。彼女はエルフの少女で、アルテナでただ一人、魔銃を扱えるスキルを持つ者です。彼女と共に旅をしながらダンジョンコアを集め、神々への貢献を果たしてください。」
(エルフ?キ、キターーーーーーーーー!!!)
現実ではただのアニメオタクで童貞引きこもりニートの俺が、エルフの少女と冒険なんて、こんなの神展開じゃないか。お母さん、僕、人間辞めることになりました。
「わかりました!やってみます。でも、うまくいくかどうかはわからないけど…。」
天使は穏やかに微笑み、目の前に光の扉が現れる。
「大丈夫ですよ。魔銃には必要なスキルが全て搭載してあります。あなたならきっとやり遂げられるでしょう。では、良い旅を。あなたの新たな冒険が、今始まります。」
(もっとたくさん聞きたいことはあるけど、怒らせたら怖そうだからやめとこう)
俺は、意を決して光の扉を通り抜ける。
一瞬意識が途切れ、気が付いたとき、俺は「魔銃」として新たな世界の遥か上空から落下していたのだった。
(え、なんで空の上・・・。てゆうかあのお姉さんやっぱ怖すぎる!)
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