来る道
「もしもし、ジャム将軍はいますか? お風呂に入っている? あなたは? あっ、これはこれは、ランニング巾着沈坊さん。お疲れ様です。バイブレータもっちゃんです。今ですね、『宿便No.5大ミサイル』を旅館に目掛けて撃ちました」とバイブレータもっちゃんは周りを警戒しながらコソコソと話した。
「旅館は木っ端微塵だと思います。いや、確認はしていませんが。第2、第3の『宿便No.5大ミサイル』を撃つ準備はできています。追加のミサイルの件について話を聞きたくて。えっ? いや、まだ新しいミサイルは届いていません。ジャム将軍に「すぐに『宿便No.5大ミサイル』の補給をお願いします」と伝えてください。私はアンティーク電話ボックスから掛けています。はい、分かりました。番号は4ー1206969699です。待ってます」とバイブレータもっちゃんは言うと受話器を戻して足でリズムを取り出した。
バイブレータもっちゃんは辺りを睨み付けながらアンティーク電話ボックスの中にいた。
りんりりりん
直ぐにアンティーク電話ボックスに電話が掛かると、バイブレータもっちゃんは受話器を取った。
「はい、ランニング巾着沈坊さん、ありがとうございます。で、どうなりましたか? えっ? とりあえず『宿便No.5大ミサイル』3発分と『鼻空想Markシックス』を5発分と『アンダー・ヘアー・カット・イン・TSUYOSHI』を10発分を送る? どうもありがとうございます。あのう、すみませんが、ランニング巾着沈坊さん。『アンダー・ヘアー・カット・インTSUYOSHI』って何ですか? えっ? 最新型の卑怯な代物? 膨らませた風船の中に小水とワサビを入れたものだって!? 恐ろしいやい!! 汚くて恐ろしいやい!! 直ぐに届く? 分かりました。合図を出せ? はい。アンティーク電話ボックスから出て5分間、闇夜に向かって小指を立てろ? はい分かりました。ハイハイ、どうもどうも失礼しまぁ~す」とバイブレータもっちゃんは言ってから電話を切ると悪態をつきはじめた。
「クソッ、5分もよ、小指を立てられるかって話だよな! ダルいわな。人をなめんな。ジャム将軍のハゲ! 謀反起こすぞハゲ!」とバイブレータもっちゃんは言ってアンティーク電話ボックスから出た。
ぴぃーよこちゃん
わんわんわんわん
ゲロゲロオエッオエーッ
霧も出てくる深い夜更けだ。アンティーク電話ボックス以外に灯りはない。草むらから票子(説明しよう。「票子」はEARTHで言えば「ヒヨコ」ちゃんと同じ種類だ)と江沼(説明しよう。同じく「江沼」は「犬」)と返る(かえる)(説明しよう。「返る」は同じく「カエル」に該当する)の鳴き声が怨めしげに聞こえてきた。
バイブレータもっちゃんは闇夜に向かって左手の小指を突き立てた。
キャプテン・ミルクが飛び出してバイブレータもっちゃんに頭突きを喰らわそうとした瞬間、向こうの道から人の気配がした。
キャプテン・ミルクは慌てて木の陰に隠れた。
「♪父の子、母の子、泣きながらの子、一刻だぁーって負けないの♪ 父の子、母の子、泣きながらの子、一刻だぁーって負けな~いの~♪」
薄気味悪い子守唄が聞こえてきた。
「だ、誰だ!?」バイブレータもっちゃんは身を低くして子守唄がする方向を見た。
現れたのは赤い頭巾を被って真っ黒なパジャマを着ている女の子で、泣きながら子守唄を歌っていた。
「深夜3時過ぎに、な、なん何だ?」バイブレータもっちゃんはアンティーク電話ボックスの中に避難した。
赤い頭巾の女の子は、ゆっくりとアンティーク電話ボックスの前に立ち止まった。
「おいちゃん、おいちゃん」と赤い頭巾の女の子は泣きながらバイブレータもっちゃんに呼び掛けた。
「お、お嬢ちゃん、な、な、なんだい?」
「おいちゃん、おいちゃん。えーん」と赤い頭巾の女の子は泣きながらうずくまった。
「お嬢ちゃん、どうしたのかな? パパとママは?」
「おいちゃん、おいちゃん。あそこでね、あたちのお婆ちゃんが呼んでるよ~」と赤い頭巾を被った女の子は左側を指差した。
「えっ!?」
バイブレータもっちゃんは急いでアンティーク電話ボックスから出ると闇の道を見つめた。
頭に白いタオルを巻き、丹前を着て、もんぺを履いたお婆ちゃんがいた。
「お待ち堂さまでした。運んできました」とお婆ちゃんは言うと腰を曲げてアンティーク電話ボックスまで歩こうとした。
バイブレータもっちゃんはお婆ちゃんに駆け寄った。
「お婆ちゃん、何を持ってきたのかな?」バイブレータもっちゃんはお婆ちゃんの手元を見たり後ろ側を覗き込んだりした。
「持ってきたのは、先ほど注文された品物です」とお婆ちゃんは言ったが何処にも何も見当たらなかった。
「どこにあるのよ?」とバイブレータもっちゃんは言って辺りを探し始めた。
「すみません。あそこに置いてきました。ソリに乗せて、ここまで品物を運んでは来たんですけれど、途中でヤラかしてしまって一気に壊れたみたいで。凄くウンコ臭くてウンコ臭くて。何事かと思って怖くなってしまって。凄くウンコ臭いんですよ。ウンコよりもウンコ臭くて。弁償は会社で致しますと上司に言われてきました」もんぺを履いたお婆ちゃんは頭を深々と下げて誤り続けた。
「おいちゃん、おいちゃん、あたちのお婆ちゃんを許して」赤い頭巾を被った女の子は泣きながらバイブレータもっちゃんの足にしがみついてきた。
弱りはて困り果てたバイブレータもっちゃんは、ランニング巾着沈坊に連絡するかどうか迷った。
「お婆ちゃん、お嬢ちゃん。少し待っててね」とバイブレータもっちゃんは言ってアンティーク電話ボックスに駆け込んだ。
「すみません、ランニング巾着沈坊さん。今ですね、品物が届けられましたが、『宿便No.5大ミサイル』が破損したみたいで配達人が謝ってきました。どうしたら良いですか? えっ? 直ぐにまた送る? 分かりました。ハイハイ失礼しま~す」とバイブレータもっちゃんは言って電話を切った。
「お婆ちゃん、お嬢ちゃん。大丈夫でした。また送るとのことです」
「あー、ありがとうございます。大変申し訳なかったです。壊れた荷物はどうしますか?」ともんぺを履いたお婆ちゃんは言った。
「破損した物以外、他の品物は大丈夫みたいなんで、後で私が取りに行きます」とバイブレータもっちゃんは言った。
「おいちゃん、おいちゃん。ありがと。花火をあげる」と赤い頭巾を被った女の子が泣きながら言った。
「お嬢ちゃん、花火?」
「うん。先公花火だよ。算数の先生が趣味で作った先公花火なんだってさぁ。袋にね、先生の顔写真とね、自己紹介が書いてあったよー。さっき、コンビニエンスチュトアンでお婆ちゃんが買ってくれたのー」
「お嬢ちゃん、袋を見せてくれる? あら? 1本先公花火が足りないね?」
「うん。さっき、1本だけ先公花火をした」
「お嬢ちゃん、何処で花火をしたのかな?」
「あそこ」
赤い頭巾を被った女の子は百メートルほど先の道を指差した。
道のど真ん中で、炎が徐々に燃え盛かっていると思って見ていたら、アホみたいに一気に燃え広がった。
「何か燃えてるぞ!」とバイブレータもっちゃんは言って、お婆ちゃんとお嬢ちゃんを見た。
「すみません、すみません。本当に、全くヤラかすつもりはサラサラなくてもヤラかしちゃって。すみません、先ほど注文された品物は全滅です。先公花火が品物にぶつかって燃えちゃって。すみません、すみません」ともんぺを履いたお婆ちゃんは何度も何度も詫びた。
「おいちゃん、おいちゃん、あたちのせいです。あたちのせいです」と赤い頭巾を被った女の子は再びバイブレータもっちゃんの足にしがみついてきた。
「すみません、すみません」ともんぺを履いたお婆ちゃんは何度も何度も謝ってきました。
「おいちゃん、おいちゃん、あたちの、あたちのせいです。あたちのせいです。おいちゃん、おいちゃん、ごめんなさい。あたちのせいです。おいちゃんに先公花火をあげるから、お婆ちゃんとあたちをゆるしてください。あたちのせいです。あたちのワガママをゆるして。あたちのせいです。あたちのせいです。おいちゃん、おいちゃん、あたちの、あたちの、あたちのせいです」と赤い頭巾を被った女の子は泣きながら足にしがみついていた。
☆続いちゃう☆
いつもありがとう✨✨✨✨✨