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キャプテン・ミルクの汗疹

 挿絵(By みてみん)

https://31064.mitemin.net/i781956/(作画 茂木多弥様)


 挿絵(By みてみん)(作画 ひだまりのねこ様)


 挿絵(By みてみん)

 (作画 七海 糸様)挿絵(By みてみん)(作画 茂木多弥様)





「じゃあな、僕は5階にある保健室の床掃除をしてくるよ」とタクラUMA蝶は言うと舟木一夫の『高校3年生』を歌いながら用務員室の入り口に向かった。


「すいません。この宇宙船って何回建てなんですか?」とキャプテン・ミルクは、それとなく探った。


「12階建てだよ。地下も3階あるよ」


「わかりました」


タクラUMA蝶は用務員室から出ていった。


キャプテン・ミルクは残り23枚の皿を洗うことに集中しようと考えた。単純な魔法を使えば一気に皿は洗えるのだ。今は派手な動きをしたり魔法によるバイブレーションでムササビ・ジュニア号にいる敵たちに熱量や波動を知られるのは非常に危険だ。キャプテン・ミルクはヘルニア卓也になりきって様子を見る選択をすることにした。


キャプテン・ミルクは壊れにくいレディオを聞き流しながら皿を洗う。


コンコンコン


用務員室の扉をノックする音が聞こえてきた。


「はい」とキャプテン・ミルクは言うと布巾で手を拭いてから扉に向かって歩いた。


「すみません、こちらは用務員室で間違いないですか?」と扉の向こう側から声がした。


「はい」とキャプテン・ミルクは言いながら扉を開けると若い女が立っていた。


「どちら様ですか?」とキャプテン・ミルクは言った。


「遅れてすみません。私、ヘルニア卓也です」


キャプテン・ミルクは珍しく焦りまくった。焦りまくって、焦りまくったんです。焦ることが、あまりないタイプの男が凄い勢いで焦りまくったんです。まさか本物のヘルニア卓也、本人が現れてしまうとは予想外だった。焦りは焦りを生む。焦って汗かいて冷や汗かいて焦ってしまうのだ。焦りは禁物なのである。何事も焦って行動してはいけないのに、キャプテン・ミルクは焦っていった。背中にいくつかの汗疹もあったし、これ以上、背中に汗をかきたくないとも思っていましたし、焦って過ちを増やしたくないと考えていた。焦ることでパニック障害を発症させてもいけないというくらいに焦ってもいたのだ。焦るな、焦るな、キャプテン・ミルクよ。焦ることで自分を見失ってはいけないぜ。


「失礼しました。名前からして男性かと思っていました」とキャプテン・ミルクは自ら気持ちをカバーするように言った。


「ヘルニア卓也は女です。すみません、男みたいな名前で。こちらに、お電話でアルバイトの話をお尋ねした時、私、風邪を引いていまして。声がガラガラで男みたいなボイスになっていました」


「あっ、そうだったんですか。わかりました」


「フクラハギさとしさんですよね?」


「はい」とキャプテン・ミルクは動じずに二人目に成りすました。キャプテン・ミルクは、他人に成りすまして我が物顔で銀行口座から莫大な大金を盗み、その大金をギャンブルにつぎ込む変質者、犯罪者みたいな心境になりそうでならなかった。正義のための変装だから、ならないのだ。それがキャプテン・ミルクの信念なのである。キャプテン・ミルクは牛乳が好きだ。色々と牛乳が悪く言われている話もあるが、キャプテン・ミルクは毎日牛乳を飲んでいるのだ。『他人が偉そうにあーだこーだと危険を煽る偽善者ほどウンコなものはない。自分の意志で、考えで、好きか嫌いか、やるか、やらないのかを全て決めろ! 決断しろ! 判断しろ! 自分自身で決めるんだ!!』というのがキャプテン・ミルクのポリシーなのだ。だからこそ、牛乳が好きなキャプテン・ミルクを宜しくお願い致します! キャプテン・ミルクは牛乳がちゅきです!! 牛乳が大ちゅきです!! 牛乳がちゅきでちゅきで大ちゅきです!!


「フクラハギさとしさん、この度は面接を受ける事が出来てありがとうございます」


「どうぞ、そこの、ちゃぶ台に座ってください」とキャプテン・ミルクは言ってヘルニア卓也を用務員室に招き入れた。


本物のヘルニア卓也はあぐらをかいてちゃぶ台の前に座った。


「ヘルニア卓也さん、では面接を始めます」キャプテン・ミルクは冷静さを取り戻していた。


「はい、宜しくお願い致します」と本物のヘルニア卓也は緊張して顔が赤くなっていた。


「好きな映画はなんですか?」


「断然『キャリー』ですね」


「ほほう。どんな所が好きなんですか?」


「キャリーがブチ切れるところですね。散々、理不尽な扱いを受けてきた女の怒りと情念が爆発するシーンは見どころ満載です」


「他に好きな映画はありますか?」


「『ロッキー4』です。アポロが、アポロが」とヘルニア卓也さんは言い掛けると目頭を抑えた。


「大丈夫かい?」


「アポロがさ、アポロがさ、エキシビション・マッチなのにさ、楽しむためのエキシビションなのに。ドラゴがさ、ドラゴがね。エキシビションなのに、あんな事になっちゃって。アポロが可哀想です。アポロ〜、アポロ〜」とヘルニア卓也さんは言ってハンカチで目を押さえた。


「アポロがいるだけでロッキーは幸せだったのにね。二人は親友同士だからね」とキャプテン・ミルクも同感の意志を述べた。


「アポロ〜、アポロ〜、何で無茶したのよ〜、アポロ〜、アポロのバカたれ〜」とヘルニア卓也さんは泣きながら小声で言った。


「ヘルニア卓也さん、『泣かないでぇ〜』と舘ひろしが歌っています。どうか泣かないでください」


「誰それ? 私は泣かない! もう泣きません! 面接中にすみません」


「良いんですよ。泣きたくなるのは生きている証ですから。ただアポロのために泣かないでくださいね。アポロは架空のキャラクターですから」


「そうですよね。私は感情移入しやすくて」ヘルニア卓也さんは舌を出して照れた。


「あははは。ピュアなんですね」とキャプテン・ミルクは笑った。


「テヘッ」ヘルニア卓也さんは舌を出して照れた。





 ☆続いちゃう☆





 挿絵(By みてみん)

 (作画 七海 糸様)

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