キャプテン・ミルクの怖さ
「頭和気が切れましたよ」高部鼻ソカシコはふて腐れていた。
「もう一度、頭和気を掛けろ。マツタケボウヤ上官に素っ裸公園まで来てくれと言え」キャプテン・ミルクは一刻を争うために固い決心の元で果敢なまでに強気な行動をした。
「もう掛けたくねー」高部鼻ソカシコは唇をひん曲げて言うと瞼を閉じてしまった。
「こりゃ、またタトゥーだな。今度は「痔の極み」と彫ろうかな? それとも「僕ちんはワキガだよ。うふふふふ」にしようかな? それとも「毎日、僕ちんはチンチン電車を無賃乗車しているよう。むふふふふ」にしようかな?」
「チッ、分かりましたよ!」高部鼻ソカシコは再び頭和気を掛けた。
プルンプルンプルン
ガッチャリンチャン
「なんだ?」愛想悪い声が漏れ聞こえてきた。
「マツタケボウヤ上官、大事な話があります。今すぐに素っ裸公園まで来てください」
「眠い。大事な話は明日にしろ」
「明日じゃダメです。今すぐにマツタケ上官に会いたい。会って、これからの2人について大事な話をしたい」
「ふざけるな!! そんな気はない!!」
ガチャン
ぷーぷーぷー
「切れました。僕、何か変なことを言ったかな?」高部鼻ソカシコは血の気の引いた顔をしていた。
「もう一度だ。もう一度、頭和気を掛けろ!」キャプテン・ミルクは非情な男にだってなれちゃうのだ。
「もう本当に掛けたくないです」高部鼻ソカシコは小さな声で抵抗した。
「コンパクトの鏡を見てみろ!」
「えっ!?」高部鼻ソカシコは持っていた鏡を見た。
『うんこ』とジャパンゴールデンウィークの言葉、平仮名で書かれたタトゥーがおでこに彫られていたのだった。
「やっぱり、またうんこかよ!! 止めてくださいよ!! うんこって、うんこって、もううんこは嫌だ!!」高部鼻ソカシコは顔を歪めて抗議した。
「おい、うんこ。マツタケボウヤ上官とやらに頭和気だ! 早く掛けろ!」キャプテン・ミルクはうんこの言い分を無視した。
「掛けます」高部鼻ソカシコは3度目の頭和気を掛けた。
プルンプルンプルン
ガッチャリンチャン
「マツタケボウヤ上官?」
「てめえ、いい加減にしろよ! 緊急事態用の頭和気に頻繁に掛けてくるな!」
「お願いします! 今すぐに会いたいのです!」
「無理だと言ったはずだ」
キャプテン・ミルクはうんこから頭和気を奪い取って、周りにも相手の声が聞こえる『頭和気のほころび機能』のボタンを押した。
「マツタケボウヤ上官に子供がいますよね?」とキャプテン・ミルクはマツタケボウヤ上官に話した。
「ああ。うん? 声が変だぞ。どうしたんだ?」異変に気付いたマツタケボウヤ上官は疑うように冷たい声で言った。
「まだ伸び盛りの成長期でして、声変わりの途中なんです」キャプテン・ミルクはうんこを睨みながら話していた。
「高部鼻ソカシコ、だったかな、確か君は39歳だろう? まだ成長期なのか?」
「はい」
「そうか。人それぞれなんだな」
「マツタケボウヤ上官の御子様は?」
「娘が1人いる」
「実はさ、マツタケボウヤ上官、あんたの娘は預かったよ」
「き、き、貴様、正気か!?」マツタケボウヤ上官は動揺した。
「早く素っ裸公園に来いよ! クソ野郎のイカサマ野郎!」
「高部鼻ソカシコ、お前はクビだ! お前を殺してやる。そこで待ってろ!」マツタケボウヤ上官は激しく罵り頭和気を切った。
会話を聞いていた高部鼻ソカシコは茫然自失で口を開けていた。
「高部鼻ソカシコ、良かったな。お前はクビだとさ。もうお前は、ただの不審者だ」時にはキャプテン・ミルクは冷酷にだってなれちゃう極めてCOOLな男なのだ。
「酷い、酷すぎるよ。あんまりだ。やっと見つかった仕事なのに」高部鼻ソカシコは目を見開いて話していた。血の気の引いた顔には絶望が満ちていた。
うんこと書かれたタトゥー、彼に残されたのはうんこと書かれたタトゥーだけだった。うんこと書かれたタトゥーと共に生きなければならない恐怖に支配されていた。うんこと書かれたタトゥーは消せるかもと高部鼻ソカシコは思った。
「そのタトゥーは一生消せないようにしたよ」とキャプテン・ミルクはさりげなく恐ろしい忠告をしちゃた。
高部鼻ソカシコは絶望のどん底にいた。一生、うんこと書かれたタトゥーがあるなんて。『なんでこんなことになったんだろう?』と思いながら隣にいる川谷ゲリズチョンの顔を見た。
ヘラヘラ笑いっぱなしのグロッキー状態でいる川谷ゲリズチョンは高部鼻ソカシコに「凄いな、高部鼻ソカシコ。昇進おめでとう! 出世頭だとはビックリだよ! 今まで頑張ってきて良かったな! きゃははははははは。きゃははははははは。昇進したんだからさ、何か奢れよ」と言って握手を求めてきた。
素っ裸公園の入り口に黒い人影が佇ずんでいた。
黒い人影は素っ裸公園に入ろうかどうしようか迷っている素振りに見えた。
「マツタケボウヤ上官!!」と高部鼻ソカシコは黒い人影に向かって叫んだ。
黒い人影は意を決したようにして歩き出してきた。
「マツタケボウヤ上官、来てくれてありがとうございます。僕はハメめられた」高部鼻ソカシコは正座したままで言った。
「高部鼻ソカシコ、こちらの方々は誰だ?」マツタケボウヤ上官はキャプテン・ミルクとブルーバードAYAと何気に顔が痛々しい川谷ゲリズチョンを見た。
「きゃははははははは。マツタケじゃん。マツタケボウヤのマッちゃんじゃん。口うるさいバカな上官野郎め。きゃははははははは。死ね!」とグロッキー状態で酩酊している川谷ゲリズチョンは笑いながら言った。
「川谷ゲリズチョンだな。お前もクビだ!」マツタケボウヤ上官は川谷ゲリズチョンの顔をぶん殴ったが、川谷ゲリズチョンは笑い転げるだけで全く効いていなかった。殴られすぎて痛みを感じなくなっているのだ。
「こちらの二人は誰なんだ?」マツタケボウヤ上官はキャプテン・ミルクにメンチを切っていた。ブルーバードAYAにも近寄ってガンを飛ばしていた。
「マツタケボウヤ、そちらはキャプテン・ミルクです。女性はキャプテン・ミルクの知人と思われます」高部鼻ソカシコはクビを宣告されたので上官を呼び捨てにした。
「キャ、キャ、キャ、キャプテン、キャプテン、キャプテン、キャプテン・ミルクだって!! これはかなりマズイ!!」マツタケボウヤは走って逃げようとしたが全然前に進まなかった。
「あららら、足が全く動かない!! こむら返りかなぁ?」とマツタケボウヤは泣きべそをかきながらキャプテン・ミルクを怯えた目で見ていた。
☆続いちゃう☆
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