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伝説の歌

  挿絵(By みてみん)

https://31064.mitemin.net/i781956/(作画 茂木多弥様)



 挿絵(By みてみん)

 (作画 ひだまりのねこ様)

 

 挿絵(By みてみん)

 (作画 七海 糸様)

 

 挿絵(By みてみん)

 (作画 茂木多弥様)








マラカス貴子はしんどかった。あまりにもしんどすぎて、もう風呂に入って、顔に『お肌ツルツル魅惑のジャパン・ゴールデン・ウィーク産の納豆パック』をしてから、納豆シャンプーをして髪を若返らせて、納豆ボディーソープで体を洗った後に、普通に石鹸シャンプーで髪を洗い直して、石鹸ボディーソープで体を洗い直して、風呂上がりに炭酸水をガブ飲みしてから牛乳をガブ飲みして、ルイボスティーPart5をガブ飲みして、伝説のティモテ・シャンプーの歌を歌いながら、スキンケアをした後に恋占いの本を読んでトキメいたまま朝まで寝たかった。


黒電話は、もう830回も鳴っちゃってる。


いよいよマラカス貴子は黒電話に出る決心、出る決意、出る熱意、出る恐れという所まで来たのであったのだった。あと少しだ。あとほんの1ミリだよ、1ミリ。マラカス貴子よ、頑張れ、頑張れ、マラカス貴子! 頑張って黒電話に出てちょうだい。


そこに来て、またしてもフラッシュバックだった。突然、マラカス貴子の脳裏に1か月前の苦い記憶が蘇ってしまった。



   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



今から1か月前の夜の8時頃。


マラカス貴子はボイス・トレーニングを終えて帰宅していた。


『独りぼっちの帰り道。寂しいな、寂しいな、ちょっぴり切なくて、寂しいな』とマラカス貴子は思いながら石ころを蹴って自宅に向かっていた。


「すみません、私、占い師なんですよ。あなたを占ってもいいでしゃろかいな?」と全身黒ずくめの服を着たお婆ちゃんが声を掛けてきた。お婆ちゃんは真っ白な髪をみつ編みにしてノーメイクだった。


「結構です。お引き取りくださいませ」とマラカス貴子は言って早足で歩いた。


「いやいや。占うよ。タダで占うよ。あんた、あれじゃろ? 今さ不倫してるんだろ?」


「してません」


「じゃあ、あれじゃろ? 密輸とかしてるじゃろ?」


「してませんよ!」


「ほら、不倫してるじゃろ!」


「してないって!」


「あれじゃろ? 整形してから合コンに出席しようと目論んでないかい?」


「してないってば!」


「ほらほら、やっぱり不倫だ!」


「話が飛んでますよ!」


「可愛い顔をしているから不倫してるじゃろ?」


「してないってよ!!」


「乳房が垂れてないかい?」


「垂れてないです!」


「乳首は? 乳首の色はどうだい? バッテラみたいな色した乳首じゃないのかい?」


「そんな色はしていません!! 失礼します!!」


「ワシは紫色した乳首から見事にピンク色に染まったんだよ。垂れた乳房をロケットみたいに前に上がったんだ」と白髪をみつ編みにした高齢の占い師は言って黒い服を捲くりあげた。


「あーっ?!」とマラカス貴子は叫んだ。


謎の占い師のお婆ちゃんは服を持ち上げたまま微笑んでいた。


謎の占い師のお婆ちゃんの乳房はロケットみたい真上に飛び出していた。しかも乳首の色がピンクと言うよりもケバケバしいショッキングピンクだった。 


「お婆ちゃんの乳首、目が痛くなるピンクですね」


「そんなことないわよ! 人の乳首に言っちゃもんつけないでよ! 前に高級エステサロンで乳房と乳首を18歳の乙女にしてきたんだから! そこのオーナーが私を見初めて乳房と乳首を施したんだから! 散々、ヘンドリモンドリをオーナーに取られたけれども、オーナーは悪くないんですから! 私の色素が人よりも目立ちたがり屋さんなだけなんですから!」


「いやいや、18歳の乳房と乳首ではないですし、そこのエステサロンのオーナーは医療免許がないと思うし資格なしだと思われますよ」


「なんですって?!」


「ほら」とマラカス貴子は言って占い師のお婆ちゃんの乳輪に彫られたタトゥーを読み出した。


「『クソババアは単なる金づるさ。無免許医師による偽りの高級エステサロンの経営者 カクライ』と小さな字でタトゥーされてます」


「えー?! 老眼があるから見えなーい!」


「まだ書かれています『ウンコ』と左の乳輪に彫られてます」


「なんだって?! あの野郎! 私に黙ってタトゥーなんかしやがって! やたらと麻酔を勧めてきたのはタトゥーのためかい! 人をバカにしてさ! あの野郎にほだされて、やむおえず、してしまった駆け落ちは何だったのよ!!」と怒り心頭の占い師のお婆ちゃんは言って、両手で乳房を鷲掴みにすると乳房を引き剥がそうとした。


「お、お婆ちゃん?!」


「こんなにイタズラ書きされた乳房なんかワシの体から剥がしてやる!! ガルルルルル!!」と占い師のお婆ちゃん叫んで乳房を揉みながら唸り声を上げ始めた。


「やめてください、お婆ちゃん!!」


「ガルルルルル!!」


「お婆ちゃん、止めて!!」


「ガルルルルル!!」


「わかったから、止めて!!」


「ガルルルルル!!」


「お婆ちゃんの親から貰った大切な乳房と乳首でしょうが! お婆ちゃんの両親の雄しべと雌しべの愛の結晶がお婆ちゃんの体なのよ! だから怪我しちゃ、めっ!!」

 

「ガルルルルル!!」


「お婆ちゃん、目を覚ましてよん!!」


「ガルルルルル!!」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



マラカス貴子は首を振って黒電話を見つめた。


「あの占い師のお婆ちゃん、あのまま自分の乳房鷲掴みにしたまま北に走り去ってしまった。大丈夫なのかな? あの後、どうなったのだろう?」マラカス貴子は頭が痛くなってきた。


「お姉ちゃん、大丈夫?」クラリネット茜が心配してバスタオル姿で姉の部屋に来た。


「う、うん、だ、大丈夫」


「黒電話、出ないの?」


「う、うん」


「そっか……」





  ☆続いちゃう☆






 挿絵(By みてみん)

 (作画 七海 糸様)


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