大衆食堂りえこちゃん家のメシは美味いから来てみそ2
キャプテン・ミルクとブルーバードAYAは安らぎ商店街を突き抜けて大人向けの御店が立ち並ぶ道に出た。古本屋の向かい側に大衆食堂『りえこちゃん家のメシは美味いから来てみそ』があった。
「キャプテン・ミルク、丁度、おばさんがテイクアウトしていますよね? あの辺りで不審な二人組の男を見ました」とブルーバードAYAはガラスに反射したSUNに目を細めて指差しながら言った。
「わかった。まずは店の中に入って様子を見ることにしよう」と今度はキャプテン・ミルクが先頭に立ち道を横切った。
キャプテン・ミルクは暖簾を潜って扉を開けると先にブルーバードAYAを進ませた。
「いらっしゃいやしー。何名様ですかー?」とアルバイトの若い男性が言った。
「2名です」とキャプテン・ミルクは少し緊張しながら言った。
「御客様、ちょいと込み合っていましてねぇ、奥の片隅にある寂しげな場所に丁度2席ありやすんで、そこでよろしいですかねぇ? 別に寂しげな席だからといって御客様が寂しげで可愛そうな人間だとは思っていませんから。人は淋しさがある生き物ですからね、仕方ないっすよね。宇宙人や異星人や怪獣だってね、淋しさを隠し持ってたりしちゃったりなんかしちゃってね」と若いアルバイトの男性はバツが悪そうに言った。
「あのさぁ、余計な御世話だし、何を言っているのか全然意味が分からんけども、まあ奥の席でも大丈夫ですよ」とキャプテン・ミルクは背伸びして奥の席を確認した。
「ありがとございやすー。2名様でぇーす。さささ、どうぞどうぞ、こちらへ」と若いアルバイトの男性は腰を低くして店内を掻き分けながら奥の席へと案内した。
キャプテン・ミルクとブルーバードAYAは席に座った。席は店内を見渡せる好条件な席だった。入り口と厨房とカウンターとお客の姿がハッキリと見ることができる席だった。
「いらしゃい。ご注文が御決まりになりましたら呼んでね」とメニュー2枚を持って来た若いアルバイトの女の子が愛想よく元気よく明るく言った。
「ありがとう」とキャプテン・ミルクとブルーバードAYAは言ってメニューを受け取るとページを開いてハァーと深い息を吐ききった。
「さて何を食べようかな?」とキャプテン・ミルクは言って、一旦メニューを流し読みしながら全体を把握した。『海辺のエチュードラーメン 800ヘンドリモンドリ』というのが美味しそうに見えた。
「よし、俺は『ジャパンゴールデンウィーク風のラーミェン』にします」とキャプテン・ミルクはニコニコしながらメニューを閉じるとテーブルの端に置いた。
「私は『ジャパンゴールデンウィーク風チャーヒャン』」とブルーバードAYAは言ってメニューを置いた。
「すいません」とキャプテン・ミルクは言って先ほどの若いアルバイトの女の子に手を上げた。
「はい、御注文をどうぞ」
「ジャパンゴールデンウィーク風ラーミェンとジャパンゴールデンウィーク風チャーヒャンをくださいな」とキャプテン・ミルクは言ってメニューをアルバイトの女の子に手渡した。
「はい、他に御注文は御座いますか?」
「ないです。1つ聞きますが、ラーミェンとチャーヒャンってなんですか?」
「ラーミェンはジャパンゴールデンウィークで流行っているラーメンのワンランク上のクオリティーを誇るラーミェンです」
「はあ、なるほど。ではチャーヒャンは?」
「こちらはジャパンゴールデンウィークで流行っているチャーハンのワンランク上のクオリティーを誇りつつあるチャーヒャンです」
「なるほど。それを楽しみに待ちます」とキャプテン・ミルクはよく分からなかったけど分かったフリをして言った。
アルバイトの女の子が厨房に向かって「ジプシー姉さんこと、りえこちゃん。ジャパンゴールデンウィーク風ラーミェン&ジャパンゴールデンウィーク風チャーヒャンを1つずつよろしくお願いいたします」と言った。
「あーいよーっ」と店主のりえこちゃんは愛想なく返事した。
「ブルーバードAYAさん、聞きましたか? ジプシー姉さんだってさ」とキャプテン・ミルクは言って厨房を見た。ジプシー姉さんこと、店主のりえこちゃんは鍋をブン回して火を吹かせているのに瞬きせず目を見開かせて料理をしていた。
「凄い。鍋から炎が出ているのに目を閉じてませんよ。プロフェッショナルな顔をしていますよね」とブルーバードAYAもりえこちゃんを見ていた。
レトロな作りの店は繁盛していて賑やかだった。お様は30人も入っていた。皆、アルコールや郷土料理やジャパンゴールデンウィーク風料理などを嗜んでいるようだ。笑い声、泣き声、歌声が充満した陽気な大衆食堂。温もりがある店内にいると誰もが懐かしの友達のように思えた。日常生活の煩わしさやストレスや孤独から解放されて仲間たちと喜びや楽しさを分かち合う姿を見ていると幸せすぎて泣けてくるように思えたキャプテン・ミルクは目を細めてお客たちの姿を見ていた。
メニューには祝20周年記念と書かれていたのでベテランの域、老舗になりつつある大衆食堂と言ってもいいであろう。他には『ジャパンゴールデンウィークの大衆食堂に敬意を込めて作ったお店です。愛されるように頑張っていきますので、これからもよろしくお願いいたします。ライム・金環・りえこより』と印刷されていた。
「ブルーバードAYAさん、このお客の中に不審な二人組の男はいますかね?」とキャプテン・ミルクは声を落として背中を丸めると横目で店内を盗み見して見回した。
「後ろ姿しか覚えていないので難しいです。後ろ姿を見れば、なんとかなるかもしれませんけど」とブルーバードAYAは言っておしぼりでおでこを拭きながら店内を見ていた。
「うーん、確かに難しいでしょうね」とキャプテン・ミルクは同意した。
「そうだ! ブルーバードAYAさん、水や砂糖水やお味噌汁はセルフだから、自分で取りに行く時に、さりげなく背後に回って男の背中を確認するといい。頻繁に御代わりすべしです」とキャプテン・ミルクはブルーバードAYAに満面の笑顔を見せて言うと、早速、立ち上がって、セルフに行くと紙松茸(説明しよう。「紙松茸」とは松茸でできた使い捨てのコップなのだ。ジャパンゴールデンウィークの紙コップに限りなく似ているネーミングだけど気にする必要はなしだ。紙素材ではなくて松茸の方が何となく普及してきただけにすぎない。すでに無毒化、アレルギー無しの松茸の開発に成功しているため人体や宇宙人の体への影響は全く心配はいらない。松の木はジャパンゴールデンウィークから持ち運ばれて大宇宙に広まりマツタケ菌が満遍なく大地や山に注がれていき松茸が定着したのであった。その松茸の育ちぶりや勢いったら、あんたビックらこくぼとよ。紙松茸で味噌汁を飲み終えたら醤油を掛けて食べられるから環境にも優しいのだ。大宇宙では腐りすぎるほど松茸が溢れているのだ。道端に松茸、空き地に松茸、草むらに松茸、裏山に松茸、路傍に松茸、至るところに松茸ばかりあるのだ。腹減ったら道端に行って松茸を取って食べれば済むので空腹に困ることはない。宇宙人や異星人や怪獣たち皆は、常にポケットに調味料が入っているのだ。椎茸の代わりに松茸を使ったお味噌汁とかさ、松茸ライスとかさ、焼き松茸とかさ、ホカホカの松茸ステーキなどが軽く3時のおやつに出るほどポピュラーなんだい。繁栄を意味する松茸祭りとかが大宇宙の年始にあったりさ。大宇宙では松茸は腐りすぎるほどあるのだ。ジャパンゴールデンウィークだと30万円~80万円くらいする立派な松茸が大宇宙では1円くらいの価値しかないのだ。いや1円の価値もないかもしれない。それほどまでに、膨大に松茸が有り余っていて逆に大宇宙ではしんどいのだ)に味噌汁を入れて席に戻って来た。
「どうぞ」とキャプテン・ミルクは言って紙松茸をブルーバードAYAに渡した。
「どうもありがとうございます」とブルーバードAYAは言って紙松茸に入った熱々のお味噌汁を飲んでから紙松茸を食べた。
「あっ!」と突然ブルーバードAYAが言った。
「どうしましたか?」とキャプテン・ミルクは言って店の入り口を見た。二人組の不審な男が入店してきたと思ったのだ。
「新鮮な紙松茸だから美味しいです。お味噌汁、もう一杯頂きます」とブルーバードAYAは言って立ち上がった。
☆続いちゃう☆