マラカス貴子の憧れの人
https://31064.mitemin.net/i781956/(作画 茂木多弥様)
(作画 ひだまりのねこ様
(作画 七海 糸様)
(作画 茂木多弥様)
躊躇うマラカス貴子を見て不憫な気持ちになった湯上がり娘の妹のクラリネット茜はバスタオル一丁の姿だったが、気合いを入れて姉の代わりに黒電話の受話器を取り耳に当てた。
黒電話は999回目で終わったのだった。
マラカス貴子は驚愕の目で妹のクラリネット茜を見ていた。
「は、はい、も、もしもし?」
「あっ、やっと出てくれた。良かったぁー!」
「あのう、もしもし?」
「夜分にすみません。あなたはマラカス貴子さんですか?」
「いいえ」
「あっ、マラカス貴子さんはいますか? いない場合なら、いつ戻られますか?」
「分からないです。すみません、どちら様でしょうか?」
「あっ、申し遅れてしまいました。大変、失礼致しました。私、愛星・サマー・えりかと申します」
「えーーーーーっ?!」
「驚かせてごめんなさいね。本当に本人です」
「あっ、あっ、あっ、すみ、すみません。姉が、姉が、今ですね、姉のマラカス貴子がですね、今ね、帰宅しましたわな! 確かに帰宅しましたよな! 完璧に帰宅しましたですな! 帰宅しましたんですね、代わりますぅっ!! 本当に本当に本当に本当に愛星・サマー・えりかちゃんですよね?! なんか、聞き覚えあるなぁ〜とは思っていたんです!!」
クラリネット茜は驚きの表情を浮かべて受話器をマラカス貴子に差し出した。湯冷めて体が冷え切ったマラカス貴子は鼻水を垂らしながら急いで10年ぶりに黒電話を取った。いやいや本当に本当におめでとう! マラカス貴子ちゃん!
「は、、はい。すい、すみません。マラ、マラ、マラ、マラ、マラ、マラ、マラケシュ、マラセチア、マラッカ、マラニック、ミルマスカラス、マラ、マラカス貴子です」
「あっ、マラカス貴子さん、何回もベルを鳴らして、ごめんなさいね。えりかです」
「いえいえ、ど、どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどど、だだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどういたしまして。こちらこそ、出なくて、ごめんなさいっっ✨!!」
「改めての愛星・サマー・えりかです。お話があって黒電話を致しました」
「な、な、何でしょうかっな? オエッ!!!!」
「大丈夫ですか?!」
「は、はい。緊張して、胃酸が、分泌が、喉にせり上がり、吐き気が、胸焼けが、一気に一挙にやってきたんです」
「黒電話を改めて掛け直しましょうか?」
「えりかちゃん、大丈夫です、大丈夫です。全然元気なんで大丈夫です。オエ〜ッ!!!!」
マラカス貴子は焦ってビビっていた。『憧れのスーパー・アイドルが何故に私の元に連絡した?! 何故に連絡先を知ってまっす?! ふっしぎ〜。超不思議〜ぃ。ウフフフフ。エヘヘへへ。オホホホホ。アハハハハ。あぁ〜ん、あっは〜ん、あっあっあっ。あは〜ん!! あーん、あーん、南へいっちゃった後には東へいっちゃうかもね! 私は何処にでも、いくいくいく〜ぅ!! 私を何処かで見かけたら呼び掛けてちょーだいな!!』と思っていた。
「何度かテレビラリン・チュラララリンでマラカス貴子さんを拝見しちゃってます。マラカス貴子さんには、かなり光るものがあります。いつか是非共演したいです」
「……」
「マラカス貴子さん?」
「うむ。えっ、はい?」
「聞いてましたか?」
「聞いてましたし。ちゃんと聞いてましたし。が、信じられないですし。本当っすか?」
「本当です」
「うーん、信じられないです」
「本当ですよ、マラカス貴子さん」
「えりかちゃん、わかりました。社交辞令をありがとう」
「これまた社交辞令ではないんだよ。本当なんだよ」
「えりかちゃん、初対面の黒電話で初対面のくせに黒電話で言うのも何だけども、聞いてください。私は売れないアイドルであり、売れない司会者であり、売れないグラビアアイドルであり、家族には秘密なんですが売れないキャバ嬢でもあります。私はえりかちゃんみたいなアイドルになりたくてアイドルになったんですが、なかなか目が出ず日の目に当たらず日陰で燻りながら日夜モンモンとしていて、一応アイドルとしてのプライドがありますから夜間ランニングでシャドーボクシングをしながらダイエットに励んで体を絞って雑念を振り払っています。アイドルに成りたての頃に気持ち悪いオッサンから散々セクシャルハラスメントを受けましたし、何人かの気持ち悪いプロデューサーのオッサンから枕営業を持ち掛けられたり、キャバクラでは気持ち悪い酔っ払いのオッサンからもセクシャルハラスメントを受けてきました。まず最初に、気持ち悪いプロデューサーのオッサン、仮名ですが、私が18歳の頃に無理やりラブホテルのホテル・カルフォルニアに連れ込まれましてね、危うく、襲われてしまい、いかがわしい行為に持ち込まれそうになりましたが、私は、その気持ち悪いプロデューサーのオッサンの首を全力で殴ったらオッサンの喉仏が破壊されて潰れ、短時間で気持ち悪いプロデューサーのオッサンがハスキーボイスになったんです。おそらく、8オクターブくらいの高さを誇るハスキーボイスに早変わりされてました。私は昔からドン・フラメンコとグラス・ジョーにもちょっとだけ憧れてボクシング事務所にも通っていたんですよ。それなりにパンチはある方です。話を戻してその一気に変わったハスキーボイスがおかしくておかしくて笑っていたら『コノヤロウ、俺の野太い声を返せよ!!』と気持ち悪いプロデューサーのオッサンがハスキーボイスで怒鳴ってきて私はビンタされたんです。私は完璧にキレましたね。私は全力で気持ち悪いプロデューサーのオッサンの顎を殴ったら頭を揺らしながらノックアウトしたんです。『マズイ、死んだかも』と思った私は思わず「ワン・ツー・スリー・フォー……」とテンカウントを唱えたんです。そしたら気持ち悪いプロデューサーのオッサンが立ち上がってファイティング・ポーズを取り、私にウインクをして頷いた後に見えない敵に向かって闇雲にパンチを仕出したんです。私は『マズイ、突発的にボケが発症したかも』と思ったので試合方式の実況をすることにしたんです。私はこう見えても売れない司会者でもありますからね、実況くらいはお茶の子さいさいなんです。プロデューサーの名前をバラします。『さあ、最後のラウンドです。芸能プロデューサーでありボクサーの米珍遅漏さん、反撃したいところです。さあ、自分にジャブしてください!』と言ったら気持ち悪いプロデューサーのオッサンの米珍遅漏さんが自分の顔にジャブ仕出したんですよ。やはり米珍遅漏プロデューサーは自分で自分の顔を殴って鼻血を出しましたよね。『ヤバい。私、潜水魔法以外で新しい魔法が発現したかもしんない。題して「操りからくり人形の魔法」ってね』と直感しましたし。えりかちゃん、実は私は何処までも深く潜れる魔法が使えるんですよ。最高30キロメートル潜れます。まさか、危機一髪のセクシャルハラスメント中に新しい魔法が使えるなんて思ってもみませんでしたよね。私は米珍遅漏プロデューサーに試す事を決断致しましたよ。私は『米珍遅漏選手、ボディーです。ボディー、ボディー』と言ったら、やはり自らのパンチでボディーを連打していました。『不思議なことにスゴく何故か苦しい』と米珍遅漏プロデューサーが悶ながら言ったので『ギブアップしますか?』と言ったら『俺は絶対にギブアップしないしリングにタオルを投げるなよ!!』と米珍遅漏プロデューサーは言って果敢に前に前に出ては闇雲に電灯に繋げられているビニールの紐に向かってパンチをしました。私は『顔にストレートパンチだ!!』と叫んだら米珍遅漏プロデューサーは自分の顔のど真ん中に自らのストレートパンチを繰り出して仰向けにノックアウトしたんです。私は『ワン・ツー・スリー・フォー・ファイブ』とカウントを取りましたが米珍遅漏プロデューサーは立てませんでした。『残念だったです。ノックアウト負けでした』と私は言うと『ふ、ふざけんな!! ダウンしてないぞ!! スリップダウンだ。スリップ、スリップだ。ワイはプロデューサーでもあるが、ワイは気付きたくなかったけど皆からエテ公って言われているんや!! そうや、ワイは女好きのエテ公なんや!! 文句あるか? ワイは盛りの猿みたいなもんなんや。フッ、そうや、ワイは盛りの猿や、盛りのプロデューサーやな。盛りのプロデューサー猿みたいなもんなんやー!!』と叫んで気絶したんです。私は本当にコイツが面倒くさいから、そのまま介抱しないでラブホテルのホテル・カルフォルニアから逃げ出てきました。翌朝、朝刊を読もうとしたら一面に『芸能プロデューサーの米珍遅漏プロデューサーが、ラブホテル、ホテル・カルフォルニアの路地裏で5人の宇宙人に連れ去られる。現在、行方不明』とスクープ記事が飛び込んできたんです。しばらくして家に夕刊が届いたんです。見てみると『米珍遅漏プロデューサー、無事に釈放されるが謎の宇宙人5人に去勢される。謎の5人の宇宙人は闇医者か?! 謎の宇宙人の正体と所在は不明。遂に悪徳プロデューサーはオスからメスに。二度とメスからオスには戻れず。どうやってもメスからオスにはならないのだ。哀れ、哀れの落ちぶれた悪徳プロデューサー、米珍遅漏プロデューサーは人目も憚らずに号泣。涙、涙の嵐。『謎の5人の宇宙人さん、お勤めご苦労だった』との声が本社に多数届く。『誰もが貴方達を英雄とみなすかもしれませんがみなさないかもしれない。でも、よくやった』との声も本社に多数届く。泣き寝入りした女の子たちよ、今こそ、悪徳プロデューサーを仕留めよう。悪徳プロデューサーを抹殺しようよ。大丈夫だからさ』と出ていたんですよ! そして、5時間後の夜中にね……」
☆続いちゃう☆
(作画 七海 糸様)
ありがとうございます。