休みたい
https://31064.mitemin.net/i781956/(作画 茂木多弥様)
(作画 ひだまりのねこ様)
(作画 茂木多弥様)
月山コリーは呆然と自分の手元を見ていた。子供の歌声も風の囁きも聞こえてはこなかった。しばらく様子を見て、あの物悲しい子守唄が聞こえてくるのを待ってみた。が、どこからも子守唄は聞こえてこなかった。あの綺麗な小さな鞠の感触だけが手に残っていた。
月山コリーは、毎日色々・スゴクシゴク・夢みがつと就寝前・スゴクシゴク・夢みがつの亡骸を見た。体に傷跡はなく、光を失った開いた目、小さく開いた唇が死を物語っていた。
月山コリーは一旦ファンタジー・ドラゴン号に戻ろうとしたが、微かに嫌な気配を感じた。
月山コリーは踏み出そうとした。
突然、辺りが光り輝くと激しい明滅を繰り返し激しい風が吹いてきた。青白い光の玉が現れた。月山コリーはあまりの眩しさに両手で顔を覆った。
生意気にも偉そうにして青白い光の玉が現れたのだ。
月山コリーは目を細めて青白い玉を見ていた。もの凄い明るさだった。
しばらくして辺りに静けさが戻ってきた。風が止み、光が小さくなっていき、砂ぼこりが消えていく。
ようやく視力が安定した月山コリーは青白い光の玉の側に行き青白い光の玉に手を置いてみた。
一気に青白い玉がひび割れてきた。
月山コリーは後ろに下がった。
なんと! またしても、中から正座をしている大和愛人が現れたのだ。
「あ、あ、あんた! 良かった良かった! 無事だったのかい!?」と月山コリーは言った。
「無事も何もさ。なんでなのかわからないよ。今度は鞠に吸い込まれて再び50世紀に到着してさ」と大和愛人警部は照れくさそうに言って立ち上がった。大和愛人はお腹を擦って体調を測った。
すると、
「父の子、母の子、健気な子、一刻だって待てないの 父の子、母の子、養女の子、一刻だって待てな〜いの」と、またしても、あの物悲しい子守唄が聞こえてきた。
洞窟にあるムササビ・ジュニア号の横に小さな窪みがある。その窪みから物悲しい子守唄が聞こえてきた。
「出てきなさ〜い! 座敷童子でしょう? 座敷童子が歌っているんでしょう?」と大和愛人警部は言って窪みに向って歩き出した。
「裸のおじさん。ごめんなさい」と赤い着物を着た前髪パッツンの美少女がバツが悪そうな顔をして窪みから出てきた。間違いなく座敷童子だ。
「座敷童子、なんでさ、俺にさ、あんな物騒な光の玉をくれたり、鞠をくれたりしたのよ? 50世紀まで飛ばされてビビったよ」と大和愛人警部は地面にしゃがむと女座りをした。座敷童子も女座りをした。
「まさかタイムマシンだとは思わなくて。単なる光の玉と鞠だと思って」と座敷童子は下を向いたまま話した。
「あの光の玉と鞠は何処で手に入れたのよ?」と大和愛人警部は穏やかに言った。
「夜中に神社で遊んでいたら見知らぬ老人にもらったの」
「なに!? 見知らぬ老人?」
「うん」
「それで?」
「見知らぬ老人がね、『ワシの家に泊まりに来なさい。夜中に子供が独りでいたら危ないよ』って言ってね、断ったら『じゃあ、御守として光の玉と鞠をあげるから持っていなさい。大事にするんだよ』と言ってくれたの」座敷童子は一生懸命に事情を話した。
「その老人の人相は覚えているかい?」と大和愛人警部は職業病が出てしまい厳しい顔付きになって言った。
「ヤンバルクイナみたいなスケベな顔をしていたよ。でもね、私に、いかがわし事も変な事もしないで光の玉と鞠をくれたら闇に紛れて消えてしまったよ」座敷童子は誠意を込めて言った。
「ふーむ」と大和愛人警部は納得いかないように言った。
「裸のおじさん。実はね、また神社で遊んでいたらね、あの見知らぬ老人が来てね、今度は光の玉が770個、鞠が845個も入った段ボール箱をくれたんだよ」
「ウッソー!?」
「本当だよ」
「タイムトラベルがいっぱいできるじゃんかよ」
「うん」
「とりあえず、21世紀に戻ろうよ」
「……」
「座敷童子、どうした?」
「裸のおじさん。ごめん」
「えっ!?」
「ウフフフフ。ごめんね」
「座敷童子よ、じゃあ、どうやって21世紀に戻るの?」
「ウフフフフ」
「ウフフフフじゃあないよ! ナメてんのか?」
「ごめんね」
「ごめんで済むなら嵐が丘警察署はいらないのである!」
「ウフフフフ」
「なんで俺に、あんな変な玉と鞠を俺にくれたのよ?」
「だって遊んでくれたから。それに……、悔しかったから」
「悔しかった?」
「うん。悔しかったから。裸のおじさんと、毎回、夜中の2時に隠れんぼをするけども全然見つけられないから」
「あはははは。凄いだろう? 俺は隠れんぼの天才だからね」
「裸のおじさん、いつも何処に隠れているの?」
「秘密だよ。そんな事よりね、座敷童子よ、知らない人から物をもらったり、話したりしてはいけません」
「別にいいじゃん」
「ダメです! 今後二度としないようにするんだよ!」
「でも、あの知らない老人、良い物くれたし」
「良い物だと? どこがだよ! だまらっしゃい! 人を50世紀に飛ばす物が良い物だと? 座敷童子、テメェ、なめとんのか? 人の人生を何だと思ってんだよ? なめとんのか、座敷童子よ。甘やかされて育ったんじゃないのか?」
「でも」
「だまらっしゃい! 座敷童子だからといって、何をしても許されると思ったら大間違いです!」
「でも」
「深夜に遊びに来るのも凄く迷惑です。今後二度と止めていただきたい。遊びに来るなら明るい時間帯にして欲しい」
「でも」
「知らない人には近付かない! 深夜にフラフラ出歩かない! 神社に行くのも止めなさい! 神社に行くなら昼にしなさい!」
「……」
「わかったか?」
「う、うん」
「わかればよろしい。で、どうやって21世紀に戻るの?」
「裸のおじさん。実は本当はね、何処かで光の玉と鞠を落としてしまって」
「いくつ持ってきたの?」
「光の玉が5つ、鞠も5つです」
「落とした場所は覚えていないの?」
「たぶん、空き地だと思う」
「じゃあ今から空き地に探しに行こうよ」
「うん」
「という事で月山コリーさん。今から口笛吹いて空き地に行きますね」大和愛人警部は愛想良く月山コリーに言うと握手を求めた。
「いってらっしゃい。また何処かで会えたら面白いよね」と月山コリーは言った。月山コリーは人嫌いだが大和愛人警部のエネルギッシュな性格に惹かれて心を開いていた。
「そうですね」
「裸のおじさん」
「なんだい? 座敷童子?」
「今日は疲れたから何処かで休みたいです」と座敷童子は言った。座敷童子の目は疲労のために充血していた。座敷童子が付けているカラーコンタクトレンズのせいもあるかもしれない。座敷童子は大胆な行動は深夜、ナチュラルな行動は日中にしかできないために、なるべく視野が明るくなるカラコンを使用しているのだった。
「それならばファンタジー・ドラゴン号に泊まっていってくださいよ」と月山コリーはナイスアイデアを伝えた。
「ファンタジー・ドラゴン号?」大和愛人警部は首を傾げた。
◇続いちゃう◇




