戸惑い吐息
(作画 ひだまりのねこ様)
(作画 七海 糸様)
(作画 茂木多弥様)
「わかった、わかった! 俺が悪かった! 急遽、高橋名匠くんをだね、当社の副社長に昇進させよう!」創刊443年の大御所月刊誌「俺は強い豪快だ。ダハハハハ。掛かってこい。逃げも隠れもせん!」の編集長ダンディー・パイオニアは頭から血を吹き出したまま土下座をして、主婦の高橋ワンパキ子に平身低頭で謝った。
「断るわよ! 謝っても許さないから! もうあんたは退陣しなさい! さっさと今の地位を捨てて隠遁生活に入りなさい! 何でなのよん? 何で私が皆の先頭に立って権力者を引きずり落としているのよん?」
「退陣は出来ない! 退陣したら殺されるかもしれないんだ!」
「強い怨みを買われるような乏しい人生を生きたのだから覚悟しなさい! 罰が当たったのよ!」と言った高橋ワンパキ子の額から汗が飛び散ったので高橋ワンパキ子はエプロンを持ち上げて顔全体を擦る様に拭いた。高橋ワンパキ子はヌード全開で汗を拭きまくっていた。
「あん、さっぱり」と高橋ワンパキ子は言いながらエプロンで顔を拭きまくった。
「あ~あ~! いやいや、ちょっと、あ~あ~! あらららら」と会見場にいる全800人の記者たちの戸惑い吐息が漏れ出た。
戸惑い吐息とは見たくないのに見てしまったがために起こるやりきれない諦めの吐息の事なのだ。
高橋ワンパキ子のちょっとした山を彷彿させる三段腹、ボンレスハム並みのふくら脛、虫に噛まれまくった赤いお尻、イソギンチャクみたに膨らみのある長めのアンダーヘアー。800人の記者たちは見慣れた自分の母親の裸を思い浮かべていたのであった。あまりにも高橋ワンパキ子の裸と自分たちの母親との裸が瓜二つだったからだ。憎めない裸とはこの事なのであった。誰しも母親の裸って見たくはないものなのだ。
「あん、さっぱりしたわん」と高橋ワンパキ子は言ってエプロンを戻した。
「お、おい、ワンパキ子ちゃん!?」高橋名匠が意識を取り戻して高橋ワンパキ子の肩を叩いた。
「あんた!? 大丈夫なの!? 無事で良かったわ~ん! 大丈夫なの?」と高橋ワンパキ子は号泣しながら高橋名匠に抱きついた。
「よせよ、ワンパキ子ちゃん。何でこんな場所で裸エプロンなのよ? あっ!? げっ!!」高橋名匠は不思議そうに妻の装いを眺めてから会見場にいる事に気付いた。
「皆さん、見ないでください!! 僕の妻を見ないでください!」と慌てて言った高橋名匠は着ている背広を脱いで高橋ワンパキ子に掛けてやった。
「おいおい、ワンパキ子ちゃん。一体何でここにいるのよ?」
「あんた、この糞ジジイにともえ投げされて、背負い投げされて、ケツを蹴られて、糞ジジイの汚い人差し指であんたの歯を磨かされて、糞ジジイがあんたにマウストゥマウスをしたのを覚えてないのかい?」
「あんまり覚えてない」
「あんた、あの糞ジジイに襲われた様なもんなのよ! あんた、こんなブラック企業は今すぐに辞めなさい!!」
「……。でも僕はこの会社で10年も働いてきたし、それなりにキャリアを……」
「いいから辞めなさい!」
「ワンパキ子ちゃん、家族を路頭に迷わせたくない。考えさせてくれないか? それなりにキャリアがあるんだよ」
「こんなキャリアはキャリアじゃないから。あんたにした仕打ちをテレビラリン・チュラララリンで見ていたら分かったわよ。400年以上もある歴史的な月刊誌だか何だか知らないけれどもねぇ、独裁によって誤った歴史を築き上げた結果なんて、それは歴史の内には入らないから。独裁は歴史に認定されないから。民衆を苦しめる歴史なんて恥や愚か以外の何もんでもないから。強いて言うならばね、希望も未来もない暗黒の歴史なだけって話にすぎないから。ねぇあんた、これからも一緒に頑張って真っ白なキャンバスに愛や夢や未来を描きましょうよ」と高橋ワンパキ子は熱のある説得を旦那に試みた。
会見場にいる800人の記者たちから、最初は静かな拍手だったが直ぐ様大きな拍手へと変わっていった。800人の記者たちは裸エプロン姿の高橋ワンパキ子に畏敬の念を込めて感服していた。記者の中からすすり泣きさえ聞こえてきたのだった。
「あんた、どうすんの? この糞ジジイことダンディー・パイオニア編集長を取るか、私を取るかって話になるんだよ。どうすんのよ?」高橋ワンパキ子はエプロンで手を拭いた後に額の汗を拭きまくった。
高橋ワンパキ子がエプロンで汗を拭く度、たまに見える高橋ワンパキ子のヌードに釘付けになるものは誰1人としていなかった。皆して既に自分たちの母親の裸と同等に扱って高橋ワンパキ子の体を見ていた。
「分かった。辞めるよ。僕はワンパキ子ちゃんを取る。僕は今まで散々な目に合ってきたことを、ここにいる記者たちに報告します。もっと酷い仕打ちをヤられてきましたからね、この糞ジジイにはね」
「あんたを支えていくのが私の愛であり夢なのよ。新しい仕事を一緒に探しましょうよ」高橋ワンパキ子はエプロンで涙を拭いた。
「ありがとうな、ワンパキ子ちゃん。これからも宜しく頼むな」高橋名匠は涙声になっていた。
「こちらこそよん、こちらこそなのよん。ウフフフ」と高橋ワンパキ子は泣きながら高橋名匠に抱きついた。
「あーーーーーーっ!!」と高橋ワンパキ子は目を丸くして叫んだ。
「どうしたんだ!? ワンパキ子ちゃん!?」
「今日は白滝が安いんだわ!! スーパーに行かなくちゃ!! あんた、また後でね。ウフン」と高橋ワンパキ子は高橋名匠に投げキッスをして会見場から走り去っていった。
☆続いちゃう☆
(作画 七海 糸様)
「家の家族は白滝が好きなんです。演説こいちゃったけども失礼致します」
高橋ワンパキ子より




