カラワイフォニェーン
「ウイング子、頼む。トメさんを早く治療してくれ」キャプテン・ミルクはしゃがんでソファーで眠るトメさんの肩を優しくさすりながら言った。
「キャプテン・ミルク、分かりました。容体を見てみますね」青空ウイング子は金木トメの顔を覗き込んでから瞼を開けて瞳孔を確認し額に手を当て熱をみてから脈拍を測った。金木トメの後頭部に打撲の痕を見つけた青空ウイング子は「チッ」と舌打ちをした。
金木トメが意識の無い状態になってから「20分近くが経過している」とキャプテン・ミルクから告げられると青空ウイング子の表情が変わった。
「すみません皆さん、少し後ろに下がってくださいね」と青空ウイング子は言うと床に座って手を合わせた。目は半眼状態になり微睡みのある視線に見えていた。青空ウイング子は呼吸をリズミカルに繰り返して何かを囁く。青空ウイング子は、間違いなく、自ら、ある種のトランス状態へと没入していった。
『サフェルスティッグ、ジャズドゥランズ、カラワイフォニェーン、ギャスティルディバッグ、ギフォーム!! カラワイフォニェーン!! カラワイフォニェーン!! カラワイフォニェーン!!』と青空ウイング子は突き抜けるような声で魔法の言葉を唱えた。
音を出して窓が激しく揺れると、テーブルに置いてあったコッブが割れた。高い金属音が鼓膜に届くと皆一斉に両耳を押さえた。
青空ウイング子は「カラワイフォニェーン!! カラワイフォニェーン!! カラワイフォニェーン!!」と魔法の呪文を3回唱えてから金木トメの額に手を当てた。
窓の揺れが徐々に収まり、テーブルに置いてあった木っ端微塵のコップが元通りに修復されていた。
汗だくの青空ウイング子は金木トメから離れると、キャプテン・ミルクに頭を下げて洗面所へ向かった。
キャプテン・ミルクは黙って金木トメを見下ろした。
金木トメのまぶだが動いている。
「うっ、うー」と小さなうめき声がした。
小さく頭を左右に動かすと右手を開いたり閉じたりし出した。
まだ少し呼吸は弱いが安定を取り戻してきた。
「お婆ちゃん、お婆ちゃん、起きてよ、お婆ちゃん」とラベンダー遥ちゃんが金木トメの手を握り締めながら言うと泣き出してしまった。
「うぉ~ん、うぉ~ん。ぐすん、ぐすん」工藤・サンセット・まなみは泣いていた。畏敬の念を持って圧倒的な師匠の久方ぶりの丁寧で情熱的で集中力のある確実な仕事ぶりを見つめて、ただただ泣いていた。
「お婆ちゃん、お婆ちゃん!」ラベンダー遥ちゃんが泣きながら金木トメに覆い被さると金木トメは右手を出してラベンダー遥ちゃんの頭をゆっくりと撫で始めた。
「あー、お婆ちゃん、お婆ちゃん!!」目覚めた祖母の温もりを感じて喜びに震えるラベンダー遥ちゃんは涙を流しながら金木トメに抱きついた。
「遥、ここは何処だい? そちらにいる貴方たちは?」金木トメは上半身を起こすと自分を見ている多数の視線に戸惑っていた。
「やあ、トメさん。無事で良かった良かった」とキャプテン・ミルクは嬉しそうに言うと、左手で椅子を引き寄せて座り、全ての息を吐き出した。
「あ、あなたは?」トメは恐る恐るキャプテン・ミルクに言うとラベンダー遥ちゃんを抱っこした。
「俺はキャプテン・ミルクだ。先ほど、山奥でトメさんと遥ちゃんがバイブレータもっちゃんという馬鹿に襲われたのを助け出したんだ」
「そうですか。ありがとうございます。うっすらと思い出してきました」金木トメは頭を下げてお詫びをした。
「トメさん、2、3聞きたいことがある。今話せるかい?」
「大丈夫ですよ。何でも聞いてくださいな」
☆続いちゃう☆
青空ウイング子、凄すぎる!!