キャプテン・ミルクは様子を見続ける
https://31064.mitemin.net/i781956/(作画 茂木多弥様)
「あんた!! そんな馬鹿なカッコしてなにやってるのよ!!」先ほど二本で千円の物干し竿を買ったおばさんが戻ってきた。
「お前の不倫相手を投げ飛ばそうとしていたところだよ!!」海パン一丁のオッサンは黄色のフルフェイスヘルメットの男のマスクに手を掛けたまま言った。
「不倫なんてするかよ!! ナメんな!!」とおばさんは言って物干し竿を床に置いてから海パン一丁の男に掴みかかった。
「離せよ! 不倫ブス!」
「今、不倫なんてしてないってば! あんたこそ不倫してるの、私分かってんだよ!!」
「俺は不倫してるよ! 不倫してるけども、俺は清らかな不倫だから良いけどお前はダメだ!」
「なんのこっちゃい!! 何で私は不倫したらダメなのさ?!」
「お前は今まで不倫した相手の子供ばかりをポンポン生むからだよ! 俺の子供を生まないくせによ! 何で俺がお前の不倫相手の子供10人を自分の子として育てにゃならんのよ?」
「違うわ!10人じゃないわよ。お腹にいる双子を含めて12人よ!!」
「お、お、お、お、お前よう、今よう、腹の中に双子がいるのかい? また不倫しやがってよう。何でポンポンポンポンと生むのよ?」
「アンタがジーコとプラティニとバッジョが好きだって、サッカーが大好きだって言ってから。補欠を含めた12人もいればさ、サッカーの1チームが作れるじゃない?」
「お、お前」
「だから頑張って不倫して全く血の繋がらない子供を生んで我らのサッカーチームを構築したかったの」
「お、お前」
「アンタがさ、我らのチームのオーナー兼、チームの監督になってさ、エンジョイしてほしくってさ」
「お前」
「だからね、ポンポンポンポンと他人の子供を生んだのよ。ポンポンポンポン生んで、ポンポンポンポンと生みきったの」
「お前、何で俺の子供は生まないんだよ?」
「アンタ、考えたことある? もし自分の子供がチームの一員になったら、情があるから厳しくできないだろうし親の七光りでレギュラーに定着するだろうしでさ、レギュラーに定着した場合、他の選手の嫉妬や妬みの犠牲になるでしょう?」
「ま、まあ、そうだな」
「その辺を考えたのよね〜」
「なるほど。つまりチームに支障が出ると?」
「アンタ、正解。そうなのよ。チームに支障が出るとサッカーどころではなくなるでしょう?」
「うん、確かにな」
「だからさ。だからアンタの子供を生まなかったのよ」
「なるほどな」
「アンタ、アンタのサッカー・チームにどんな風にしたい?」
「ポジショニングを活かしたサッカー・チームにしたい」
「やはりそうなるよね」
「ポジショニングが機能しないで自滅するチームが多すぎるからな」
「さすが、アンタだね」
と海パン一丁のオッサンと物干し竿を買って肩に担いだおばさんは話しながら、その場を立ち去ろうとした。
「あっ、お兄さん、ゴメンね。これお詫び」と海パン一丁のオッサンは海パンの中から札束を取り出して半分を手に取ると黄色のフルフェイスヘルメットの男に手渡した。
「こんなに1万円の新沼謙治が。新沼謙治が多すぎます!」と黄色のフルフェイスヘルメットの男が言って慌てた。
「良いから良いから。ほら、新沼謙治を受け取れよ」
「新沼謙治が80枚もですか? ありがとうございます。100年間ものあいだ、ずっと1万円札は新沼謙治の紙幣。本当にありがたく受け取ります」と黄色のフルフェイスヘルメットの男は言って頭を下げた。
『どうやら、あの紙幣が最高金額の1万円とやらで、肖像画が新沼謙治という人物なんだな』とキャプテン・ミルクは思った。
☆続いちゃう☆
(作画 七海 糸様)
50世紀の1万円札の肖像画は新沼謙治さんか田村正和さんか松田優作さんかで本当に悩みました。たぶん、後で尾崎豊さんに替えます。




