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ファンの言い分

  挿絵(By みてみん)


 「タンコブ桃子ちゃん、桃子ちゃん、生中継なんだから泣かないで落ち着いて話してね」司会者の白色トマトはなだめるように優しく言った。

 

 「うぇーん、優しい~。ありがとうございますぅ。ぐすんぐすん。はい、こちらタンコブ桃子でぇす。わたくし、今ですね、鼻ゲルゲ国内にいますぅ。鼻ゲルゲ国はですね、ラルルラボン惑星にあります『オッパリン国』のすぐ隣にある国なんです。オッパリン国の首都『オペペン市』で、あの大宇宙人気No.1のスーパースター、新人のスーパー・トップ・アイドル、超美少女、超美人の愛星・サマー・えりかちゃんがデビューアルバムを制作していたんです。制作は順調で快調でした。えりかちゃんのファンクラブも、先日、遂に54億人を突破しました。ファンが急激に増えた理由はですね、えりかちゃんが所在不明、行方不明になってしまった事が大きいと思われます。えりかちゃんはですね、厳密にはオッパリン国のオペペン市にあるレコーディング・スタジオ、『オペペン・ドール・スタジオ』でファーストアルバムの制作をしていました。昨日、わたくし、『オペペン・ドール・スタジオ』に行って取材してきたVTRがありますので御覧ください」タンコブ桃子は昨日1日に起こった出来事を思い出しながらVTR明けを待った。

 

 テレビラリンチュララリンの映像が切り替わると真っ暗な画面になって直ぐに真っ赤な文字で『衝撃! 愛星・サマー・えりか、一体何処へ消えたのか!?』』とテロップが出てきた。

 

 タンコブ桃子ちゃんは厳粛な顔をして歩いていた。オペペン・ドール・スタジオの前に到着するとカメラに向かって語り掛けた。

 

 「私は今、『オペペン・ドール・スタジオ』の前に来ています」タンコブ桃子ちゃんは、カメラマン、照明係、メイクアップ・アーティスト、タンコブ桃子ちゃんのマネージャー、タンコブ桃子ちゃんを含めて5人でオペペン・ドール・スタジオに来ていた。タンコブ桃子ちゃんはカメラマンに向かってゆっくり歩きながらナレーションをしていた。

 

 「皆さん、こちらを見てください。オペペン・ドール・スタジオです。見事な最新音響設備を整えた最高峰の音楽スタジオです。このスタジオで愛星・サマー・えりかちゃんはデビューアルバムの制作に励んでいました」タンコブ桃子ちゃんはオペペン・ドール・スタジオの屋上を見上げると眩しそうに目を細めた。カメラワークはタンコブ桃子ちゃんの視線に合わせてカメラを屋上に向けてズームをした後に太陽にピントを合わせた。(説明しよう。大宇宙では太陽なんていくらでもゴロゴロあるんだよ。見つかっただけでも20個もあったんでビックらこいたからね。あはははは。とにかく、大宇宙は椎名・ミッシェル・ローズ・ユズキちゃんの言葉を借りるとね、めちゃめちゃバカデカイ)

 

 「それでは、あそこにいらっしゃる、愛星・サマー・えりかちゃんのファンとみられる方にインタビューをしてみたいと思います」タンコブ桃子ちゃんは、頭にハチマキを巻き、水色の長袖のシャツ、縞模様の短パン、緑色のリュックサックを背負ったメガネを掛けた太めの男の子に話し掛けてみた。

 

 「お忙しいところを失礼致します。あなたは愛星・サマー・えりかちゃんのファンの方ですか?」タンコブ桃子ちゃんはオーダーメイドの桃色のマイクを太めの男の子に向けた。

 

 「うん。そうだ。僕は愛星・サマー・えりかちゃんのファンだ」太めの男の子はカメラに向かって学生証を見せた。

 

 「あっ、プライバシーは大丈夫ですか?」タンコブ桃子ちゃんは動揺して言った。

 

 「大丈夫だ」太めの男の子は頷いて学生証をカメラに近付けた。

 

 「大丈夫なら良いのですが、これは生中継ではないので、一先ず、プライバシーは出さないように、後でこちらの方で編集して配慮します。ちゃんと調整しますね」とタンコブ桃子ちゃんは言った。今回の取材は録画インタビューだというのを思い出して安堵した。

 

 「お姉さん、僕は別に名前が出ても構わないよ。プライバシーもプライベートもちっぽけなもんだから。僕の名前は発揮胆管助はっきたんかんすけです。現在、大学2年生を3回やってます」

 

 「分かりました。改めまして、御質問致します。発揮さんは愛星・サマー・えりかちゃんのファンですか?」

 

 「大ファンだ。絶対に誰にも負けないくらいの大ファンだ」発揮胆管助はツバを飛ばして力説した。

 

 「今回の愛星・サマー・えりかちゃんの行方不明、または失踪事件についてどう思われますか?」

 

 「きっとえりかちゃんは、このオペペン・ドール・スタジオの中にいるはずだ。だってレコーディングをしていたんだよ? しかもデビューアルバムなんだよ。行方不明なんて馬鹿げてるよ!」と発揮胆管助はっきたんかんすけはムキになって失踪事件を否定した。

 

 「気持ちは凄く分かりますが、えりかちゃんのチーフマネージャー、第2マネージャー、所属事務所の社長やスタッフやオペペン・ドール・スタジオのスタッフ達は、皆、口を揃えてえりかちゃんは失踪、行方不明、現在、行方を探していると言っています。公式発表なんですから間違いないです。事実なんです。ぐすんぐすん」とインタビュアーのタンコブ桃子ちゃん涙ぐみながら言った。

 

 「お、お、お姉さんも、えりかちゃんのファンなのか?」

 

 「ふぁい。ぐすんぐすん」

 

 「お姉さん、泣くなよな。泣いて済むなら良いけども、泣いて済まない状況なんだから、泣かないようにしないとさ」と発揮胆管助は言ってリュックサックからチョコレート・ルルルル・ルン(説明しよう。「チョコレート・ルルルル・ルン」はチョコレートの子孫であり、夢物語であり、『夢から覚めないうちに、はよ、お食べ』という祖母の優しい心遣いに似た幻のデザートと言われている食べ物だい)を取り出して半分に割ると食べ始めた。

 

 「すみません。私も動揺していまして。インタビューを続けます。発揮さんは何かえりかちゃんについての情報はありますか?」

 

 「聞いた話しなんだけど、えりかちゃんは女性と何処かに出掛けたらしいんだ。直ぐにこのスタジオに戻ってきたという話もあるし、イマイチ、ハッキリとしていないんだよ。何処かに出掛けたという話が気になるところ。僕としてはこのオペペン・ドール・スタジオにいると思うね。間違いなく居るね」発揮胆管助はチョコレート・ルルルル・ルンを口の中に放り込むとリュックサックからミネラルウォーターを出して飲み始めた。

 

 「女性と何処かに出掛けた? 気になる話ですね。他に何か知りませんか?」

 

 「僕よりも、あそこにいるおじさんの方が何か知っているかもしれないよ。あのおじさんもえりかちゃんのファンなんだ。僕の方がえりかちゃんの本物のファンなんだけどもね、あのおじさんもなかなかのものさ。僕は、ちょっとウンコしたいのでトイレに行きます」と発揮胆管助は頭を下げるとトイレに行った。

 

 「すみません、発揮さん、あのおじさんの名前は?」

 

 「ワン・カット・イン・武蔵さんです」

 

 「どうもありがとうございます」

 

 インタビュアーのタンコブ桃子ちゃんはワン・カット・イン・武蔵の元まで歩いていった。

 

 「すみません。わたくし、報道キャスターのタンコブ桃子と申します。ワン・カット・イン・武蔵さんですよね? 少しお話を聞いても良いでしょうか? 発揮胆管助さんから御紹介を受けました」

 

 「良いよ。なんだい?」ワン・カット・イン・武蔵は顔だけ丸出しの全身黒タイツを着ていて双眼鏡でオペペン・ドール・スタジオを覗いていた。

 

 「武蔵さん……」

 

 「ワン・カット・インと呼んでよ」

 

 「ワン・カット・インさん、ちょっと質問の前に聞きますが、何で全身黒タイツを着ているんですか?」

 

 「最近ね、僕の住んでいる惑星でもね、怪しげで変なウィルスが流行っているからね、全身黒タイツを着て変なウィルスから完全防御をしているところ」

 

 「で、で、でも、大丈夫ですかね? 変なウィルスなら、口にマスクをするのが正しい予防法というか選択だと言われていると思いますが、全身黒タイツだけで大丈夫なんですかね?」

 

 「全然大丈夫。変なウィルスから身を守るためだけに、しっかりと危機感を持って全身黒タイツを着ているだけなんだから。変なウィルスから体を守るためには全身黒タイツが1番」

 

 「ワン・カット・インさん本人が納得して決めたのなら尊重は致しますが、私に変なウィルスは移さないでくださいね」

 

 「心配しないでください。僕は全身黒タイツを着ているから変なウィルスは持っていないし移しません。大丈夫ですよ。ラルルラボン惑星自体には変なウィルスは流行っていないから極めて安全安心ですし、僕は人に不快感を与えない為にマナーとして全身黒タイツを着ているのです」とワン・カット・イン・武蔵はタンコブ桃子ちゃんにニカッと笑ってから双眼鏡を覗いた。

 

 「ワン・カット・インさん、愛星・サマー・えりかちゃんのファンですか?」

 

 「もちのろん、もちのろんです。もちのろん、僕は愛星・サマー・えりかちゃんの大ファンです。さっきまであそこにいた発揮胆管助はっきたんかんすけなんてね、ハナクソみたいなね、にわかファンですよ。実力的には僕の方が本物のファンなんです」ワン・カット・イン・武蔵は背負っていた黒のリュックサックからチョコレート・ルルルル・ルンを出して食べ始めた。

 

 「あっ、そのチョコレート・ルルルル・ルン、発揮胆管助さんも同じメーカー品のを食べていました」

 

 「クソッ、ペッ」ワン・カット・イン・武蔵は食べていたチョコレート・ルルルル・ルンを地面に吐き出すと、持っていたチョコレート・ルルルル・ルンを遠くに投げた。

 

 「コラッ!! そこの全身黒タイツを着たオッさん!! 私有地だぞ!! 勝手にゴミを捨てるな!! 全身黒タイツを着たオッさん、宇宙モッツァレラ・すっぱい・スパイス・スパイ局か、大宇宙警察か、強力メジャー・ガードマン連合軍団を呼ぶぞ!!」とオペペン・ドール・スタジオの前にいる老齢の警備員は怒鳴った。

 

 「す、すみません」とワン・カット・イン・武蔵はペコペコ頭を下げながら小走りでチョコレート・ルルルル・ルンを取りに行った。

 



 

    ☆続いちゃう☆

 

  挿絵(By みてみん)

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