私の赤いほっぺたを触らないでくださらない?
(作画 ひだまりのねこ様
(作画 七海 糸様)
(作画 茂木多弥様)
マラカス貴子は汗だくのまま黙って疑わしそうに黒電話を見ていた。時刻は午後10時になろうとしていた。しつこく黒電話のベルが鳴り続いていた。マラカス貴子はイチゴミルクを飲みながらイチゴ味の綿飴を食べた。マラカス貴子はダイエット中のアイドルで本名のマラカス貴子で宇宙芸能界を何とか頑張っています。
なおも黒電話はしつこく鳴り続いていた。その数30回もだ。結構長いもんだよな。ようやく31回目のベルで黒電話のベルは切れた。
マラカス貴子は居留守をしたのだった。何故、マラカス貴子は黒電話に出なかったのかな? ナゼだべな?
マラカス貴子は汗だくなので、軽くお風呂に入ることにした。
マラカス貴子は浴場でスッポンポンになると全身鏡に向かって歌い始めた。マラカス貴子のデビュー曲、『私の赤いほっぺたを触らないでくださらない?』だ。この曲は全宇宙で販売したのだが、わずか57枚しか売れなかった。バカでかい宇宙にはウジャウジャと宇宙人と人間とサイボーグとアンドロイドとAIヒューマンがいるというのにだ。57枚とは無残にもほどがある。
マラカス貴子は歌いながら涙ぐんだ。
『いつか必ず愛星・サマー・えりかちゃんと共演してみせるわ。宇宙人たちをギャフンと言わしたるでぇい』とマラカス貴子は心に誓ったのであった。
「お姉ちゃ〜ん、バスタオル、ここに置いとくよ」と扉越しにマラカス貴子の妹のクラリネット茜ちゃん15歳は言った。
「クラリネット茜、ありがとう」とマラカス貴子は歌うのを止めて返事をした。
「お姉ちゃん、ダイエットなんかしないでよ。ちょっと太めの方が長生きするんだよー」とクラリネット茜は扉を開けてから可愛らしい声で言った。
「一応、お姉ちゃんは売れないアイドルですからね。プロとしてのプライドです」
「お姉ちゃん、プロフィールには48キロって載せてるよね?」
「うん。テヘヘヘヘ」
「顔は痩せているから、そのくらいには見えるけど、正直に60キロって載せたら?」
「嫌です。クラリネット茜は今、何キロあるのよ?」
「47キロだよ」
「羨まピー、めちゃめちゃ羨まピー! お姉ちゃんも、それくらいにします!」
「お姉ちゃん、分かるけどもさ、もう3日も、まともに食べてないんだよ。何か食べなさいよ」とクラリネット茜は言って台所に行くと買ったばかりの食物を手にして浴室に戻った。
「はい、お姉ちゃん。食べな」とクラリネット茜は言ってマラカス貴子に差し出した。
「あっ、コレってさ、アレだよね? ジャパン・ゴールデンウィーク製の、何だっけ?」マラカス貴子は首を捻って考え中だ。
「コレはね、待盛牛から作られたソーセージだよ」
艶々に輝いたブランド品の最高級品のソーセージはマラカス貴子のお腹と胃袋を鳴らした。
「お姉ちゃん、はい、私のソーセージを食べな」
「お姉ちゃんはダイエット中の身です!」
「良いって、我慢しないで少し食べな」
「嫌です」マラカス貴子は目を閉じた。
「良いから! お姉ちゃん、私のソーセージを食え!!」
「嫌です」
「私のソーセージを食えって!」
「いやだっつーの!!」
「早く出来たての私のソーセージを食えよ!」
「いやだっつーの!」
「お姉ちゃん、私のソーセージを食えってば!!」
「いやだっつーの、ソーセージなんかさ」
「私のソーセージを食えよ! 滅多にないソーセージなんだよ? 早く私のソーセージを食え!!」
「いやだっつーの! 何回言わすのよ!!」
「お姉ちゃん、怒るよ。早く私のソーセージを食え!!」
「いらんよ!!」
「早く私のソーセージを食えつーの!!」
「ハアハアハア。もう我慢できん。クラリネット茜、ありがと〜う。お姉ちゃん、クラリネット茜のソーセージを食べまーす! いただきますです! あはははは!」とマラカス貴子は言ってジャパン・ゴールデンウィーク製の待盛牛使用のフレッシュで味が深くて美味いソーセージを一気に食べてしまったんだわ。ダイエット中なのにね、本当に食べちゃったの。
その時、マラカス貴子の部屋から黒電話が鳴った。
☆続くんだい!☆
(作画 七海 糸様)