キャプテン・ミルクは聞き惚れていた
https://31064.mitemin.net/i781956/(作画 茂木多弥様)
(作画 七海 糸様)
キャプテン・ミルクは、一旦、鼻くそをホジるのを止めると、けっきょく南極、冷蔵庫からバッテラを取り出してポケットに入れた。まだ勤務時間は残り3時間もある。キャプテン・ミルクはムササビ・ジュニア号を探索することにした。つまり、スパイするのだ。スパイの失敗は許されない。キャプテン・ミルクは気を引き締めた瞬間に右のオッパイが痛んだが『痛みは生きているからこそ起きるんだ。そんな命と右のオッパイに乾杯さ』と心の中で囁いた。
只今パイパイ連呼中である。スパイ、失敗、オッパイ、乾杯ときたら次はアップルパイだと思う。アップルパイを手作りで売ってるお店が何処かにあるはずなのだ。ずっとキャプテン・ミルクは手作りのアップルパイのお店を探していた。だが見当たらない。宇宙は広いのに見当たらない。キャプテン・ミルクはアップルパイを愛していた。愛していたのにアップルパイを食べて食中毒になりかけた過去があった。それでも、それでもね、キャプテン・ミルクはアップルパイを嫌いにならなかったし憎まなかった。何故ならアップルパイを愛しているからだった。
キャプテン・ミルクは忍び足で用務員室の扉まで行くと静かに開けて顔だけを出した。
静寂。
すると突然、左の方角から、かすれたような声が聞こえてきた。
『たーけやー、さお〜たけ。さーおたけー、布団ざおっ。物干し竿の大安売り。2本で千円。2本で千円の大安売り』
キャプテン・ミルクはゆっくりと走る白い軽トラックを見つめた。
白い軽トラックを運転している男の顔は遠目で分からなかったが気怠そうな感じで運転しているようだった。
『たーけやー、さお〜たけ。さーおたけー、布団ざおっ。物干し竿の大安売り。2本で千円。2本で千円の大安売り』
キャプテン・ミルクは意味不明な言葉に戸惑っていた。
『たけや? さおたけ? 物干し竿? 2本で千円? 一体なんのこっちゃ? 円は、確か、通貨的な、なんたらかんたらだったような気が……』とキャプテン・ミルクは思っていた。
『全く意味がわからん。今は50世紀だが、これは何なんだ?! たけやとは一体何なのであろうか?』とキャプテン・ミルクは思った。
『たーけやー、さお〜たけ。さーおたけー、布団ざおっ。物干し竿の大安売り。2本で千円。2本で千円の大安売り。
たーけやー、さお〜たけ。さーおたけー、布団ざおっ。物干し竿の大安売り。2本で千円。2本で千円の大安売り。
たーけやー、さお〜たけ。さーおたけー、布団ざおっ。物干し竿の大安売り。2本で千円。2本で千円の大安売り』
キャプテン・ミルクは繰り返される宣伝に戸惑っていた。
『もっと言葉の続きが聞きたい。本気で売りたいなら、もっと他に言葉を言わないとさ。何らかの商品なら、もっともっとアピールしないとさ』とキャプテン・ミルクは思っていた。
『たーけやー、さお〜たけ。さーおたけー、布団ざおっ。物干し竿の大安売り。2本で千円。2本で千円の大安売り』
キャプテン・ミルクは近付いてくる軽トラックの運転手の顔を見ようとしたが運転手は黄色いフルフェイスのヘルメットを被っていた。
『たーけやー、さお〜たけ。さーおたけー、布団ざおっ。物干し竿の大安売り。2本で千円。2本で千円の大安売り』
『なんとなくだ、この宣伝文句はだな、受験勉強をしていた頃の日曜日の昼下がりに、開け放たれた窓からスピーカーに乗って聞こえてくる声のような気がする。喧しくても、思わずこちらも『たーけやー、さお〜たけ。さーおたけー、布団ざおっ。物干し竿の大安売り。2本で千円。2本で千円の大安売り』と口ずさむ自分がいたような、青春時代の1ページのような。回想という名の懐かしき思いというのかな。そんな自分がいたような気がしてくる』とキャプテン・ミルクは思いながら耳を澄ました。
『たーけやー、さお〜たけ。さーおたけー、布団ざおっ。物干し竿の大安売り。2本で千円。2本で千円の大安売り』
☆続いちゃう☆
(作画 七海 糸様)




