緊急生放送!
「皆様、お今晩は。特別緊急番組、生放送、『噂まみれ! ワレワレハ宇宙人じゃん』が始まりました。司会の銭湯乃湯船内モラスンです。今日は大宇宙のスーパースター、スーパーアイドルの愛星・サマー・えりかちゃんの特集番組です。皆さん、御存知かと思います。現在、愛星・サマー・えりかちゃんは行方がわからなくなっています。ということで、『何処よ何処よ、えりかちゃん何処なのよ。隠れてないで出ておいでよう』というコンセプトで緊急生放送でお送り致します。今回は愛星・サマー・えりかちゃんの秘密に迫りたいと思います。それではゲストを紹介します。愛星・サマー・えりかちゃんの大宇宙No.1ファンと評価されているコメンテーターのマグナムマッサージ・歩菜美ちゃんです。マグナムマッサージ・歩菜美ちゃん、よろしくお願いいたします」
「はい、よろしくお願いいたします。マグナムマッサージ・歩菜美です。お手柔らかに」
「マグナムマッサージ・歩菜美ちゃん、ズバリですが、愛星・サマー・えりかちゃんがいなくなってからかなりの時間が経過しています。えりかちゃんは何処にいるのでしょうか? 無事なのでしょうかね?」
「銭湯乃湯船内モラスンさん、私はあらゆる情報を集めてみましたが、全くの手応え無しなんですよね。不確かな情報ばかりが届いています。私は毎日、情報収集を朝から晩まで集めた末に眩暈を発症しました。天井がグルグル回る回転性の眩暈を発症しました。メニエール病というヤツらしいです。ヤバイと思いながら情報収集を継続していたら、次は貧血になってしまって倒れる寸前でしたが、なおも、情報収集に明け暮れました。眩暈を発症して貧血を発症し、何故か分からないけど首のムチ打ちまで発症してしまったんですよ」
「あららら。マグナムマッサージ・歩菜美ちゃん、大変な事になってしまって。お気の毒様です」
「銭湯乃湯船内モラスンさん、私は昔から病に好かれるタチだから、病と上手く付き合うしかないと決心しているので、病にまみれたまま、今を生きるという案配で騙し騙し過ごしています」
「マグナムマッサージ・歩菜美ちゃん、病院に行っているんですか?」
「行っていません。ヘンドリモンドリが掛かるし、私は裕福ではないので。実は1週間前に、42℃の熱を出しながら、東区北方面ジャイジャイダンスの講座を無理して受講したんです。予約していたのでね。熱を下げる薬2錠、胃薬1錠、頭痛薬2錠を合わせ飲みまして無理して踊りました。当然、気分が悪くなってしまい、激しい動悸と寒気が襲い掛かりました。倒れそうで倒れないという状況で3時間も無理して踊りましたよ」
「マグナムマッサージ・歩菜美ちゃん、その後、緊急病院に行ったんですか?」
「銭湯乃湯船内モラスンさん、何度、私に言わせるつもりですか? ヘンドリモンドリが掛かるしよ、私は裕福ではないのだよ。家に戻って横になりました。倒れる前に、なんとか回復しましたが、今はえりかちゃんの情報収集の疲労で先ほども申し上げましたように、回転性の眩暈を発症、おそらく、メニエール病と貧血を発症してしまい、おまけに首のムチ打ちまで急に発症しちゃって凄く疲労困憊です。何故にムチ打ちまで発症したのかわからんのです。そんな私は無垢な乙女です。病にまみれた乙女でも嫁ぎたい。誰か嫁に貰ってくれないだろうかと毎日考えながらムラムラしています。変な意味でなくてね、ムラついちゃってます」
「そんな過酷な中で愛星・サマー・えりかちゃんの追跡をするマグナムマッサージ・歩菜美ちゃんに感服します!」
「ありがとう。手応えなしでやりきれないけどね。諦めないでいたら良い情報が入るかもと信じています」
「マグナムマッサージ・歩菜美ちゃん、今の所、愛星・サマー・えりかちゃんについて知っている情報を教えてくれませんか?」
「分かりました。その1。愛星・サマー・えりかちゃんは恋人の向かい風乘キャッツさんと駆け落ちして温かい惑星へバカンスに行ったという情報があります」
「えーっ! 恋人!? 向かい風乘キャッツって誰なのよ!? 許さん!! 愛星・サマー・えりかちゃんはデビューしたばかりのピチピチの絶世の美少女、美人、美女な女の子ですよ! 恋人なんて信じられない! 大宇宙のファンが、にわかファンも含めて、もうじき50億人達成間近とも言われているスーパースターの超トップアイドルなんですよ!」
「銭湯乃湯船内モラスンさん、落ち着いてね。その1ですから。私の情報は、その3まであるんです。では、その2。愛星・サマー・えりかちゃんはお爺様の介護を自ら買って出て、とある老人ホームで介護職をしているという情報を入手しました。お爺様の名前は愛星・剥製・厳我乱さん。677歳です。老人ホームは『逝かせてくれないホーム』と言いまして、入居したら、なかなかあちらからの御呼びがこない老人ホームなんですよ。上は1897歳、下は394歳までの老人が入居しています。最長700年も入居した方がいます」
「早い。介護が早い。677歳じゃ、全然まだまだ若い。大宇宙の宇宙人の平均寿命は1900歳ですよ。マグナムマッサージ・歩菜美ちゃん、この情報は怪しいですよ」
「私もそう思いましたが、お爺様は実際の方でした」
「マグナムマッサージ・歩菜美ちゃん、その3はなんですか?」
「銭湯乃湯船内モラスンさん、その3は、愛星・サマー・えりか誘拐疑惑なのです!」
「えーっ!! マジですか!? ここで、一旦、CMです。テレビラリン・チュラララリンのチャンニェルは、そのままにしてちょーだいな!」と銭湯乃湯船内モラスンは動揺したのか、違う撮影キャメリャ(久しぶりに説明しよう。『撮影キャメリャ』は撮影カメラそのものだ。早い説明だろう? にゃはははは)に向かって話した。
CMがあけた。
「マグナムマッサージ・歩菜美ちゃん、まさか、愛星・サマー・えりかちゃんは誘拐されたというんですか?」
「はい。追手から逃れた3人組の話を覚えていますか?」
「はい」
「一人は謎の男、二人は若い女性。3人組が体を寄せ合って空を飛び、何処かへ飛んで消えていったという目撃者が多数います。私は彼らの話を聞いて検証した結果、どうも若い二人の女性のうち一人は愛星・サマー・えりかちゃんではないかとみています。信憑性が高い情報です」
「なるほど。驚くべき話です」
「銭湯乃湯船内モラスンさん、実はですね、私の友達に14歳の女の子がいましてね、愛星・サマー・えりかちゃんのファンクラブで名誉ある、栄えある会員番号の持ち主なんですよ。私より、マニアックなファンでしてヤバイ奴なんです。ヤバイ奴だけども、私の親友なんです。その親友と何故か連絡が取れなくなっています。私は我慢強い女で、涙は見せないタイプなんですが、夜、月明かり(説明しよう。大宇宙では、月は2億個もあるのだい! にゃはははは!)に照らされて枕を濡らしてます。親友なら愛星・サマー・えりかちゃんの居場所について何か知っているかも、という淡い期待を抱いているのです。なんせヤバイ奴ですから」
「マグナムマッサージ・歩菜美ちゃん、その親友の名前は何と言うんですか? 番組内でお友達に呼び掛けてみませんか?」
「ダメです。親友の名前はプライバシーの侵害になるのでダメです」
「分かりました。では教えてくれた3つの情報のうち、最後の3つ目が1番信憑性が高いと考えていいのですね?」
「はい。その通りです。私はそう思います」
「分かりました。お時間が来てしまいました。引き続き20分後にも愛星・サマー・えりかちゃんの特集を生放送致します。もちのろん、ゲストはマグナムマッサージ・歩菜美ちゃんです。マグナムマッサージ・歩菜美ちゃん、20分後も、この『噂まみれ! ワレワレハ宇宙人じゃん』に来てくれるかな?」
「もちのろーん!!」
銭湯乃湯船内モラスンとマグナムマッサージ・歩菜美は固い握手を交わしてから撮影キャメリャに向かって手を振り続けた。
「この番組の提供は『たんぱく質の暴君』、『キチガイ婆の乱れっぷり会社』、『300時代会社』、『マイナス奥地』、『奥様腕組株式会社』、『急に芽生えた焼きもち』、『泣けない小娘の我が儘会社』、『やさぐれた野菜畑銀行』、『流感地帯の鼻だ外科』の提供でお送りしました」と年老いた老婆のナレーションがエンドロールに合わせて言った。
20分後。
特別緊急生放送、本番。
厳粛な顔をして黒いスーツを着た銭湯乃湯船内モラスンは撮影キャメリャの前に立っていた。
☆続いちゃう☆
マグナムマッサージ・歩菜美ちゃんの親友って、ひょっとしたら、椎名・ミッシェル・ローズ・ユズキちゃん???




