久しぶりに親子の会話
「皆、少し席を外す。俺は自分の部屋に戻る」とキャプテン・ミルクは携帯黒電話の電話口を押さえて足早に自分の部屋に戻った。
「お母さん、何?」
「メロンクリームソーダ、あんた、久しぶりだけど元気なの? ここ5、6年音信不通だけども。あんた今、何処にいるのよ?」
「久しぶりだね。ちょっと遠出しているよ」
「メロンクリームソーダ、お爺ちゃん、お婆ちゃんにも全然会ってないでしょう?」
「会ってない」
「なんで?」
「仕事で忙しいから」
「仕事で忙しいって言ったって連絡するくらいは出来るでしょうが」
「うん」
「お姉ちゃんにも全然連絡してないよね?」
「してない」
「なんで? お姉ちゃんにも連絡しないの?」
「仕事で忙しいんだって!」
「仕事仕事ってあんた仕事ばかりがLIFEなのかい?」
「いや」
「もっと大切な事があるでしょうが!」
「わかるよ、分かるけど宇宙の平和を守るのに休むなんて許されないんだよ!」
「まあ、そりゃそうだ」
「お母さん、用事ないなら切るよ」
「メロンクリームソーダ、テレビラリン電話にしてよん」
「なんで?」
「息子の顔が見たいから」
「めんどい」
「良いから見せてよん」
「めんどいって! 切るよ!」
「なんで切るのよ?」
「忙しいんだって!!」
「ちょっとちょっと、メロンクリームソーダ、愛星・サマー・えりかちゃんが行方知れずだけどもさ、何処に行ったのかね?」
「知らん」
「あのねメロンクリームソーダ、30光年離れた『銀風惑星』でね、土地のバーゲンセールがあるのよ」
「ふ~ん、もう切るよ!」
「話を聞きなさいよん」
「無駄話したくない!」
「でね、『銀風惑星』に土地を持とうかな~って思っちゃってる。別荘を作ろうかなーってな感じを抱きつつ」
「勝手にしなさいよ。切るよ!」
「なんで切るのよ?」
「うるさいんだって!!」
「メロンクリームソーダ、あんた、ちゃんと食べてるの?」
「食べてるよ」
「インスタントやお菓子とか簡単な物で済ませてないかい?」
「何食おうと俺の勝手だろう? うるさいんだよ!!」
「体調は何ともないのかい?」
「何ともないね。切るよ」
「あんた、ちょっと。この前さ、お母さんね、しゃがんだら腰を痛めてね、ぎっくり腰になり掛けたさ」
「で、ぎっくり腰にはなってないんでしょ?」
「なってないよ」
「もう切るよ!! ウザイ!!」
「ねぇ、テレビラリン電話にしてよ~ん」
「急に甘えるな! じゃあね」
「ちょっとちょっと、あんた、お母さんね、最近ね、犬飼おうかと思ってる。セントバーナードかダックスフンドか秋田犬」
「勝手に飼えば良いでしょう」
「ちょっとちょっと、あんた、お母さんね、少し太ってきたから、ベジタリアンになろうかと考えつつあるんだわ」
「勝手にベジタリアンになれば。本当にもう切るから」
「ちょっとちょっと、あんた。メロンクリームソーダがさ、昔、子供の頃に通っていた銭湯があったでしょう?」
「ああ、懐かしい。あったね」
「あの銭湯がね、実はね、驚かないでよ?」
「何よ?」
「スーパー銭湯になったんだよ。改築してね、パワーアップしたんだよ。5階建てのスーパー銭湯に生まれ変わったんだ」
「へぇ~」
「大人800ヘンドリモンドリ、子供200ヘンドリモンドリだよ」
「ふーん」
「お母さんね、本当はね、混浴温泉惑星で暮らしたいんだよね」
「初耳」
「混浴温泉惑星は自宅に温泉が出るんだよ。My温泉なんて夢だよね。混浴温泉惑星は源泉100%なんだよ」
「へぇ~」
「メロンクリームソーダよ、いつかさ、お母さんと一緒に混浴温泉惑星で暮らそうね~」
「いい加減に子離れしなさいよ!」
「分かっているけど子離れなんて幻想よ。どの親も自分の子供を優先にして生きているものなの。子供が生き甲斐」
「切りまーす」
「メロンクリームソーダよ、ちょっとちょっと、あのさ、お母さん、今日の晩御飯って焼き肉系にしようかなって思っちゃってるの。ジンギスカンって知ってる? ジャパンゴールデンウィークのデッカイドウが発祥地のジンギスカン。ガツンと肉を食らいたい今日この頃なんだわ」
「お母さん、さっきベジタリアンになるとか言ってたじゃない」
「言ってた。ベジタリアンになる予定に変更した」
「分かった。切るよ」
「ちょっとちょっと、あのさあのさ、明日、晴れるかな?」
「引き留めようとするな。切る」
「テレビラリン電話にしてよん」
「しない! 切る」
「食中毒警戒のニュースが流れているから気を付けて食べなさいよ」
「分かった分かった。じゃあね」
「メロンクリームソーダは、夢日記とか書いているの?」
「書いてないから。じゃあね」
「ちょっとちょっと、お母さんね、1週間前から夢日記を書き始めたのよん」
「あっそう。じゃあね、切るよー」
「『○月✕日 私はオシャレなBARで玉ねぎを丸かじりしていた。涙が滝のように流れて干からびた床に川が生まれた。マスターに「困ります」と怒られたけど、私は小躍りしてからスクワットをした。すると、見知らぬジェントルマンが現れて「美しい人よ、わての嫁になってけれ」と突然のプロポーズ。私は泣いた。好きでもない男からプロポーズされたことの罪によって私は泣いたのだった。私はプロポーズされた悲しみから川を渡る決意をした。岸の向こうで手招きしている多数の人を発見した。私は喜んで手招きしている人の元まで泳いだら「まだ早い」って見知らぬオッサンに言われて仕方なく引き返した。もしかして、あれって、もしや、三途の川かしら? 自らの涙で生んだ三途の川かしら? 三途の川って思ったより生温い。仕方なく私はボディビルダーになると宣言したら岸の向こうにいた、あの見知らぬオッサンに「まだ早い」って言われた。あのハゲ、私の気持ちを踏みにじりやがって』という夢を昨日見たのよ」
「長い! バイバイ、切るよ」
「夢日記の話を続けます」
「もうしなくていい! 切るよー、バイバイ」
「バイバ~イ。メロンクリームソーダよ、また電話するからね」
「はいはい、わかった、わかった」
キャプテン・ミルクは携帯黒電話を切ってソファーに座った。
「今のはなんの電話なの? めんどい」とキャプテン・ミルクは呟いた。
☆続いちゃう☆
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蒼井真ノ介




