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女将

 最上階の5階にある雪まみれ部屋は50人くらいが寝泊りできるほどの見事な大部屋だった。

 

 全体的にノスタルジックで落ち着いた質素な作りが心地よい。至るところに貼られている水着を着た美女が両手に持つ焼き魚をかっ食らう姿のレトロなポスターには価値がありそうだ。

 

 宴会用の歌部セット(説明しよう。歌部セットとは!? 21世紀にあったカラオケと似たり寄ったりのメカだ。かつては百点の審査機能があったり、歌う姿を録画できたりの機能や、歌を録音できたりもしたのだが、歌部セットにはない)があった。

 

 立派なステージや7色に輝くセロファンテープの照明やギラーリン(説明しよう。ギラーリンとは21世紀のカラオケにあったミラーボールの末裔(まつえい)だ。ギラギラと視野を遮る光加減に多くの批判が寄せられていて、近々、ギラーリンは完全撤去される見込みなんだそうです)がケバケバしく点滅していた。

 

 雪まみれ部屋の床はジャパンゴールデンウィークの伝統である畳になっていた。

 

 「それではごゆっくりとお過ごしください」と突風済慈朗は頭を下げると突風の如く走り去った。

 

 「皆の衆、3日間、自由にくつろいでくれよ。好き勝手にしていいという訳ではない。分別を(わきま)えた上でのエレガントな振る舞いが必要だ。人に対して宇宙人に対して常に謙虚であれ。礼儀を重んじろ」とキャプテン・ミルクはよく通る声で言った。

 

 「キャプテン・ミルク、質問でぇす」

 

 「なんだモモヒキ?」

 

 「門限は何時までですか?」とモモヒキ聡は左手で自分の脇の下を隠して右手を上げて言った。

 

 「シンデレラタイム。午前0時だ」とキャプテン・ミルクは右手でゼロを型作りして言った。

 

 「分かりました」とモモヒキ聡は言って右手を下ろした。

 

 「キャプテン・ミルク、質問です」胸山豆子はメガネを直しながら言った。

 

 「なんだ豆子?」

 

 「この雪まみれ部屋で男女一緒に寝泊りするんですか?」

 

 「そうだ」

 

 「じゃあ、夜に枕投げ大会をしても良いですか?」

 

 「いいよ」

 

 「わーい、キャプテン・ミルク、電気を付けての枕投げと、電気を消しての枕投げがありますが、電気を消しての枕投げ大会を推進しても良いですか?」

 

 「ダメだ。豆子、電気を消しての枕投げは危ない」

 

 「いや、楽しさ、ワクワク度数が高まる一方なんです。暗闇に忍び寄る背徳感が興奮の坩堝と化すでしょう」

 

 「怪我をしない範囲なら許可する」

 

 「わーい、ありがとうございます」と胸山豆子はメガネを外して天を仰いだ。

 

 「キャプテン・ミルク」と再びモモヒキ聡は脇の下を隠して右手を上げた。

 

 「モモヒキ、何だ?」

 

 「うんこしてきて良いですか?」とモモヒキ聡はうんこが漏れないように小刻みに体を揺らして言った。

 

 「行ってこい」

 

 「キャプテン・ミルク、トイレは何処ですか?」

 

 「知らん。突風済慈朗さんに聞いてこい」

 

 「1階まで移動は出来ないです。漏れちゃう」

 

 「そこにフロントに通じる室内通信機があるから自分で掛けて場所を聞け」とキャプテン・ミルクは言って通信機を指差した。

 

 「キャプテン・ミルク、代わりに掛けてくれませんかね?」

 

 「自分で掛けろや」

 

 「今、動くと出ちゃうんです」

 

 「出ても良いから自分で掛けろや」

 

 「たくさんのレディーがいる所でうんこなんか漏らしたくないんです」

 

 「自分でしなさい。甘えるな」

 

 「キャプテン・ミルク、お腹が痛いんです。うんこが漏れそう。これ以上うんこを漏らしたくない。うんこのない人生を送りたい」

 

 「ったく。少し待て」キャプテン・ミルクは室内通信機に歩み寄った。

 

 「ま、待てません。少しウンコが出ても良いですか?」

 

 ファンタジー・ドラゴン号の全乗組員たちは鼻を押さえて一斉に下がった。

 

 「出すな、待てよ!」

 

 「あっ、うんこが出そう。何日かぶりのうんこが出そう。あら!? あれれれれ!? 嘘みたいに腹痛が消えた! 今だ! 今のうちにトイレにいっトイレ。なんてね! キャプテン・ミルク、トイレに行きます」

 

 「よし行ってこい!」

 

 モモヒキ聡はダッシュして雪まみれ部屋から出ると「あーっ! トイレは目と鼻の先にありましたぁ! あはははは!」と叫んだ。

 

 キャプテン・ミルクは雪まみれ部屋の扉を開けて外の様子を見るとトイレの入り口が10メートル先にあった。

 

 モモヒキ聡は見つけたトイレに向かって手を振ると小走りした。

 

 

 

 

オープニングテーマソング

 

『最高にイカしたクールなハンサムマンのあんちくしょう☆キャプテン・ミルクの楽しい大冒険☆』

 

 作詞 蒼井真ノ介

 作曲 蒼井真ノ介

 編曲 蒼井真ノ介

 歌  えりかちゃん




宇宙に行こうよ 

宇宙の果てにはさ

光の壁があるって話よ

ツルッと光よりも輝く

あんちくしょうに夢中よ

あたい月よりアイツ好きさ 

あたい星よりアイツ好きさ

 

あたいナウい船長と

ナウい宇宙船の持ち主の

あんちくしょうがさ 

とぅきでぇ~す(好きで~す)

 

痒い背中に孫の手が欲しい

痛いお尻に座薬と塗り薬よ

朝から晩まで歌っている鳥

お願いシャラップだい!

 

好きなあいつに付きまとい

好きなあいつに睨まれて

好きなあいつにドキドキ

ラブレターをあげちゃった

偶然のフリして

無理矢理鉢合わせたのさ

 

恥ずかしいけどもさぁ

あたいのLIFEは色々と初体験の連続だい!

 

ファンタジードラゴン号『ワオッ』

ファンタジードラゴン号『ワオッ』

 

我らの我らの我らの我らの我らの我らの我らの我らのキャプテン・ミ・ル・ク~☆

 

 

 

 

 安らぎと癒しの雪あかり旅館の女将である、ピンク・雪あかり@温泉・夢子(ゆめこ)さんは8畳ほどもある巨大な空飛ぶ型のベッドに乗り、横たわって鼻歌を歌いながら畑に向かっていた。

 

 旅館から20分掛けて無事に畑に到着したピンク・雪あかり@温泉・夢子は、額の汗を木綿のハンカチで拭くと手袋をして有機野菜と無農薬野菜を取り出す作業を開始した。

 

 ピンク・雪あかり@温泉・夢子は腰を屈めて畑からパカタニ・チュリオカ・ペペピンポン(説明しよう。かつてEARTHから異世界に行けた秘密のルートが存在していた。たぶん今もあるかもしれないが。秘密のルートの行き先は巨大な魔法の国であった。その魔法の国で生まれた野菜がパカタニ・チュリオカ・ペペピンポンだという話だ。パカタニ・チュリオカ・ペペピンポンは強い野菜で宇宙でも広く普及できたとのこと)、有機野菜のラサムラ・ファルヘイスバン野菜、無農薬野菜のガルマタ・キュラチラチン野菜、有機野菜のゴルルラリン野菜、無農薬のイヤンソコダケハイヤン野菜、有機野菜のスゴクアアン野菜、無農薬野菜のニンジン、セロリ、キャベツ、トマト、きゅうりを大量に取り出すと空飛ぶ型のベッドの上に綺麗に並べて置いていった。

 

 「おい! そこの女!」

 

 突然、野太い脅し声が聞こえてきた。ピンク・雪あかり@温泉・夢子は顔を上げて声のした方向に目線をやった。

 

 「なによ?」ピンク・雪あかり@温泉・夢子は機嫌悪そうに返事した。

 

 「山岳地帯を越えた場所にこんなに良い畑があるとはな。隠し場所だな」と野太い脅し声の主は白い仮面で顔を隠し右手に鋭利なナイフを持っていた。

 

 「だから?」ピンク・雪あかり@温泉・夢子は機嫌悪そうに返した。

 

 「ベッドの上にある野菜を全て頂くぜ。悪く思うなよ。へへへっ」と白い仮面の男は言ってベッドに近寄った。

 

 「汚い手で野菜を触るんじゃない!」とピンク・雪あかり@温泉・夢子は怒鳴ると白い仮面の男に向けて右手を差し出した。

 

 何故だか不思議だが白い仮面の男の頭上から滝のような水が勢いよく流れてきた。

 

 「うわーっ」と白い仮面の男は叫ぶと水圧に押されて地面に倒れてしまった。

 

 ピンク・雪あかり@温泉・夢子は左手を下に向けると地面から水が吹き出た。

 

 「あららららーあ!」と白い仮面の男は叫ぶと地上から7メートルほど吹き出した水の上に浮かんだ。

 

 「おろしてぇ~、おろしてぇ~、こわいよ、こわいよ、おろしてぇ~。早くおろしてぇ~、おろしてぇ~」と白い仮面の男は泣きながら言って鋭利なナイフを地面に向けて投げ捨てた。

 

 「2度と人の野菜を盗まないと誓いますか?」とピンク・雪あかり@温泉・夢子は見上げながら言った。

 

 「誓うから、早くおろしてぇ~、おろしてぇ~、こわいよ、こわいよ、早くおろしてぇ~、おろしてぇ~。うわーん、こわいよ、こわいよ、早くおろしてぇ~、おろしてぇ~」と白い仮面の男は水の上でのたうち回りながら言った。

 

 「わかったよ」とピンク・雪あかり@温泉・夢子は言って左手をゆっくりと地面に向けていった。

 

 無事に地上に戻れた白い仮面の男は立ち上がると鋭利なナイフを拾いピンク・雪あかり@温泉・夢子に襲い掛かった。

 

 ピンク・雪あかり@温泉・夢子は直ぐに左手を地面に向けた。白い仮面の男の足元から勢いよく水が吹き出した。

 

 地上から7メートルほど浮かんだ白い仮面の男は水の上で再びのたうち回った。

 

 「おろしてぇ~、おろしてぇ~、こわいよ、こわいよ、早くおろしてぇ~、おろしてぇ~」と白い仮面の男は泣きながら哀願した。

 

 「人を襲い掛かったりしないと誓いますかね?」とピンク・雪あかり@温泉・夢子は面倒くさそうに言った。

 

 「誓う、誓う、誓う。おろしてぇ~、おろしてぇ~、おろしてぇ~、こわいよ、こわいよ、こわいよ、貴方の元に行って詫びますから、早くおろしてぇ~、おろしてぇ~、こわいよ、こわいよ、おろしてぇ~、おろしてぇ~、おろしてぇ~、ねぇ早くおろしてぇ~」と白い仮面の男は泣きながら言って右手に持っていた鋭利なナイフを遠くに投げ捨てた。

 

 「本当に襲い掛かったりしない?」

 

 「しないしない。早くおろしてぇ~、おろしてぇ~、おろしてぇ~。ぐすんぐすん。おろしてぇ~」

 

 「本当に本当に襲い掛かったりしない?」

 

 「しないから早くおろしてぇ~、おろしてぇ~、ねぇ、ねぇ、早くおろしてぇ~」

 

 「信じて良いの?」

 

 「信じて、信じて。早くおろしてぇ~、おろしてぇ~、おろしてぇ~」

 

 「本当に?」

 

 「テメェ、早くおろせよ!」と白い仮面の男は絶叫した。

 

 「ちょっとあんた、反省してないね。口の聞き方がなっていないな。親の教育が悪い。しばらく浮かんでいなさい」とピンク・雪あかり@温泉・夢子は言って野菜を取り出す作業に戻った。

 

 「謝る、謝る、謝る。ゴメン、ゴメン。おろしてぇ~、おろしてぇ~、こわいよ、こわいよ、おろしてぇ~」

 

 「本当に謝るかい?」

 

 「謝る謝る。おろしてぇ~、おろしてぇ~、おろしてぇ~、ねぇ早くおろしてぇ~、おろしてぇ~」

 

 「よし許す」とピンク・雪あかり@温泉・夢子は言って左手を地面に向けた。

 

 再び地上に帰還した白い仮面の男は深々と頭を下げて顔を上げると「この度はわたしくしの至らぬ行動により大変御迷惑をお掛けしました事を反省し深く御詫び申し上げます」と5分間ほど頭を下げると涙を拭いて泣きながら走り去っていった。

 

 ピンク・雪あかり@温泉・夢子は山岳地帯方面を見た。山岳地帯は盗賊や窃盗団が多い地域に該当するのだが、この秘境に近い畑にまで忍び寄っているとは知らなかった。

 

 ピンク・雪あかり@温泉・夢子は時計を見た。

 

 「いけない、早く安らぎと癒しの雪あかり旅館に戻らねば!」

 

 

 

 

 ☆続いちゃう

 

 

 

 

エンディングテーマソング

 

 

『恋したり愛したりキスしたりハートの赴くままに』

 

作詞 蒼井真ノ介

作曲 蒼井真ノ介

編曲 蒼井真ノ介

歌  えりかちゃん

 

 

気持ちを抑えて

貴方を見つめると

涙が溢れてたまらんわ

好きな気持ちを隠して

辛くてもう嫌になるわ

 

お月さん

お月さん

応答願います

お星さま

お星さま

寂しくて参っちゃってさ

ねぇねぇ

私の話を聞いてくれる?

お願いします 

 

やけ食いしたら負けよ

夜食を我慢して

ダイエットしようかな?

ダイエットしてさぁ

絶対に綺麗になるからね

綺麗になってウホホホホ

負けてたまるかやったるで

甘いお菓子なんかにさ

こっちからバイバイキーン本当にバイバイキーン

バイバイキーンのバイバイキーン 

 

好きな人を想いたいの

毎日抱きしめていたいの

貴方の笑顔を守りたいの

私は貴方が好きなのよ

ねぇ本気になってよ

こんにくしょう

私に振り向け振り向け

こんにくしょう

夜更かしばかりして

本当に困っちゃう~

 

恋したり愛したりキスしたりハートの赴くままに恋したり愛したりキスしたりハートの赴くままに

それがあたいよ

あたいの姿なのよ

好きでぇ~す

エヘヘヘヘ

好きでぇ~す

ウフフフフ

好きでぇ~す

"LOVe"

 

恋したり愛したりキスしたりハートの赴くままに

恋したり愛したりキスしたりハートの赴くままに~

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[良い点] ピンク・雪あかり@温泉・夢子の性格良いですね! [一言] お客様、うんちを部屋でもらされては困りますオロオロ(゜ロ゜;))((;゜ロ゜)オロオロ
[一言] ピンク・雪あかり@温泉・夢子…どこかで見覚えが…まあいいか!夢子さんカッコイイ!
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