複雑化した見事な攻防戦
『パイ子さん、独占インタビューをしている時の愛星・サマー・えりかちゃんはどんな様子だったのか詳しく教えて下さい』とキャプテン・ミルクは言って立ち上がり、そのままベッドに向かうと彩月の傍へ行き瞼を閉じてあげた。
あれほど頑なに拒むかのように強靭に見開いていた彩月の目は一瞬にして閉じた。愛星・サマー・えりかはその光景を驚きを持って見ていた。キャプテン・ミルクは力を入れずに手のひらを目に置いただけだったのだ。
キャプテン・ミルクは彩月の口もとにも手をかざした。苦しそうだった呼吸がスムーズになった。彩月の顔に安らぎが浮かんで見えた。彩月は可哀想に、まだ若いのに明らかに無呼吸症候群の軽度、いや中度の一歩手前の状態だった。逆流性食道炎も患っているようだった。
愛星・サマー・えりかはキャプテン・ミルクのさりげない行動力と優しさに戸惑っていたが、言葉にできない煌めきに似た不思議な感動に包まれていた。
『戦士さん、愛星・サマー・えりかさんは綺麗な衣装を着て独占インタビューに望んでくれましたよ。彼女の泣き腫らした目を見ていて「サンゴラレスでも掛ければ良いのに」と思いましたね。落ち込んでいて、始終うつ向いていましたよ』と滝パイ子は早口で捲し立てた。
『パイ子さん、ひょっとしたら、愛星・サマー・えりかちゃんは蒼いハートの形をしたイヤリングとブレスレットをしていませんでしたか? 最近、彼女のお気に入りのアクセサリーなんですよ』とキャプテン・ミルクは敢えてデタラメな情報を言った。
『してました、してました。新品みたいで大事そうに扱っていました』とパイ子は弾んだような声を出してキャプテン・ミルクの気持ちを持ち上げた。
『やはりね。誕生日に母親からプレゼントされた物だと言っていました』とキャプテン・ミルクはソファーに腰を下ろしながら言った。
『戦士さん、愛星・サマー・えりかさんの独占インタビューは録音されています。今晩の2回目の独占インタビューでも録音する許可を頂きました。撮影の許可もお願いしたいと思っています。私がまとめて「報道ニュース50世紀」で放送予定なんですが日時は未定です』
『パイ子さん、大丈夫でしたか?』
『何がですか?』
『いやいや大丈夫でしたか?』
『戦士さん、だから何がですか?』パイ子の声が微かに震えて不安げに聞こえた。
『アレですよ。アレ』とキャプテン・ミルクは含みを持たせた言い方をした。(説明しよう。キャプテン・ミルクよ、何故なんだい? 何故、大丈夫だとかアレだとか言っちゃってパイ子の動揺を誘っているんだい? キャプテン・ミルクの心が見えたなら、キャプテン・ミルクの考え方が分かったなら良いのになぁ。ねぇねぇ頼むから教えてよ、ねぇねぇ僕チンだけに教えてよ。いや最高に素晴らしい読者のためにもさ。この物語を読んでくれる読者は素晴らしい方たちばかりなんだぜ。1つ頼むよ。
キャプテン・ミルクよ、何故、彩月にあんな優しさを与えたんだい? あのままの方が凄く面白かったのにさ。でもよう、男も惚れる素晴らしい優しさで見事だったぜ、キャプテン・ミルクよ。さすが宇宙一の超ハンサム、超イケメン、超モテモテ男だよ。言っちゃなんだが、彩月の会話みたいな寝言には聞き応えがあったし教訓もあったよ。私の体を気遣う新婚当時の可愛い女房の言い方に実にソックリだったからね。あの当時の女房は可愛げがある言い方だったから私も堪らなく嬉しくて笑って答えていたものさ。今の女房は大仏ヘアーで大御所越えの貫禄が出ちゃってね、震えるほど怖くてそんな事は出来なくなったけどもね。昔の女房は可愛いかったんだぜ~。ピチピチしていたし、毎日、笑顔だったんだよ。えっ? 今かい? 今はね、う~ん、う~ん。どうだろうかな? う~ん。まあね、あのう、あっ、そうだそうだ! キャプテン・ミルクよ、彩月の寝言が懐かしくてさ、喧しい寝言のはずなのに、聞きたくないはずなのに聞きたくなっている私を許しておくれよ。もう1回寝言を聞かせてよ。聞かせて欲しいんだよ。白滝、食べ過ぎないでバランス良く食べるからさ、なっ、聞かせてよ。我が儘なお願いだけど許してな。キャプテン・ミルクよ)
オープニングテーマソング
『最高にイカしたクールなハンサムマンのあんちくしょう☆キャプテン・ミルクの楽しい大冒険☆』
作詞 蒼井真ノ介
作曲 蒼井真ノ介
編曲 蒼井真ノ介
歌 えりかちゃん
宇宙に行こうよ
宇宙の果てにはさ
光の壁があるって話よ
ツルッと光よりも輝く
あんちくしょうに夢中よ
あたい月よりアイツ好きさ
あたい星よりアイツ好きさ
あたいナウい船長と
ナウい宇宙船の持ち主の
あんちくしょうがさ
とぅきでぇ~す(好きで~す)
痒い背中に孫の手が欲しい
痛いお尻に座薬と塗り薬よ
朝から晩まで歌っている鳥
お願いシャラップだい!
好きなあいつに付きまとい
好きなあいつに睨まれて
好きなあいつにドキドキ
ラブレターをあげちゃった
偶然のフリして
無理矢理鉢合わせたのさ
恥ずかしいけどもさぁ
あたいのLIFEは色々と初体験の連続だい!
ファンタジードラゴン号『ワオッ』
ファンタジードラゴン号『ワオッ』
我らの我らの我らの我らの我らの我らの我らの我らのキャプテン・ミ・ル・ク~☆
『戦士さん、アレってなんでしょうか? 分からないです』
『アレですよ、アレ』
『アレ? はて、何だろうか……』滝パイ子キャスターは、しばらく無言で考えてみた。小刻みに指で机を叩く音が聞こえた。
滝パイ子は愛星・サマー・えりかについて詳しくはなかった。敢えて調べたくなかった。宇宙一のスーパー・トップ・アイドルであり、超美少女、超美人、美しいルックス、透明感溢れる魅力的な汚れなき天使である人気No.1の彼女に対して何故かライバル心を剥き出しにし、姑息なまでに嫉妬していたり、妙な対抗意識があったからだ。
至るところで彼女の笑顔が溢れているし、歌声が聞こえてくるし、テレビラリン・チュラララリンで彼女を見ない日はなかった。滝パイ子は常に殺伐とした気持ちで彼女を見ていて、切っ掛けさえあれば、愛星・サマー・えりかを奈落の底に突き落としてやりたい気持ちになっていたのだ。マウントを取って勝ちたい気持ちに支配されているのだった。
『戦士さん、何かヒントをくれませんかね?』
『ヒントなんかなくても分かるはずです』
『戦士さん、いやぁ、ちょっと分からないんですよね~』
『パイ子さんなら、絶対に分かるはずです。ほら、アレですよ、アレ』
『う~ん、私なら分かること、う~ん』
『そうです。分かることです』
『戦士さん、本当に私なら分かりますか?』
『もちろん、絶対に分かります。頑張って。アレですよ、アレ、ほら、アレですよ。滝パイ子さんは若手の期待のホープだから絶対に分かります』
『そんな滅相もない、誉めて頂いて。アレかぁ~、何だろうなぁ~、アレアレアレアレアレアレ。う~ん』
『じゃあパイ子さん、お疲れ様でした。そろそろ電話を切ります』
『ちょいちょい待って待って待って待って待って待って待って。戦士さん、待ってよ!』
『パイ子さん、何ですか?』
『戦士さん、降参です。アレって何ですか?』
『パイ子さん、アレってアレですよ。ではまたね』キャプテン・ミルクは電話を切ろうとした。
『ちょいちょい、待って待って。戦士さん、プライベートの電話番号を個人的に教えますから、アレについて改めて教えて頂けませんか?』慌てきった滝パイ子の声がしおらしかった。
『パイ子さん、良いんですか? プライベートの番号なんか教えちゃって。「視聴者ディスカッション機能」を使った単なる視聴者なんですよ?』
『構いません。ジャーナリストの精神が血が騒ぎまくるし働きまくって居ますからね』
『じゃあ教えて下さい』
『はい、私の番号はですね666-666-666-96414-184-184-184です』
『不吉で覚えやすい番号ですね』
『そうかしら? 気にしていなかったわ』
『パイ子さん、今、色々と罪悪感はないですか?』
『別にないですけども』
『パイ子さん、分かりました。もうね、アレを教えます。愛星・サマー・えりかちゃんは、かなり訛りの強い言葉を話す女の子なんです。訛りがアレの答えだったんです』
『ああ、そうだ! そうだそうだ! 訛ってた訛ってた。強い訛りで喋ってた』滝パイ子はキャプテン・ミルクの嘘の答えを知れて胸のつかえが取れた。(説明しよう。実際には愛星・サマー・えりかちゃんは訛っていない。ブルーベリー惑星出身でブルーベリー語が母国語なのだ。ブルーベリー語はEARTHのジャパンゴールデンウィークの標準語に極めて近いイントネーションなのである)
『パイ子さん、実は秘密だったのですが私の本性を話します。私は愛星・サマー・えりかちゃんの所属事務所に勤めているマネージャーなんです。名前は乳岡マンゴーです。先ほどはありがとうございました』(説明しよう。おいおいキャプテン・ミルクよ、一体、何を言い出すのだろうか? 更にカモフラージュするというのか?)
『えっ!? えっ!? なんで? い、い、い、いえいえ。先ほどの? えっ!? ちょっと待って待って。ちょっと待って。あっ、先ほどね、先ほどの独占インタビューに居た乳岡マンゴーさんって事なんですかね??? ち、ち、ちょっと分からない、というか私の頭が混乱しちゃって。乳岡マンゴーさん、やはり、匂っていましたよ。プンプンに匂っていました』と滝パイ子のイヤらしい声が聞こえてきた。皆さんは子供の頃を覚えていますか? 楽しかった時代の頃です。バッタを捕まえる瞬間、トンボを捕まえる瞬間を覚えていますか? 息を潜めて様子を見てから飛び掛かるあの瞬間を思わせる怪しい背徳や雰囲気たっぷりの瞬間をです。それを最悪な形に歪ませて肥大化させたようなタチの悪い女そのものの声だった。
『パイ子さん、今から、愛星・サマー・えりかちゃんに電話を代わります。午後からの独占インタビューはキャンセルさせて頂いて、今から電話による独占インタビューを許可致します。引き換えに、先ほどの緊急速報ニュースを撤回して、今すぐに誤報であったとテレビラリン・チュラララリンで流してくれますか?』
『今すぐにですか?』
『はい今すぐにです』
『わ、わ、分かりました。今すぐに流します。乳岡マンゴーさん、「報道ニュース50世紀」を見て確認してください』と滝パイ子は言った。
キャプテン・ミルクはテレビラリン・チュラララリンを食い入る様に見つめた。
♪チコチコチン♪
♪チコチコチン♪
テレビラリン・チュラララリンの画面の上に緊急速報ニュースを知らせる音とテロップが出た。
「◇緊急速報ニュース◇ 愛星・サマー・えりかさんは無事。現在、仕事休みだったために連絡が取れなかっただけという話でした。愛星・サマー・えりかさんは無事。先ほどの誤報を御詫び致します。大変失礼致しました」とテレビラリン・チュラララリンに流れた。
『乳岡マンゴーさん、これで宜しいでしょうか?』と滝パイ子は息を荒くして言った。
『滝パイ子さん、どうもありがとうございました。ではごきげんよう。バイバイキーン』とキャプテン・ミルクは言って電話を切ろうとした。
『乳岡、待てよ、テメェ、乳岡!! 独占インタビューはどーすんの!?』と滝パイ子の怒号が聞こえてきた。
『戦士です』
『もう何だっていいよ!! 乳岡マンゴー、お前、絶対に許さんぞ!』
『許さなくて結構、では切りますよ~』
『待て待て待て、この野郎!! 乳岡マンゴー待てよ!!』
『戦士です』
『テメェ~、黙れ!! うるさい!!』
キャプテン・ミルクは立ち上がってベッドの傍に行き彩月の口元に電話を寄せた。
『白滝食うな!! この野郎!!』実は彩月は目を閉じて深い呼吸をして爆睡をしていたが、相変わらず寝言だけはシビアな事を言い続けていたのだ。
『あんた、誰よ? 乳岡マンゴーは? 早く出せよ!』と滝パイ子キャスターはEARTHにあるジャパンゴールデンウィークのハイスクールにいたと言われているスケバン並みの荒すぎる口調で言った。
『白滝、白滝って!! この野郎!! 白滝を食うなって言ってんべ!!』彩月もエキサイトしていた。
『ちょっとあんた、意味わからん! 何を言ってんのよ! 乳岡マンゴーさんに代わって下さい!!』
『そんなに白滝を食べたいなら好きなだけ白滝を食べていいよ~っ、とでも私が言うとでも思ったのかい? 甘ったれるんじゃないよ!! 野菜を食べてからの話しなんだよ!! この野郎!! ぐぉぉぉーん、ぐぉぉぉーん』ヤバイ、また彩月のイビキが復活している。眉間に深いシワまで出てきた。
『あ、あ、あんた、誰よ? 全然会話にならないんだけど』と強気な滝パイ子が初めて動揺した声を出した。
『白滝、白滝って!! 私がこれだけ怒っても、何でさぁ、あんたはそんなに嬉しそうに笑って白滝を食えるのよ? 何だか胸がキュンとしちゃって私まで嬉しくなってくるじゃん。もぉう。でもね、それじゃあなたの為にならないから怒っているのよ』
『本当に意味が分からないし会話にならないから、乳岡マンゴーさんに代わってくれますか? お願いいたします』と滝パイ子は丁寧にお願いした。
『白滝、白滝って! もう本当にあんたは分からず屋のワイルド野郎で困ったちゃんだねぇ。1回、食のリズムを体で覚えてみ、持続できる様になるから。ご飯、野菜、魚、白滝、梅干し、豆腐、お味噌汁の順番でよう、綺麗な流れて食べてみてよ。あんたの場合はよう、ご飯、白滝、白滝、白滝、白滝、白滝、白滝、白滝、白滝ってイカれてるんだわ』
『ちょっと、あんたの話は全く意味が分からんのよ。なんなのよ! 乳岡出せよ! 乳岡をよ! 頼むから乳岡出してよ!』
『白滝に負けたくないのが私の本音よん。ねぇあんた、私と白滝、どっちが好きなのかを答えてくれたら考えても良いよ』と彩月は優しい声で寝言を言った。
ようやくキャプテン・ミルクは自分の耳に電話を持ってきた。
『パイ子さん、切ります』
『乳岡マンゴーよ、必ず復讐してやるからな! お前が誰だか突き止めてやる!』
『無理だと思うよ。じゃあね滝パイ子さん。もう2度と戦士では電話をしません』とキャプテン・ミルクは晴れ晴れとした声を出して電話を切った。
☆続いちゃう
エンディングテーマソング
『恋したり愛したりキスしたりハートの赴くままに』
作詞 蒼井真ノ介
作曲 蒼井真ノ介
編曲 蒼井真ノ介
歌 えりかちゃん
気持ちを抑えて
貴方を見つめると
涙が溢れてたまらんわ
好きな気持ちを隠して
辛くてもう嫌になるわ
お月さん
お月さん
応答願います
お星さま
お星さま
寂しくて参っちゃってさ
ねぇねぇ
私の話を聞いてくれる?
お願いします
やけ食いしたら負けよ
夜食を我慢して
ダイエットしようかな?
ダイエットしてさぁ
絶対に綺麗になるからね
綺麗になってウホホホホ
負けてたまるかやったるで
甘いお菓子なんかにさ
こっちからバイバイキーン
本当にバイバイキーン
バイバイキーンのバイバイキーン
好きな人を想いたいの
毎日抱きしめていたいの
貴方の笑顔を守りたいの
私は貴方が好きなのよ
ねぇ本気になってよ
こんにくしょう
私に振り向け振り向け
こんにくしょう
夜更かしばかりして
本当に困っちゃう~
恋したり愛したりキスしたりハートの赴くままに
恋したり愛したりキスしたりハートの赴くままに
それがあたいよ
あたいの姿なのよ
好きでぇ~す
エヘヘヘヘ
好きでぇ~す
ウフフフフ
好きでぇ~す
"LOVe"
恋したり愛したりキスしたりハートの赴くままに
恋したり愛したりキスしたりハートの赴くままに~
いつもありがとうございます!✨