私、マラカス貴子は行くわよ!
(作画 ひだまりのねこ様
(作画 七海 糸様)
(作画 茂木多弥様)
マラカス貴子は黒電話に出たくはなかった。何故って? 過去に黒電話のトラウマがあったので出たくはなかったのだった。
虎馬。そう、トラのキンタモ君と馬のアセクサ君が仲良く市民プールでシンクロナイズドスイミングをすることを虎馬という。もしくは虎のキンタモ君と馬のアセクサ君が仲良く児童会館にてマイムマイムを踊ることも虎馬という。マイムマイム。昔、マイムマイムを踊る双子の友達、明子ちゃんと麻紀子ちゃんを見て凄く悲しくなったことがある。あの両親が不在で鍵っ子みたいな切ない夕方の空を思わせるメロディーが寂しさを募らせちゃったからなのさ。
マイムマイムはトラウマさ。マイムマイムを聞くと逃げ出したくなるからね。東の方角に向かって泣きながら逃げ出したくなるんだ。おっと、失礼、作者、蒼井のナイーブな過去が暴かれたけど別に気にしないでね。話半分で聞いてね。
マラカス貴子は鳴り続ける黒電話を見てしゃがみ込んだ。マラカス貴子は目を閉じて耳を押さえると叫んだ。
「やめてよ! 黒電話のクセに生意気なんだよ! 黒電話ならシャキッとせい!」とね。
マラカス貴子は葛藤していた。
『出たら出たで余計な関わりが新たに生まれるかもしれない。そこが非常に面倒くさい。多少、有名人な私には、この全宇宙に約11人の熱烈なファンがいる。11人と超控えめな人数だからファンの住所や連絡先も知っている。少ないファンを大事にしたいからね。これ以上、ファンの連絡先を増やしたくないし、ファンが増えて欲しくもない。いけない、いけない。私って人見知りだからさ、少数でなら対応可能だけどもさ、多数を相手にするとなると目眩がしちゃうんだ。貧血や生理痛にもなるし。ファンが増えてほしい思いはあるけれど、別に増えなくてもいいと思う芸能人って私だけだと思うわね。私って繊細で儚くて切なくて美人薄命的な要素もあるから。変なファンの黒電話だったら嫌だし。昔々、子供の頃に、知らないオッサンから黒電話が来た。私は無垢だからオッサンに色々と個人情報を与えた。すると、家に来た。私に会いに来た。私は怯えた。オッサン、最初はニコニコしていただけだったが、日が経つに連れ過剰にスキンシップをしてきて、頻繁に私の体を触ってきた。ある日の夕方、現れたオッサンに、いつものように体を触られていたら、知らない高校生の運転するバイクが来てね、しゃがんでいたオッサンに気付かなくてオッサンを跳ね飛ばしたんだ。変質者のオッサン、お尻を引き裂かれていてね、お尻の穴からウンコを漏らして死んじゃってた。私ね、約1週間、変質者のオッサンに触られてた。特にね、お尻を触られたわ。皮肉よね、私のお尻を触り続けた変質者のオッサンが自分のお尻を破裂させられて死んじゃったんだから。バカみたい。その後の記憶が曖昧なのよね。男ってさ、皆、馬鹿なのかなぁ〜? 皆が皆、馬鹿じゃないのは分かっているけれど、もう50世紀なのにさ、いつまで経っても男同士で武器を振り回して争ってばかりじゃん? 男同士によっての争いがさ、一向に無くならないじゃん? それって何なのよ? 今だに起こっているじゃん? 本当に何とかならんのかしら? 「争わないで愛し合おう」ってジョン・レノンというアーティストが言ってた。20世紀にいた古いアーティストなんだけどね、なかなか良い事を言うじゃん。本当にそうよね。愛し合おうだよね。私は過去に囚われないで生きていきたい。過ぎ去った過去に目を向けて苦しむよりも、今や未来に目を向けて生きていきたい。傷付いた過去を嘆いて憐れむよりも、自分の幸せのために生きていきたい。私は私。誰も私にはなれないのだからね。もっと自分を大切にしなくっちゃね。よし、久方ぶりに黒電話を出てみようかな? ひょっとしたら、素敵な黒電話かもしれないし、ロマンティックな黒電話かもしれないじゃん。ロマンティックな、ときめきのある黒電話だと嬉しいなぁ。約10年ぶりに黒電話に出る事になるわね。フフフ。ずいぶんと黒電話に御無沙汰しちゃってるわよね。よし。私、黒電話に出るわ! 出てみます! 思い切って黒電話にイクわ! イクイク! イッちゃう! 私、イッちゃうから! 決めた! イクイク! 私、イッちゃうわ!!』マラカス貴子は勇気を出して約10年ぶりに黒電話の受話器を取り上げた。
☆続いちゃう☆
(作画 七海 糸様)
頑張ってね、マラカス貴子ちゃん✨11人もファンがいるなんて凄く立派なことだよ✨




