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帰還。

(三)


「……分ったよ。えーっと、かくして、銀河連邦初代大統領となった太郎であったが、」


「ちょ、ちょっと待った」


「なんだよ?」


「初代大統領?」


「うん。悪の皇帝を倒した功績が認められて。でも、あれだよ?そこに至るまでにもモモマンとかキンマンとかとの、」


「あ、ごめん」


「なに?」


「やっぱり最終回の内容だけでいいや、聞くの」


「そう?……じゃあ、えーっと、で、初代大統領にはなったんだけど、カンムリとのキスで不老不死の身体になってしまっていた太郎は、」


「たびたびごめん」


「あのさあ!」


「いや、一応……その不老不死ってのは『カメハマンネン』の影響?」


「当たり前だろ?何言ってんだよ」


「だよな。オッケー、続けて」


「えーっと……で、不老不死の身体では連邦の皆とも共には生きられない……ってことで、大統領の職を辞して、一人宇宙を彷徨うことになるワケだ」


「ほお、」


「で、まあ、何年、何百年、何千年と旅を続けて、銀河連邦の興亡やら新たな帝国の興亡やらが繰り返されるのを横目で見ながら、最後には『宇宙の果て』の探索に乗り出すワケだ」


「宇宙の果て?」


「そう。『宇宙の果て』」


「なんで?」


「ああ、それは、第六十四話『さらば愛しき人々よ』でジョーダンと約束した――」


「あ、ごめん」


「なんだよ?」


「それは……また、DVD借りた時に見るよ」


「そうなの?」


「…………うん」


「……で、そこから更に、何千年、何億年、何百億年……と、宇宙の果て目指して旅を続けるワケだけど、」


「それは、ずっと同じ宇宙船で?」


「カメ族の自己修復機能を持った半有機宇宙船カンムリ号でね」


「彼女の名前だ……」


「そこも泣けるんだよ」


「ちょこちょこ感動的だよね」


「で、まあ、それからどのくらいの時間が経過したのかも分からなくなった時、不思議な現象が宇宙を襲ったんだよ」


「なに?」


「えーっと、『サイクリック宇宙論』って知ってる?」


「いや」


「今、宇宙って膨張してるじゃん」


「そうなの?」


「ビッグバン後の宇宙って膨張し続けてるんだよ。で、その膨張がある時点まで行くと今度は収縮に転ずるの」


「収縮?」


「そう。つまり、それまでの時間は、今僕らが経験している方向だけに流れて行くんだけど、宇宙が収縮に転ずると時間も逆方向に流れ出すワケ」


「へ?」


「つまり、宇宙の歴史も逆戻りし出すんだよ。新たな帝国は亡んでは興るし、連邦も亡んでは興る。惑星たちも逆向きに自転・公転しながら小さな岩石やガスや氷の粒になったりするし、太陽とかの恒星もただの水素やヘリウムの塊になって、ガス星雲の中に埋もれて行く。ダークマターは分解され、最終的に残るのは原始の密度揺らぎだけ」


「……太郎は?」


「不老不死の体でそれらをずっと見続けるんだ」


「……怖くね?」


「怖いんだけど、ここからがこの物語の肝でさ。収縮し切った宇宙ってどうなると思う?」


「どうって……」


「隣にある別の宇宙と衝突するんだ。これがビッグバン」


「えっ?」


「そう。つまり、今度は再び正の方向に時間が流れ出すワケ」


「じゃ、じゃあ、地球も?」


「そう。再び出現する」


「オリンピック前の状態で?」


「そう。で、今度は太郎が破壊を止める」


「おお!!」


「な?すげえ話だろ?N〇Kだぜ?」


「じゃ、じゃあカンムリは?」


「もちろん。新たな地球で生き続けて、新たな太郎と恋に落ちる」


「おお……」


「で、不老不死の方の太郎がそれを遠くから見詰めて、エンディングだよ」


「スゲーー!!」


「なあ?スゲーだろ?」


「……いやあ、知らなかったよ。まさか浦島太郎がこんなお話だったなんて」


「まあ、途中から全部ウソだけどな」



(おしまい)

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― 新着の感想 ―
[良い点] このカオス感。なんか中学二年生だった自分を思い出します! [一言] なんか、遠い昔にこんな会話したな。そんなことを思い出させてくれるようなお話でした。浦島太郎の話が壮大なスペースオペラかと…
[一言] いや、嘘なんかい!笑
[良い点] 面白く、一気に読めてしまいました。浦島太郎を題材に面白い世界観。物語に引き込む魅力があります。話が飛んでいて、いや、嘘でしょ?と思いながら、読んでしまう自分がいるw でも、最後、やっぱり作…
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