JAZZ
https://31064.mitemin.net/i781956/(作画 茂木多弥様)
(作画 七海 糸様)
『たーけやー、さお〜たけ。さーおたけー、布団ざおっ。物干し竿の大安売り。2本で千円。2本で千円だよ』と歌いながら軽トラックの運転席に座った黄色のフルフェイスヘルメットの男は上機嫌で1万円札紙幣の新沼謙治を見ていた。
キャプテン・ミルクは好奇心が抑えられず、とりあえず、無名を保つ為に魔法の『ドラマチック・フェイス』(やあやあ。皆様、久しぶりに説明しちゃうんだけどもね、『ドラマチック・フェイス』は顔を変える変装用の魔法のことなんだよ。ただし、注意点が1つある。この魔法をかけると童顔になりやすいのだよ。大人っぽく見られたい乙女には、お薦めはできないけどもさ、使用感は最高な魔法なので、気持ちが変われば、是非、お試しあれ!)を唱えた。
キャプテン・ミルクは顔をあどけない美少年風に変えると用務員室から出ていき、札束を数えている黄色のフルフェイスヘルメットの男に近寄って軽く話し掛けてみた。
「こんにちは〜」とキャプテン・ミルクは愛想よく言った。
「はい、いらっしゃい、物干し竿の大安売り。二本で千円、二本で千円」と黄色のフルフェイスヘルメットの男はヘルメットの中で満面の笑みを浮かべて気持ちよく言った。
「ちょいと聞くけどさ、今の夫婦は何処の惑星の方なんですか?」とキャプテン・ミルクは言った。
「何で知りたいの?」と黄色のフルフェイスヘルメットの男の声音が警戒したように冷たく聞こえた。
「いやぁ〜、ひょっとしたら、あの夫婦、旦那の方が俺の知り合いかもと思ってね」
「これ見てわからない?」と黄色のフルフェイスヘルメットの男は言って1万円札を抜き取るとキャプテン・ミルクに向けてヒラヒラと振った。
「新沼謙治でしょ?」とキャプテン・ミルクはさっき盗み見と盗み聞きをして覚えた新沼謙治をそのまま言った。
「正解」と黄色のフルフェイスヘルメットの男は言って1万円札を札束に戻した。
「お兄さん、新沼謙治が分かれば惑星が分かるじゃん」
「ひょっとして、EARTHのジャパンゴールデンウィークなのかな?」と何となくの勘でキャプテン・ミルクは答えた。
「お兄さん、正解」
「ジャパンゴールデンウィークの紙幣について聞きたい」とキャプテン・ミルクは言った。
「いいよ、なんだ?」
「1万円札の新沼謙治の他にある紙幣は誰が肖像画なのかな?」
「千円札が紫式部、二千円札が卑弥呼、三千円札が高橋名人、四千円札がすぎやまこういち、五千円札が南沙織、一万円札が新沼謙治、三万円札が村上春樹、五万円札が尾崎豊、十万円札が高倉健、十五万円札が松田優作、二十万円札が向田邦子だよ。この肖像画は100年間も変わっていないよ」と黄色のフルフェイスヘルメットの男はスラスラと見事なまでに言った。
「そんなに紙幣があるとは知らなかったなぁ」とキャプテン・ミルクは驚きを持って言った。
「結構、多いよね」
「さっきから気になっていたんだけどさ『『たーけやー、さお〜たけ。さーおたけー、布団ざおっ。物干し竿の大安売り。2本で千円。2本で千円』の作曲者って誰なの?」とキャプテン・ミルクは気になる事を聞いてみた。
「確かね、佐々木ササニシキ・ダ・シルぶぁ、という人」と黄色のフルフェイスヘルメットの男は自信を持って答えた。
「やけに詳しいんだね」とキャプテン・ミルクは何となく嗅ぎ取って言った。
「そうでもないさ」黄色のフルフェイスヘルメットの男は素っ気なくいうと軽トラックのカギを回してエンジンを掛けた。
キャプテン・ミルクは黄色のフルフェイスヘルメットの男がハンドルを握った瞬間、右手の小指にはめている指輪に気付いた。
『NEWオパイ−002143』と小さく掘られていた。
「何年間なの?」とキャプテン・ミルクは無表情に言った。
「えっ? なんのことだ?」と黄色のフルフェイスヘルメットの男は言った。
「君は仕事でなんだろう?」とキャプテン・ミルクは言って後ろを振り向いた。
「さっきから何のことだよ?」と意味を解りかねている黄色のフルフェイスヘルメットの男は言って動揺した。
「少しだけ、あそこにある用務員室で二人だけで話せないかな?」とキャプテン・ミルクは言って歩き出した。
「物干し竿を売らないと」と黄色のフルフェイスヘルメットの男は言って軽トラックを出そうとした。
「心配するなって、『JAZZ』」とキャプテン・ミルクが言うと黄色のフルフェイスヘルメットの男は慌てて軽トラックのエンジンを切った。
☆続いちゃう☆
(作画 七海 糸様)




