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真鍮と金  作者: 三葉
vs 炎呪

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18/18

18 これから

 




 アジトに戻った私たちは、再び宴会へと誘われ、全てを祝してお酒を煽る日々だった。

 イブは私にずっと好き好き言ってくるのが恥ずかしいし、ヨウは「僕もー!」と呑気に言ってるのがまた可愛いかった。


 しばらくして学友のヴェール様から近況報告の手紙が来た。


 イグニス・ブレイズは目を覚ますなり、ヴェルメリオファミリーを襲わんばかりの勢いだったらしいが、炎呪の椅子が破壊されたことを知り、魂が抜けたように大人しくなり、めっきり表社会に姿を表さなくなったそうだ。


 ヴィブラスト家は私を追放したことを非難され、取引先からの取引中止で一時期危うかったらしいが、今はなんとか首の皮一枚繋がった様子であるそうだ。


 王妃様の働きがけのおかげか、ヴェルメリオファミリーに下手に手出しする貴族の動きは今のところ見られない。


 アラン殿下は再びご乱心に入ったらしい。ジュリ様は休学しているのかしばらく学校で姿を見ていないとか。ジュリ様もこの機会に自分をもっと大事にするべきだろうと、そう書くヴェール様の文字が笑いで歪んでいた。


 私は返事を書いた。

 一枚目を書こうと机に向かった時、ヨウが膝の上に登ってきて、そのペンと紙でお絵描きを始めてしまったのがまた可愛かった。



『ヴェール様。

 私はあれからヴェルメリオファミリーで、給仕をしたり、掃除をしたり、洗濯をするばかりの日々です。

 たまにイブと一緒に畑に行って、収穫を手伝ったり、仕立て屋でボスのお金で洋服を買って社会を回したり。

 楽しいことばかりだけど、これから少し忙しくなりそう。

 縄張り争いしていた3つのファミリーが近々会合を開くそうです。

 残念なことに、最近リベルダには麻薬が流行ってしまい、その取り締まりに3つのファミリー間で協力体制を取ることになりました。

 誰が流しているのか、裏で手を引いているのは誰なのか、私たちはこれ以上の被害が出ないように、動かなければなりません。

 でも嬉しい報告もあります。私が王妃様にお願いして、王都で炊き出しする許可を得ました。ヴェルメリオファミリーは王都で食べ物に困った人に無料でご飯を用意することができます。それは小さな一歩だけど、いつかみんなが職を得て、自分たちの働いたお金で生活できるようになるまで、私はこの活動を続けようと思います。きっと長くなるわね。でも私は、このファミリーなら、乗り越えられないものなどないと信じています。

 いつも手紙をありがとう。時間ができたらまた学校まで会いにいきます。 ただのメイより』



 手紙を書き終えて、ため息をした。

 これから忙しくなる。

 次に学校に行けるのは果たしていつになるだろう。

 最近リベルダで横行しているドラッグ、天上てんじょうは依存性が強く、密売人やどこの誰が捌いているのかも謎に包まれていた。

 みんなは「前にも同じようにドラッグや拳銃が出回ったことがある」とか言い、手慣れた感じでパトロールや情報収集をしていた。そんなみんなの働きぶりを見て思った。

 私はマフィアとして、このヴェルメリオファミリーに何も貢献できていないと。

 私の知識や経験ではどうしようもできない、マフィアの生き方とルールがこの世界にはあった。

 私はみんなの足手纏いにならないようにするだけじゃない、力になれるようにできることをしたい。


「メイ、大丈夫だよ。メイは強い。メイは優しい。メイは僕のお姉ちゃん!」


 私の沈んだ表情を読み取ったのか、ヨウは私を抱きしめながらそう言った。


「どうしようもなく息詰まった時、メイが来てくれた。前に進もうと顔を上げたら、メイは怒ったみたいな顔で覚悟を決めてた。ジーンと同じ。みんなのために頑張れちゃう人は、疲れてることも気づけないの」


 ヨウは年相応の身長がないこと、年相応の振る舞いができないことをいつも不貞腐れているが、私が落ち込んでいる時はいつだって真っ先に私を抱きしめてくれる。


「だからたまには僕だけのお姉ちゃんでいて」


 私は、この国が好き。異常気象、干魃、土砂崩れ、津波、地震、物価高騰、確かに今は何一つだって解決していないけど、私は……私にできることからやってみせる。


「ありがとう、ヨウ。一緒に郵便局までいきましょう」


 アウェイだろうが、何だって関係ない。

 ただ、守りたいだけ。






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