安らぎ商店街
アーティスティックな迄に美しい夕焼け小焼けのピンク色の空は、赤ちゃんのプリっとしたまん丸頬っぺたみたいに美しくて綺麗だった。『この混浴温泉惑星の美しい夕焼け小焼けを守りゃにゃならん。守り通さにゃならんのだい!』とキャプテン・ミルクは思いながら道を歩いた。ブルーバードAYAは何も話さずに大衆食堂『りえこちゃん家のメシは美味いから来てみそ』まで先導して真っ直ぐに歩いた。
「キャプテン・ミルク、あの角を右折したら安らぎ商店街があります。安らぎ商店街を突き抜けると大人向けの御店が点在しています。飲み屋さん、古本屋、金属音&雄叫びセンター等々、中にはヘンテコりんな店もいくつかあります。古本屋の向かい側に『りえこちゃん家のメシは美味いから来てみそ』があります」とブルーバードAYAは足を止めてキャプテン・ミルクに説明した。
「了解、ありがとうございます。ブルーバードAYAさん、ささ、早く行きましょう。帰宅途中の空飛ぶ車や、空飛ぶじゅうたん、空飛ぶ椅子や、小型宇宙船が多くなってきたし、宇宙人や怪獣や異星人、買い物帰りの主婦たちが一挙に増えてきました」とキャプテン・ミルクは周りを警戒しながら言った。
「そうですね、分かりました。急ぎましょう」ブルーバードAYAは頷くと足早に歩き始めた。
安らぎ商店街にはあらゆるジャンルの宇宙人たちで賑わっていた。観光旅行で来た宇宙人がほとんどだろう。先にある土産物店で、おそらく、数学旅行(説明しよう。『数学旅行』とは九九を勉強するために合宿を兼ねての旅行する事なのだ。九九を知らずして生きる事は宇宙では絶対に不可能なのだ。数学旅行で本格的に九九を覚える宇宙人が多いのが現実なのだい)で来た若い4人の宇宙人たちがいて、店のご主人からしきりに木刀を薦められていた。
キャプテン・ミルクとブルーバードAYAは木刀という珍しい土産物を見て立ち止まった。
「スゴくこの木刀はお薦めだよ。皆はさ宮本蒸佐瀬って知ってるかい?」と前歯が抜けまくった店のご主人は愛想笑いを浮かべて、若い宇宙人たちに言った。
「知らないです」とリーダー格の若い宇宙人は首を振って言った。
「宮本蒸佐瀬はね、EARTHのジャパンゴールデンウィークにいた歴史上の人物なんだよ。剣の達人でね、三刀流って知ってる?」
「いや、し、知らないです」とリーダー格の若い宇宙人は恥ずかしそうに言った。
「三刀流は凄いんだから。宮本蒸佐瀬はね、右手に木刀を持って左手に木刀を持って口にくわえた割り箸を使って発声練習をしながらジャパンゴールデンウィーク中の強敵を探しに旅をしたんだよ」と歯抜けのご主人は木刀を素振りながら言った。結構、速い素振りぶりだ。汗を光らせて素振りってる。
「へぇ~」とリーダー格の若い宇宙人はかごに入っている木刀を手に取って言った。
「おじさんが持っている、この木刀はね、実際に宮本蒸佐瀬が使っていた木刀なんだ」と歯抜けのご主人は激しく突きをしながら言った。
「スゲー」とリーダー格の若い宇宙人は嬉しそうに言った。
「おじさん、証拠はあるんですか? 証拠を見せてくらさいよ。証拠を見せてくらされば本物だって認めます」とメガネを掛けた子分的な宇宙人が抗議するような強めの口調で言った。
「やめろや。せっかく、凄い話をしてくれたんだぞ。やめろやな」とリーダー格の若い宇宙人は子分をたしなめた。
「でもさ、でもさ、でもね、証拠を見せてくらさらないと」とメガネッ子の宇宙人は悔しそうに言った。
「わかった。おじさん、君たちだけに本邦初公開の証拠を特別に見せちゃうよ。ただし」
「ただし!?」
「4人とも木刀を買わないと見せられないよ」と歯抜けのご主人は激しく突きを繰り出しながら言った。
「買います」と4人とも財布から1500ヘンドリモンドリを取り出した。
「毎度あり~。よし、本邦初公開の証拠を特別に君たちだけに見せちゃう。ここにさぁ、手彫りで彫った名前があるでしょう? 何て書いてある?」と歯抜けのご主人は激しく突きを繰り出しながら言った。
「見えないよ。素振りや突きを止めてください」とリーダー格の若い宇宙人は抗議した。
「わかったよ。ほら、何て書いてある?」
「あーっ、宮本蒸佐瀬って彫ってありますぅ!」とリーダー格の若い宇宙人と3人の子分たちは叫んだ。
「だろう?」と歯抜けのご主人は嬉しそうに4人の若い宇宙人たちに木刀を見せびらかした。
「おじさん、ひょっとして、宮本蒸佐瀬と何か関わりがあるんですか?」とリーダー格の若い宇宙人はドキドキしながら言った。
「おいおいちょっと待ってくれよ~。どうしたのよ~? ええ? なんでなんで? 鋭いなぁ~。若いって凄く直感が働くんだなぁ~。参っちゃうなぁ、本当にもう。聞きたいかい?」と歯抜けのご主人は木刀をかごに仕舞ってから言った。
「聞きたいです」とすっかり宮本蒸佐瀬に夢中なリーダー格の若い宇宙人は嬉しそうに言った。
「ダメ。今日はダメ。明日ね、新しい木刀が入荷するんだわ。最新式の木刀なんだよ。1本2000ヘンドリモンドリなんだよ。あした、この最新式の木刀を買い求めるなら話しても良いよ」と歯抜けのご主人は深刻な顔つきで話した。
結局、若い4人の宇宙人たちは悩み抜いて、その場を立ち去っていった。
「良いなぁ木刀。俺も欲しいなぁ~」とキャプテン・ミルクは呟いて2、3歩、土産物店に歩み寄った。
「止めてくださいキャプテン・ミルク。行きますよ」とキャプテン・ミルクはブルーバードAYAに言われると服を引っ張られて歩かされた。
☆続いちゃう☆