キャプテン・ミルクは見た
https://31064.mitemin.net/i781956/(作画 茂木多弥様)
(作画 七海 糸様)
「加奈子ちゃん、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。怖くって怖くって。どうしても加奈子ちゃん、貴女が凄く怖くってぇ。 あははは……。加奈子ちゃん、ごめんなさい! 南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏です!!」とフクラハギさとしは泣きながら『心霊写真集 おばけ大百科』を掲げて謝っていた。
キャプテン・ミルクは『心霊写真集 おばけ大百科』を手に取るとパラパラとページをめくってみた。
心霊写真集 おばけ大百科
著者 皮剥珍平
発行所 株式会社怪し気社
1978年4月1日 第1刷発行
発行人 角来キン子
印刷所 可愛印刷株式会社
定価650円
Made in Japan
※この心霊写真集 おばけ大百科に書かれている物語は全てフィクションです。
と※の部分がページの最後に、ものすんごく、めちゃくちゃものすんごく、小さく書かれてあった。
つまりだ。加奈子ちゃんも、母親の茉莉子さんも、お婆ちゃんの美鈴さんも、友人のトメさんも、首無しチョンパの人形も、キチガイ地味た女も全部が架空の人物なのであった。
キャプテン・ミルクは冷めた目で恐怖に狂っているフクラハギさとしを見ていた。
「キャトルミューティレーションが! キャトルミューティレーションが! いつか夜更けを歩いていたら、僕の身に必ずキャトルミューティレーションが降りかかるはず! 今宵かも! ああーっ! キャトルミューティレーションが怖いよ〜!!」とフクラハギさとしは今度はキャトルミューティレーションとやらに怯え始めた。
「加奈子ちゃんの霊がいるような感じがする」とキャプテン・ミルクは面白半分で言ってみた。
「えっ?! 加奈子ちゃんが?!」とフクラハギさとしは言って床にしゃがんだ。
「加奈子ちゃんの声が聞こえてきたよ」とキャプテン・ミルクは面白半分で話を膨らませた。
「えーっ?! 困ります! 加奈子ちゃん、加奈子ちゃん! 勝手に用務員室に入らないでください! うえーん! 絶対に呪われる!」とフクラハギさとしは泣き叫びながら手を合わせた。
「あっ! 今、窓の外に光が!! あれがキャトルミューティレーションの光なのかな?」とキャプテン・ミルクは面白半分で恐怖を植え付けていく。
「やっぱりだ! 今宵こそ僕はキャトルミューティレーションを浴びるんだな! 怖いよ!!」とフクラハギさとしは言って走ってトイレに逃げ込んでしまった。
「フクラハギさとしさん、加奈子ちゃんの霊がこう言っていますよ。『ヘルニア卓也くんを合格にしてあげてね。彼なら立派に皿洗いと用務員を努めてくれますから。もし、ヘルニア卓也くんを不合格にしたらフクラハギさとしを恨みますし呪います』といっていますが、いかがですか?」とキャプテン・ミルクは面白半分に説得した。
「合格、合格。間違いなく合格。ヘルニア卓也は合格です。ねっ。だから加奈子ちゃん、僕を呪ったりしないでね。ねっ」とトイレの中でフクラハギさとしは合格を発表してくれた。
キャプテン・ミルクは『心霊写真集 おばけ大百科』の最後のページを破るとポケットの中にしまった。
「フクラハギさとしさん、ありがとうございます」
「いえいえ。どうもどうも。合格おめでとうございます」
「トイレから出てきてくださいよ」
「加奈子ちゃんの霊は、まだいるの?」
「一旦、帰りましたよ。『何かあれば、また来ます』って言っていました」
「ヘルニア卓也くんは霊感があるんだね」
「いやいや、俺には霊感なんて全然ないんですよ。たまたま加奈子ちゃんが見えるように現れてくれたんです」
「僕には加奈子ちゃんの霊が見えなかったよ?」
「フクラハギさとしさんって、左利きですか?」
「いや右利きです」
「じゃあ、見えにくいわ。右利きも、慣れてたら霊がハッキリと見えてきますが、少し時間がかかるんですよ。左利きは割と早く見える傾向があるんです」
「ヘルニア卓也くんは左利きなの?」
「左利きです」
「じゃあ、見えるね」
「ええ、今回ばかりは加奈子ちゃんのお陰様で霊を見さて貰えました」
「ヘルニア卓也くん、キャトルミューティレーションの光はどうなった?」
「消えましたよ」
「ああ、良かった良かった。キャトルミューティレーションされたら困るからね」
「まあ、そうですよね」
「それでは、ヘルニア卓也くん、早速、台所にある食器を洗ってくれ。時給1時間20万ヘンドリモンドリです(説明しよう。日本円にして20万円だ)。頑張ってくださいね!」とフクラハギさとしはトイレの中で話していた。
「わかりました。頑張ります。よろしくお願いします」とヘルニア卓也ことキャプテン・ミルクは言って、ちゃぶ台の上に『心霊写真集 おばけ大百科』をアンティーク本のため優しく置いた。
☆続いちゃう☆
(作画 七海 糸様)




