ムササビジュニア号の玉座
総勢5名の巨漢な男たち、プラス、マツタケボウヤがムササビジュニア号の大広間に集まり落ち着きなく起立していた。
ジャム将軍は一言も発せず30分間も回転式玉座で座り回り続けていた。
ムササビジュニア号は、悪の要塞、悪の基地、悪の住処、悪の楽園、悪の出所と呼ばれているいわく付きの宇宙船だ。冷え冷えとした外装からして不吉な印象を醸し出す嫌な宇宙船であることは間違いない。
ジャム将軍は巨漢な男たち5人組をボディーガードとして雇っていた。皆、ジャム将軍自らスカウトして見つけた宇宙人であった。
雇われボディーガードの5人組は、荒くれ者、やさぐれ者、血の気の多い者、気が短いし足も短い者、分からず屋の者、とだけ言っておこう。
マツタケボウヤは命辛々小型宇宙船で脱出することができて混浴温泉惑星から200万キロ離れた近距離にある惑星、『グバビ胸焼胃液惑星』に戻ってきた。混浴温泉惑星の侵略準備態勢のためにムササビジュニア号は隠れていたのだ。『グバビ胸焼胃液惑星』にはムササビジュニア号と3隻の宇宙船が侵略に控え待機していた。
ジャム将軍が回転式玉座を静かに止めた。
5人組のボディーガードは敬礼しながらジャム将軍の様子を見ていた。
マツタケボウヤは恐怖から震えていて、ジャム将軍の姿から目を背け黙って下を向いていた。
「オウ、オウ、オエッ、オエ~~~~~ッ!! 酸っぱい! 気持ち悪ぅ~~~~。オエッ、オエッ、オエッ、オエ~~~~~ッ!! ヤバい、出ちゃう、出ちゃう、イッちゃいそう。漏れる!! 全てが酸っぱい!! こ、こ、これはマズイ!! 吐く!! 吐きたい!!」とジャム将軍は弱々しく小声で叫ぶと吐き気を催しトイレにダッシュした。
慌てた5人組のボディーガードはジャム将軍の後に続いて駆け出して行った。
ジャム将軍は目を回して船酔いみたくなり酔ってしまったのだ。そりゃさぁ、30分間も回転式玉座で回り続けりゃそうなるのは当然だよね。つまりジャム将軍は馬鹿みたいに馬鹿だから馬鹿なんだよな。
10分後。
「あー、酔ってしまったなぁ。自分にね」とジャム将軍は強がって言ったが顔は青ざめていた。
「で、マツタケボウヤよ、何で混浴温泉惑星にいるはずなのにだ、このムササビジュニア号に戻って来たのだ? 先陣を切る形で混浴温泉惑星に居ろと命令したはずだが……」ジャム将軍は木綿のハンカチーフで口を拭きながら言った。
「ジャム将軍、じ、実はとんだ邪魔者がいまして」マツタケボウヤは顔をあげずに言った。
「誰だ?」ジャム将軍は木綿のハンカチーフの動きを止めてマツタケボウヤを睨んだ。
「キャプテン・ミルクです」
「なね(何)? なね? キャプテン・ミルクだと!?」とジャム将軍は言って木綿のハンカチーフを畳んで机の上に置いた。
「なね? もう一度言え。誰が居たって?」
「キャプテン・ミルクです」
「なね? なねだって!! キャプテン・ミルクだって!! なねでキャプテン・ミルクが混浴温泉惑星に居るんだ? えっ!? なねでだ?」
「し、し、知りません」
「マツタケボウヤよ、それを知らせるために戻って来たという訳なのか?」
「は、はい、ジャム将軍」
「それで?」
「キャプテン・ミルクはジャム将軍に対してかなり辛辣な事を言っていましたので報告も兼ねて戻りました」マツタケボウヤは顔を上げられずにいた。
「なねて? なねて言っていたん?」
「あまりにも酷い言葉なので自分の口から言うのは躊躇います。すみませんジャム将軍」
「良いから言えー! なねて、なねて言ったんだ!?」
「『ジャム将軍は馬鹿だよな』とか」マツタケボウヤは目を閉じて歯を食い縛るように言った。
「ふーん。で、他はなねて言ってた?」
「『ジャム将軍はクソ野郎』だと」
「ふーん。それで他はなねて?」
「『ジャム将軍はチビのクセに背を高く見せたがる』とか」
「ふーん。うんうん、他はなねて?」
「『ジャム将軍はモテないクセにモテる男風を装おう』とか『陰毛みたいなヘヤスタイルをしている』とか『肛門みたいな顔をしている』とか『ダサいクセにダサくない振る舞いをしてダサさを際立たせているダサい奴』とか『ウンコみたいな顔をしているよな』とか『ウンコみたいな生き様だよな』とか『ウンコみたいな仕事ぶりだよな』とか『朝からウンコと語らうのがルーティン』とか『金の玉を崇めるゴールドボールくん』とか『ウンコなくして成長なしがジャム将軍の座右の銘だよな』とか『ウンコのために頑張ってオシャレをしている』とか『背中毛とケツ毛が繋がっている』とか『ある小学5年生の学級委員と癒着している』とか『馬鹿なのだ。公明正大に馬鹿なのだ』とか『アホなのだ。わき目もふらずにアホなのだ』とか『痔主の鏡』とか『沈殿物』とか『腐った水』とか『陰毛みたいな生き様』とか『下痢みたいな生き様』とか『鼻糞みたいな生き様』とか『馬鹿なクセに馬鹿じゃないと言い張る馬鹿な奴』とか『クズみたいな奴』とか『浮気していないのに浮気していると言い張る偏屈野郎』とか『脱糞みたいな生き様』とか『脳足りん』とか『馬鹿も休み休み言え』とか『指導力なしの指導者』とか『愚か者の最高峰』とか『パンティを履いてパンティを天に捧げる変質者』とか『単なる馬鹿丸出し』とか『チンチン電車を無賃乗車するチンチン電車マニアを装おうチンチン電車野郎の下っ端というよりチンチン電車を侮辱するゲスやろう』とか『とにかくアソコも器も思考も小さい男』とか『生きた屍』とか『ミスター・ウンコ』とか言っていました」パニック状態のマツタケボウヤは下を向いたまま個人的なものかどうか知らないけど有ること無いこと思いの丈をブチまけた。
5人組のボディーガードは両手で顔を隠して壁に向かってしゃがんでいた。
ジャム将軍は回転式玉座に座ると回り始めた。
「ふーん。で、本当にキャプテン・ミルクはそう言ったのか?」ジャム将軍は回転式玉座を高速で回りながら言った。
「はい、ジャム将軍。大体はそんな感じだったような気がします」とマツタケボウヤは言った。明らかにマツタケボウヤは混乱気味の様子だった。
「あのガキーっ!! 絶対に許さんべ!! ナメやがりやがって許さんべ!! ナメやがってよう!! 絶対に絶対に絶対に許さんべ!!」ジャム将軍は立ち上がった。
「オエッ オエッ オエッ オエッ、オエ~~~~~ッ!!」とジャム将軍は口を押さえてトイレにダッシュした。
☆続いちゃう☆