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ブーム来たる!

「チンゲリラ哲也よ、ファントム幸子ちゃんとのテレパシーを無事に終えたぞ」とキャプテン・ミルクは言うと閉ざしていた目を開けて眩しそうにムササビ・ジュニア号の天井にあるハエと蛾が集っているピンク色の電灯を見上げた。キャプテン・ミルクは自身の幼い頃からの愛聴歌であるジャパン・ゴールデンウィークで作られた大、大、大名曲の童謡『むすんでひらいて』を歌い出した。しかも振り付けありでだった。


「で、ファントム幸子ちゃんは、なんて言ってた? それ、めちゃくちゃ良い歌だなぁ〜」とチンゲリラ哲也は言ってキャプテン・ミルクが歌う『むすんでひらいて』に合わせて手拍子をした。


「『私は土佐犬です。列記とした土佐犬です。私こそ土佐犬の中の土佐犬、選び抜かれた土佐犬中の土佐犬ですよ〜んだ。テヘッ。特にビタワンとお味噌汁が好きな土佐犬なのでした。ムヘヘヘッ。血統証付きの勲章付きの土佐犬なんだっすよ。荒れくれた青春時代にはスケバンで名を轟かせた実績を持つ土佐犬のファントム幸子なんでございまっす。ア・タ・シをナメたらいかんですたい。結局、血を見ることになるからね』と言っていたよ」とキャプテン・ミルクは話し終えると『むすんでひらいて』を軽く口笛で吹いたのだ。


「なっ、土佐犬だろ?」チンゲリラ哲也は嬉しそうに言った。


「ああ……」とキャプテン・ミルクは言って、チンゲリラ哲也から目をそらした。キャプテン・ミルクの耳にファントム幸子ちゃんの悲痛な声と泣き声が残っていたのでありました。


「だが、あんた、まだ何か言いたそうだな」


「そして、チンゲリラ哲也よ、そして、ファントム幸子を幸せにできるのかい?」


「で、で、できるさ」


「そして、これからもファントム幸子ちゃんを飼い続けると誓い、そして、仲良く、そして、健気に、そして、日々を楽しく過ごしつつ、そして、ゆくゆくは犬かきが出来るようになりますようにと、そして、泳ぎ習わせることを誓うかい?」


「誓うね。絶対に誓うね」


「そして、明日から、ちゃんとファントム幸子ちゃんを散歩させなさいよ。そして、思い出を作ってほしいと切に願う。そして絆を深めて欲しいと、そして更に願う」とキャプテン・ミルクはファントム幸子ちゃんを思いやって言った。


「ああ、わかったよ」


「そして皆にも改めてファントム幸子ちゃんは立派な土佐犬だと話してあげたまえよ。そして、皆から理解をされて、そして、心から可愛がりなさい。そしてビタワンだぞ。そして、ビタワンをお薦めする」


「おい、あんたよ、そしてが多すぎてさ、そしてがありすぎてさ、何だが説明が不可解だよ」


「そしてが、なんだってよ!? そしてに文句あんのかよ? そして、そしてと言ってるからって、そしてを馬鹿にすんのかよ? そしてという言葉を、そっとしといてくれや。言葉がリズムの変革期に入ったんだ。俺の中でそしてという言葉が今にして大ブームなんだい!! そして大ブームが到来なんだい!!」とキャプテン・ミルクは言ってチンゲリラ・哲也の顔をビンタした。


「痛い!! なんで急に殴るんだよ!!」


「そして、何だかムカついたからビンタしたんだい!! そして、お前はファントム幸子ちゃんの本音に気づかないお馬鹿野郎だしさ!!」とキャプテン・ミルクは言った。キャプテン・ミルクの脳裏にファントム幸子ちゃんの悲痛な叫びと涙が浮かんでいた。


キャプテン・ミルクは、そしてという言葉に夢中なあまり只今そしてちゅうでありまっす。


「頼むから、そしてを省いて話してくれよ」とチンゲリラ哲也は言った。


「そして、生意気だな!! そしてビンタした!!」とキャプテン・ミルクは叫ぶとチンゲリラ哲也をビンタした。


「やめて、よして。痛いっ」とチンゲリラ哲也は言うと泣き出した。


「そして、泣きたいのはファントム幸子ちゃんだい! そして、ファントム幸子ちゃんを、最後まで、ちゃんと飼えよ! そしてファントム幸子ちゃんの気持ちに寄り添えよ。必要以上に頑張っている状況にいるんだから。チンゲリラ哲也よ、わかったか?」とキャプテン・ミルクは言ったが両手で耳を押さえた。ファントム幸子ちゃんの『土佐犬、土佐犬、私は生まれながらの土佐犬だ。グヘヘヘへ。土佐犬の私を許してね』とパニック発作に襲われたような叫び声をあげた気がしたからだった。実際には聞こえてはこないが、キャプテン・ミルクの中で聞こえた気がしたのだった。


「何か言いたいならハッキリしろや! とりあえず、わかってるって。飼うって」とチンゲリラ哲也はふてくされて言った。


「そして話は変わって。ジャム将軍に会わせろ」とキャプテン・ミルクは大胆に言ったのだ。


「いいぜ。ファントム幸子ちゃんが土佐犬だと認められた記念日として、案内してやるよ」とチンゲリラ哲也は思ってもいなかった言葉を言った。 


キャプテン・ミルクの顔が一気にカッコよく凛々しくなっていった。『嫁に来ないか』を歌った新沼謙治よりも、めちゃくちゃカッコよくてハンサムだった。



  


  ◇続いてしまう!?◇


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