こんなの初めて
「お嬢ちゃん、大丈夫かい? お婆ちゃん、お婆ちゃん、ちょっと大丈夫ですか? お婆ちゃん、俺の声が聞こえますか?」ただならぬ様子を見てとったキャプテン・ミルクは赤い頭巾の女の子のおでこにサビオを貼って背中におんぶをすると、イビキをかきながら意識不明の重体で地面に倒れているモンペを履いたお婆ちゃんに何度も声を掛け続けた。
「お婆ちゃん! お婆ちゃん! え~ん、え~ん」赤い頭巾の女の子はキャプテン・ミルクの背中に強くしがみついて泣いていた。
キャプテン・ミルクは左腕1本でモンペを履いたお婆ちゃんの頭を支えて肩に担ぐと赤い頭巾を被った女の子に優しく声を掛けた。
「お嬢ちゃん、お嬢ちゃん。大丈夫でちゅよん。全然怖がることはないから安心して大丈夫でちゅよー。心配しないで良いでちゅからねぇ~。お嬢ちゃん? もう泣かないでね。ねっ。分かりまちたかぁ~?」キャプテン・ミルクは、普段から、あまり滅多に笑わない男なのだが女の子の不安を取り除くために必死になって愛想よく笑い掛けながら言った。
「う、うん」と女の子は言って涙を堪えて我慢した。
「お嬢ちゃん、今からでちゅね、お兄さんの泊まる旅館に行きまちゅからね。お兄さんの仲間にでちゅね、凄い魔法使いがいるから、お婆ちゃんを完璧に治しに行きまーす。お嬢ちゃん、わかりまちたか~?」と明るく振る舞うキャプテン・ミルクは満面の笑みを浮かべて体を揺らしながら女の子をおんぶした。
「う、うん。わかった」と女の子は真剣に頷いた。
「お嬢ちゃんのお名前は? お兄さんはね、キャプテン・ミルクだよ」
「わたしは遥です。ラベンダー遥です。きのう5才になったの」
「遥ちゃん、お婆ちゃんの名前は何でちゅか?」
「金木トメと言います。年は187歳です」
「遥ちゃんにトメさんね。よし、わかったよ~ん。遥ちゃん、今からちょっとね、ビューンとワープするからね、しっかりと掴まっててくだちゃいねっ!」とキャプテン・ミルクは言うと指を鳴らした。
キャプテン・ミルクの身体が一瞬光輝くと暗闇に吸い込まれる形でワープして消え去った。
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安らぎと癒しのゆきあかり@温泉旅館の1階とフロント周辺では、キャプテン・ミルクの部下、仲間たちが必死になって消臭魔法を編み出す為の議論に耽っていた。激しい論調もあれば時折軽口を叩く皮肉めいた会話が出たり、口論が続いたりと白熱した展開を帯びていた。
「ちょっと皆、静まれ! 消臭系の魔法を開発するのは前代未聞、初めての試みだ。1つ言えることはだ、勘違いだけはするなよ。ウンコに同情はするな。ウンコに対して非情になれ。排泄物に憎しみを持つな。生きるために排泄をする命の神秘に敬意を示せ。ウンコを排泄するから僕らは奇跡的に生きられるんだぞ。ウンコは何処までいってもウンコだ。ウンコの臭いを無臭化する魔法に必要なのは、ウンコに対して感情を持たず無になることが1番大切だ。淡々とした気持ちで己とウンコとの距離を保つんだ」と月山コリーは皆を鼓舞するように力を入れて話した。
「確かにそうだよな。ウンコに怒りを込めるのは失礼な話だよな。ウンコの臭いは人それぞれ。多種多様なウンコの臭いだけを焦点にしないとさ。間違いなくウンコをするから生きられるのだから。消臭剤っぽくする魔法が良いのかも」トムはやんわりとした口調で言うとソファーに座って鼻をかんだ。
「消臭化するには鼻周りにシールド系統の魔法を使うのが良いんじゃないのかな? まだイメージが出ないけど。鼻を守るには一体どうすれば?」とパステル純は新しいアイデアを思い付いて言ったが、それ以上は何も浮かばないでいた。
「結局さあ、鼻栓みたくカチッと固める魔法がいいんじゃないの?」青空ウイングス子にとっても初挑戦となる消臭系の魔法となれば確実にモノにしたいはずだ。
「ウンコの臭いだけを排除する特化した形での魔法を作りたい」とSugar桜子ちゃんは言って違和感ある鼻をかんだ。
「ウンコ以外に危険度の高い毒性タイプの臭いにも効果がある魔法を生み出したいんだ。無味無臭で命を落とす危険なガス等もあるからね。色んな可能性を考慮しようよ」とモモヒキ聡は賢明な意見を述べると一同は拍手をして大きく頷いた。
「皆さん、ここはシンプルに考えましょうよ。激臭を含めた危険な臭いから守るには全身を包み込む魔法がベストだと私は思います」と山胸豆子は言って鼻先に下がり落ちた黒ぶちメガネを直した。
「とりあえず、まだ漂うウンコ臭をどうにかしようよ。本当に臭いわ。本当にウンコは臭い」と曲がり角ぺぺは鼻を押さえて言ったので声が濁って聞こえた。
「僕はね、ファンタジードラゴン号にある研究施設内において直ぐに消臭メカの試作品を作ったらあっさりコレが出来たんだよ。『こんなの初めて』というネーミングのコンパクト消臭メカでいく。さあ皆、これを鼻の穴に挿入して」と天才・川本さすおは言うと皆に黄色い小さなカプセルを2個ずつ手渡した。
「何だか胃薬みたい」と椎名・ミッシェル・ローズ・ユズキは言って素直に鼻の穴にカプセルを挿入すると笑いながら跳び跳ねた。
「色味がウンコすぎるだろうがよ! 何かイヤだ」とモモヒキ聡は言って憮然とした。
「色はあえてカマしたのさ。ウンコをモチーフとした色を使えば新たに生まれる予定の他のカプセルと間違えずに鼻の穴に挿入出来るだろう?」と川本さすおは茶目っ気のあるおどけた口調で話した。
「そうだな。これだけウンコ色なら間違えずに済む」と月山コリーは前向きに言って鼻の穴に挿入すると残りの皆も一斉に挿入し出した。
「あっ! スゴい! ウンコの臭いが消えた!! ウンコの臭いが、マジでウンコの臭いが!!」とトムが叫んだ。
「本当だ。ウンコの臭いが、めちゃめちゃウンコの香りが消え去った!」と曲がり角ペペは驚きを持って川本さすおを見つめた。
「鼻栓だけど鼻呼吸が出来る勝れものだ。だが残念な事に、消臭の有効時間はわずか20分だ。試作品だから堪忍して」と川本さすおは手を合わせて詫びを言うと自分の鼻の穴にもカプセルを挿入した。
突然1階が揺れ出した。
皆は止まって天井にある備え付けの電灯を見上げると、電灯に長く結んで垂れ下がっているビニールの紐をじっと見つめた。ビニールの紐は揺れていた。
「震度3か4だね。ちょっと揺れたよね」と工藤・サンセット・まなみは師匠の青空ウイング子に言った。
床から空気が舞い上がるとキャプテン・ミルクと金木トメとラベンダー遥ちゃんがフロントに現れた。
「キャプテン・ミルク!!」皆は鼻声で嬉しそうに言うとダッシュしてキャプテン・ミルクに駆け寄った。
「キャプテン・ミルク、そのお婆ちゃんと女の子は誰ですか?」キャプテン・ミルクの右腕的存在、月山コリーはラベンダー遥ちゃんの頭を撫でながら言うと、金木トメを抱き抱えてソファーに横たわらせた。
「金木トメさんにラベンダー遥ちゃんだ。その前に、臭さっ! スゴいウンコ臭い! はぁー。まったく。モモヒキ聡か! モモヒキ、またウンコを漏らしたのか? 今は危機的で緊急事態なのにだ、何故ウンコ漏らしたんだよ? モモヒキよ、なんでいつもウンコを漏らしてからトイレに行くんだ?」キャプテン・ミルクは何度もウンコを漏らしてきたモモヒキ聡を不憫だとは思うが、今回に限っては悲しい思いでモモヒキ聡を諭すように叱責した。
「キャ、キャプテン・ミルク、僕はウンコを漏らしてはいません! 本当です。今の僕は成長していて、ウンコを漏らさないように、毎日、大人用のおむつを装着しています。本当にウンコに誓ってウンコは漏らしていません!」モモヒキ聡は潔白を訴えた。モモヒキ聡は、長年、お腹が弱くてウンコを漏らし続けてきたが、モモヒキ聡は成長した自分をキャプテン・ミルクに見せて褒めてもらいたかったのです。その為に自ら大人用のおむつを買いだめして自分らしくあろうとしていたのです。
「わかった。その努力を認める。信じよう。ということは、このウンコ臭はウンコ爆弾関連なんだな」とキャプテン・ミルクは言って窓を開けて駐車場を見て見たが「ぐわっ!! ダメだわ!! めちゃくちゃウンコ臭いわ!! マジでこればっかりはダメだわ!! 夜中にウンコ臭いのだけはダメだわ!! ウンコウンコってウンコを真剣に連呼する小説や芸術は大宇宙でもコレだけだわ!!」とキャプテン・ミルクは喘ぐ様に叫ぶと直ぐに窓を閉めきった。
☆続いちゃう☆
ウンコは健康のバロメーター。お腹に優しい物を食べて健康になりましょう✨




