ヘルニア卓也とフクラハギさとし
https://31064.mitemin.net/i781956/(作画 茂木多弥様)
(作画 ひだまりのねこ様)
(作画 七海 糸様)
(作画 茂木多弥様)
フクラハギさとしは用務員室の中へと入っていった。
「さあ、ヘルニア卓也くん。中へどうぞどうぞ。ようこそ用務員室へ」とフクラハギさとしは言った。
「さあそこに座ってね」とフクラハギさとしは言うと、ちゃぶ台の前に座った。キャプテン・ミルクは、ちゃぶ台の側に来るとフクラハギさとしの向かい側に座った。
用務員室は薄暗くて狭くてしんみりとしていた。侘しさや、むさ苦しさ、染みったれてもいた。壁に愛星・サマー・えりかのポスターと焼肉のチラシが貼られていて、その横にオレンジ色に色付けされて彫刻刀辺りで彫られた文章があった。『君のことを風の噂でチラホラとは小耳に挟んでたしバインダーにも挟んでたんだよっ。ホットドッグのパンにも挟めたんだけどさ。それは止めといた。食べ物は粗末にしたらダメだからね。タハハ。でもさ、アレから僕の方は変わったかなって君に聞いてみたい心境にあるんだよね。そんなこんなで、どうだろうか? 僕は君から見たら昔と変わらずにさ、ちょんちょこ・モンテスキュンキュンかい? 相変わらずの、ちょんちょこ・モンテスキュンキュンなのだろうかな? そうだそうだ。アレを見つけたんだよ。今度さ見に来いよ』という謎の言葉が壁に彫られていた。
「なんですか、コレは」とキャプテン・ミルクは謎の言葉について聞いてみた。
フクラハギさとしは大きく何度も頷きながら壁に書かれた謎の言葉を見ていた。
「まっっったく、わからないんだわ。何なのコレ?」とフクラハギさとしも悩んでいるようだった。
「ヘルニア卓也くん、たぶん、ちょんちょこ・モンテスキュンキュンという方が、ここに書いたんだと思う」
「ちょんちょこ・モンテスキュンキュン? 誰ですか?」
「ヘルニア卓也くん、知ってる? ちょんちょこ・モンテスキュンキュン?」
「全く知らないですね。誰なんですかね? 前の用務員さんなのかな?」
「前はね、パンフレット朝殻起立零次という87歳のお爺さんだったから違うよ」
「じゃあ、違いますね」
「よし、履歴書は後でいいや、面接を始めます」フクラハギさとしは座り直した。
「はい、宜しくお願い致します」キャプテン・ミルクは言われるがままに面接を受ける事になってしまった。『とりあえず、ムササビ・ジュニア号に忍び込めたから良いかな』と思っていた。
「まずはヘルニア卓也くん」
「はい」
「ダメダメ、ダメだよ。そんな元気のない返事はさぁ。もっとハイカラな返事をしてください」
「は、はい」
「ヘルニア卓也くん!」
「はいっ!」
「違うなぁ。今のは落ち着きすぎている。もっとさ、はちきれてよ」
「分かりました」
「ヘルニア卓也くん!」
「へい!!」
「おっ、いいね。今の感じを大事にしてよ」
「へいっ!!」
「もう一回いくよ。ヘルニア卓也くん!」
「何だい! 俺に何か用かい? yoyo、用があるならよう、聞くよう! へいっ!!」
「おーっ、いいじゃんか! ヘルニア卓也くん、なかなか見所があるぞ。一回さ、僕にやってみてよ」
「はい。では、いきます。フクラハギさとしくん!」
「ちんちんちーん! ちんちん電車が参ります! ちんちんと、ちんちんと、鳴りながらちんちん電車は今日も行く。僕はフクラハギさとしです! なっ、ヘルニア卓也くん。返事はさ、こうやらなきゃさ」
「なるほどなるほど」キャプテン・ミルクは頷いた。
「ではやり直し。いくよ、ヘルニア卓也くん!」
「キュンキュンキュ〜ン。キュンキュンキュ〜ン。胸キュン胸キュン胸キュンキュ〜ン! チンチコ・チンチコ・チンチロリン、チンチコ・チンチコチン・チロリン。あんちくしょうの、あんちくしょうの、あんたのあんちくしょうのあんたの玄孫。鼻毛と胸毛とケツ毛の和解案。俺は先日、ドッペルゲンガーと和解したのに、まだまとわりつくから殴ってやったという、ヘルニア卓也どぇ〜す!!」とキャプテン・ミルクは挨拶を言った。
フクラハギさとしも黙ってはいなかった。まだまだ挨拶に関しては若造には負けてたまるかという強い気持ちが出てきていたのだ。フクラハギさとしのプライドでもあった。
「ヘルニア卓也くん、もう一度、僕にも問いかけてみてよ」
「はい。フクラハギさとしくん!」
「はははははぁーい! あてちら、あてちら、あてちら・ちぃー! あてちら、あてちら、可愛らちーい! ちんちん電車は、本当に、ちんちん、ちんちんと鳴りながら、ちんちん電車は参りますよ! ちんちん電車が好きですかと言われたら、そんなに好きでは無いし嫌いでもないんでして。ちんちん電車は心の故郷に行ける唯一の電車ですから1つのシンボルなんです。フクラハギさとしです!」とフクラハギさとしは頑張って挨拶をした。まさに一撃必殺の最高な挨拶だった。
「では、挨拶をお願いします。ヘルニア卓也くん!」
「庵ベロべービー! 庵ベロべービー! ユピピラピー、ユピピラピー、ユピピラピー!! 霧はそこはかとなくでしたからユピピラピー! ユピピラピー! ユピピラピーったらユピピラピー! 霧はさ、結局は、そこはかとなくじゃい! いつもお稽古お疲れ様ですもんね! そこはかとなくでしたから! 息子がね『色んな意味で早めに大きくなりたい。早く大人になりたいんだよ! 大人になってしまいたい!』って、まだ4歳なのに私を脅すようにせがむんですよ。『まだ早い。身の程を知れ』って強めに息子に言ってやったらね、息子がね、シュンとしちゃいましたからね。マズいと思って息子の頭を撫でてやったらグンと頭を上げて微笑みました。大体、親子の会話はこんな感じです。真実の愛ってのはコミニュケーションから生まれていき心の中から湧き上がるものなんだ! 愛を信じろ!! 今は一先ず、俺はヘルニア卓也かもなと君に忠告する!! ヘルニア卓也です!!」
「す、す、す、凄い逸材が現れちゃったわ……。こりゃたまげたわ……」フクラハギさとしは冷や汗をかいた。フクラハギさとしは驚愕していた。『胸キュンとチンチコ・チンチコ・チンチロリンかよ。ユピピラピーだしさ。ユピピラピーってのは何なのよ? ヤバい、コイツは本物だわ。こんなに元気丸出しの挨拶が出来る奴に出会えるとは!!』
「ヘルニア卓也くん、凄いじゃん。どうしたよ? 今まで何をしていたんだよ? 今まで何処にいたのよ?」とフクラハギさとしは言ってハイカラすぎる返事を聞いて喜んでいた。今までに無いハイカラな返事だった。ここまでハイカラだとフクラハギさとしは用務員としてやっていけるのかどうかの迷いすら出ていた。ハイカラな返事によるハイカラな新入りの誕生。まさに、時代の申し子が現れた瞬間に立ち会ったと強く感じていた。だが面接は続けなければならない。挨拶だけでヘルニア卓也を用務員兼、皿洗いにしてはいけないのだ。
「よし、次に参りますよ。ヘルニア卓也くん、何故、皿洗いをしてみたいと思ったんですか?」
「皿を洗うというのは、自らの心の汚れを洗い落とすに等しいからです」
「続けて」とフクラハギさとしは言って感心していた。
「皿のせいで酷い仕打ちを受けた女性もいれば、頭に皿を乗せた緑色の妖怪の悲しみもありましたし、傘の上で皿を回して幸せを届けてくれた者たちもいました。皿にはロマンがあるのです。皿の上に熱々の料理、冷たい料理を乗せて生きるものすべてに幸せをお届ける。それが皿の使命なんです。そんな健気な皿を、頑張っている皿を更に磨いてあげたい! 皿を更に綺麗にしてあげたい! という一念で、わたくし、ヘルニア卓也はアルバイトの募集に応募致しましたとさっ!!」とキャプテン・ミルクは言った。はっきり言ってだ、全く関係がないのに、ここまで本気になれる男がキャプテン・ミルクなのだ。
フクラハギさとしは涙を堪えていた。『ここまで純粋な男がいたとはな。なんて奴だ。凄い、凄すぎるよ』とフクラハギさとしは思ったが、まだまだ面接は続けなければならなかった。
☆続いちゃう☆
(作画 七海 糸様)




