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森のパスタ屋さん外伝  作者: おあしす
3/6

3話 列車とヴァイスリッターとカード

夢の中。どこかの戦闘。終わる。

涼介「終わり、っと。」

こじ「結構てこずったな。」

涼介「強盗暗殺集団、か。もうこりごりだな。」

ゲン「そう言うな。最近はこんな依頼ばっかりだぞ。」

涼介「…疲れたぁ。」

こじ「ん…?ドア?やけに頑丈だな…」

涼介「小次郎?何か見つけたのか?」

ゲン「もしかしてお宝か?」

こじ「いや、開けてみないと。…カギがかかってる。」

涼介「どれ。」

涼介、トレース。カギを絵に書いて小次郎に見せる。

涼介「この形で開くはず。」

小次郎、作る。がちゃ。

こじ「開いた。」

ゲン「…暗いな。」

涼介「ん?誰かいるな。」

こじ「ホントだ。…女の子?」

瑠璃、真ん中でシーツにくるまっている。

こじ「お前の名前は?」

瑠璃「…るり。」

涼介「年は?」

瑠璃「13。」

こじ「ここで何してる?」

瑠璃「捕まってる。能力を使うために。」

ゲン「お前さんの能力は?」

瑠璃「能力を与える能力。」

涼介「げ…そんなの反則みたいなもんじゃないか。」

こじ「親は?」

瑠璃「いない。」

こじ「いくあては?」

瑠璃「今はここ以外どこにもない。」

こじ「…涼介。」

涼介「何だ?」

こじ「この子、連れて帰ろう。」

瑠璃「…えっ?」

涼介「ええっ?でも、うちにはさくらがいるし、お前もいるし…オヤジたちは…そんなに帰ってこないからいいけど…」

こじ「頼む。」

涼介「…どうしたんだ?随分と親身だな。」

こじ「ん~。なんか、ほっとけなくて。能力、似てるし…」

瑠璃「似てる?」

こじ「あぁ。君のは力を生み与える。俺はモノを生み出す。」

涼介「…こじつけじゃん。」

ゲン「さらに言うと弾薬が作れない欠陥品だがな。」

こじ「う、うるさいなぁ。仕方ないだろ?作れないんだから。」

瑠璃「…作れないの?」

こじ「あ、あぁ。」

瑠璃の指先が光って小次郎に向けられる。ぴかー。

こじ「…な、なにをした?」

瑠璃「作ってみて。銃の弾。」

こじ「…ま、さか。」

小次郎、作ってみる。それらしきものが出来上がる。

こじ「…撃ってみて。」

ゲンに渡す。撃つ。どきゅぅん。

ゲン「…問題ない。完璧。」

こじ「…」

瑠璃「これで欠陥品って言われない。」

涼介「…よし。小次郎。」

こじ「な、何?」

涼介「彼女、連れて行こう。」

こじ「ど、どうしたんだよ急に。ま、まさかお前も何かつけてもうらおうと…」

涼介「ん~。それもありがたいけど、彼女は危険だ。」

こじ「危険?」

涼介「バカかお前は。どんな力でも付加できるなんて世界中の賞金首が狙ってくる。」

こじ「あ…」

涼介「それに、かなり可愛い子じゃないか。何か、お前にはなついてるし。」

こじ「む…」

涼介「今までの人生ずっと軟禁されてたみたいじゃないか。」

瑠璃「…」

涼介「日の当たる場所に連れて行ってやれよ。それくらいのお礼はしなきゃな。」

こじ「…あぁ、そうだな。」

瑠璃「…?」

ゲン「話がまとまったんなら帰るぞ。」

こじ「さぁ、行こう。」

瑠璃「…?どこへ?また私閉じ込められるの?」

こじ「そんな事はしないよ。」

瑠璃「じゃあ、どうするの?」

こじ「ん~。とりあえず外に出ない?空気がうまいぜ?」

瑠璃「うん。」

4人、外に出る。

涼介「あぁ~。疲れたぁ~。」

ゲン「さて、帰りのトレーラーの運転は…」

こじ「恒例のジャンケンですな。」

3人「じゃ~んけ~ん…ぽん!」

涼介、ゲン「…勝ったぁっ!」

こじ「く、くそう…俺か。」

瑠璃「…?」

涼介「じゃ、俺後ろで寝るわ。」

ゲン「俺も寝る。着いたら起こせよ。」

こじ「な…」

涼介、ゲン「じゃ、おやすみ~。」

こじ「く、くそう…」

瑠璃「…くすっ。」

こじ「…む。笑ったな。」

瑠璃「くすくす。」

こじ「だぁ~っ!!笑うなよぉ…みじめじゃないか。」

瑠璃「ふふっ。いつもじゃんけん?」

こじ「そうだよ。帰りはいつも俺。なんでだろ…」

瑠璃「ふ~ん。」

こじ「あ、そういや名前いってなかったな。俺は…小次郎だ。」

瑠璃「こじろう…。」

こじ「で、黒いのが涼介だ。」

瑠璃「おじいさんは?」

こじ「あれはゲンじぃってんだ。」

瑠璃「あなたは小次郎。」

こじ「あなたなんて言われると背中がかゆ~くなるな。」

瑠璃「おじいさんがゲンじぃ。」

こじ「あぁ、そうだ。」

瑠璃「で、黒い王子様が涼介。」

こじ「ぶはははは!黒い王子様か!うまい事言うなぁ!」

瑠璃「ふふっ。でも、私の王子さまは小次郎だね。」

こじ「お、おいおい…突然何を言い出すんだ?」

瑠璃「違うの?閉じ込められてたお姫さまを助け出すのって王子さまじゃないの?私は今はお姫さまじゃないけど…」

こじ「む…まぁ、そういう意味では違わないか。」

瑠璃「じゃあ、小次郎は私の王子さま。」

こじ「背中がかゆい…まぁ、そういう事にしておくか。」


小次郎、目がさめる。

こじ「…はぁ。」

起きる。

こじ「出会い、か。思えばそんな出会いだったな。」

カーテン開ける。

こじ「私はお姫さまじゃない、か。よく言うぜ。ホントに王女だったくぜに。」




庭。はるか、特訓中。

はる「ん~。こう斬って、こう斬って、こう。う~ん…何か違うような。」

はる「う~。でも、ココをこうしたら…ぬぬぬ…」

はる「そうだっ!翼の力と遠心力を使ったら…」

練習。ふっとびそうになる。

はる「わっ!…難しいなぁ。」

こじ「はるか?何やってるんだ?」

はる「えっ?特訓。」

こじ「何の?」

はる「最近、相手がやけに固かったり素早かったから、そういうのへの対処というか。」

こじ「なるほどなぁ。」

はる「それに、翼の種類も増やしたいし…」

こじ「翼の種類?今、何種類ぐらいあるんだ?」

はる「え~っと、天使、コウモリ、イーグル、マンタ、ドラゴン、マルドゥーク…かな。」

こじ「…な、何だ、その、ま、まるどぅーく?、ってのは?」

はる「天使の翼4枚バージョン。」

マルドゥークを発動。

こじ「何というか、御大層な翼だな。」

はる「見た目とかは結構カッコイイんだけど、クセが強くて。」

こじ「クセ?」

はる「うん。思いっきり剣を振ると何故か衝撃波が出るんだけど、疲れちゃう。1回が限界かな。」

こじ「一度だけ、か。使うタイミングが難しいな。」

はる「それにコレ使うと私しばらく疲労で動けなくなっちゃうよ。どんなに元気でも。」

こじ「諸刃の剣だなぁオイ。」

翼をしまう。

はる「うん。…ふぅ。で、実は翼は7種類あるんだけど、あとひとつ分からないの。」

こじ「7つ?いや、そもそも何で7種類って分かるんだ?」

はる「だってホラ、見て。」

はるか、天使の翼を展開。

はる「翼を生やすと、背中が光るんだけど、他にも太ももに何か文字が出るの。スパッツでほとんど隠れるけど」

はるか、スパッツをちょっとめくりあげる。

こじ「ん~?読みにくい文字だな。…天、闇、鷹、海、竜、神、翼、か?。」

はる「うん。使える翼の文字は赤く光ってて、まだなのは青く光るの。」

こじ「ってことは、まだ翼、って種類は覚えてないのか。」

はる「うん。海と神には苦労したけど、コレばっかりはわかんなくて…」

こじ「う~む…何だろ?新しく覚える時は何か変化とかあるのか?」

はる「うん。イメージして当たりだと文字がドン、って前に出て背中が光るの。」

こじ「じゃあ、手当りしだいにイメージするのが早いな。」

はる「でも、さくらと兄さんとで思い付く限りやってみたけど全部はずれだったし…」

こじ「まぁ、翼と言われてもピンと来ないな。新しいのを探すよりマルドゥークの持続時間を伸ばす方がいいんじゃ?」

はる「最初はそう思ってやってたんだけど、どうもコレは一日1回が限度みたい。どんなにがんばっても一度振ると翼を維持するだけで限界。歩くのも無理だもん。」

こじ「そうか。なら戦闘では一番安定している天使かコウモリを使うほうがいいな。」

はる「うん。」

こじ「じゃあ、純粋に強くならなきゃいけないな。」

はる「だーかーらーそのための特訓でしょうが。」

こじ「う~ん。新しい剣でも使ってみるか?」

はる「それいいかも。使ってみようかな。」

こじ「今までは日本刀だったな。う~んと長いのとか使ってみるか?」

はる「佐々木小次郎みたいなの?長けりゃいいってモンじゃないと思うよ。」

こじ「う~ん…長過ぎてジャマだな。」

はる「でしょ。」

こじ「じゃあ…西洋で使われてる両刃の剣は?」

はる「う~ん。使ってみないと分からない。」

こじ「使ってみろよ。…ホラ。」

作る。

はる「重いね、割と。」

こじ「まぁ、斬るというより叩くのがメインというか。」

はる「悪くないけど、今度は逆に短いかな。」

こじ「長さならどうにかなる。…ホラ、ちょっと長めのやつ。」

はる「うん、このくらいがいい感じ。両手で持つから柄を長めにしてよ。」

こじ「…こんなもんか?」

はる「うん、ピッタリ。」

こじ「他にも種類はあるんだが、それでいいのか?」

はる「他って?例えばエクスカリバーとかシグムンドとかバルムンクとか?」

こじ「…何だ、それ?」

はる「何って。神話の世界の刀剣だよ。」

こじ「…お前、なんでそんなの知ってんだ?エクスカリバー以外聞いた事ないぞ。」

はる「小次郎なら作れるかな~、って勉強してみた。」

こじ「無茶言うな。俺は実在するモノしか作れない。そんな神話の武器なんか作れるか!」

はる「そっか~。残念。」

こじ「まぁ、斬馬刀くらいならできなくもないが。」

はる「大き過ぎだよ。重そうだし、振れないよ。」

こじ「うむ。全くだ。というわけでコイツで我慢しなさい。…お。そうだ。」

はる「?何か思い付いたの?」

こじ「あぁ。重いなら、刃の部分を全部ダイヤモンドにしたらどうかなぁ~って。ちょっと反則かもしれないが」

作る。

はる「うん!これならいける!何でもっと早く作らないのよ!」

こじ「まぁ、割れそうだからもう一本鋼のを作ればいいか。コレで何とか戦力は上がるな。」

遠くから涼介が呼ぶ。

涼介「おぉ~い、2人とも。メシだぞ~。」

はる「はぁ~い。」


メシ。もきゅもきゅ食う。

涼介「そういや、手紙が来てたぞ。」

こじ「誰に?」

涼介「お前に。ホラ。」

こじ「…こりゃあ依頼だな。」

はる「最近、多いね。」

こじ「いいことだ。場所は…うげっ、ちょっと遠いな。」

涼介「どこだ?」

こじ「ほっかいどう、でっかいどう。」

はる「…そのギャグはさておき、遠いね。」

こじ「うぅ。渾身のギャグを流された…。これは泊まり込みになるな。」

手紙を読む。よむ。よむぅぅぅぅぅ。

こじ「依頼内容は…列車強盗団の鎮圧及び組織の解体、か。面倒だな。」

涼介「俺も行こうか?」

こじ「いや、たまには年寄りを連れて行く。」

涼介「いつ行くんだ?」

こじ「まぁ、普通に泊まり込みになるから…丁度はるかも夏休みだし、来週には。」

涼介「ん。その時は店も休みにするよ。」

こじ「なんで?」

涼介「なんで、って…さくらと2人で店が回るわけがなかろう。」

こじ「…バイトは?」

涼介「みんな休みだって。合宿とか、実習とかだと。」

こじ「みんなそれぞれ忙しい、と。」

涼介「たまにはいいだろ。店も夏休み、ってことで。」

こじ「お前がそういうならいいけど。んじゃ、ちょっくらいってくる。」

涼介「ゲンじぃの所か?」

こじ「あぁ。ちょっと調べてもらいたい事もあるし。」


ゲンじぃの店。

こじ「…たのもう!」

ゲン「…何をだ?バイクか?クルマか?うちにはメシはねぇぞ。」

こじ「みんな冷たい…」

ゲン「あ~あ~。わかった、わかった。だから地面に『の』の字を書くな。」

こじ「いいもん。どうせみんな…」

ゲン「…何かキャラ変わってないか?で、今日は何の用だ?」

こじ「あ、あぁ。こんな手紙が来た。」

ゲン「んん~?…依頼だな。列車強盗…か。ふんふん。」

こじ「何か情報とかない?何人いる、とか、根城はここ、とか。」

ゲン「ん~。調べてみんと分からんが。…ん?…狼の紋章?まさか…」

こじ「何か知ってるのか?」

ゲン「…小次郎。行くなら俺も行く。いや、行かにゃならねぇ。」

こじ「?まぁ、元々連れて行くつもりだったけど。」

ゲン「そうか。なら問題ねぇな。俺も行く。で、だ。小次郎。ちょっとばかし話がある。奥へ来い。」

こじ「何だよ?改まって。」

奥へ移動。

ゲン「話というのは、お前の両親の話だ。」

こじ「?父さんの話?」

ゲン「あぁ。お前の両親はハンターで、賞金首との戦闘で死亡した、ってなってるな。」

こじ「あ、あぁ。その賞金首は他のハンターが退治したから仇はとれないんだけど…」

ゲン「いや、アレは嘘なんだ。」

こじ「…は?ど、どういう事だよ?」

ゲン「お前の父親の武蔵、母親の葵。確かに2人は賞金首との戦闘をしていた。」

こじ「…それで?父さんたちは強かったのか?俺は2人の能力とか全く知らないぞ。」

ゲン「知らなかったのか。武蔵は炎を操る能力、葵は水を操る能力だ。」

こじ「な、なんだそれ?どこぞの魔法使いみたいじゃないか!」

ゲン「俺からすりゃあお前のほうがよっぽど魔法使いだと思うがな。」

こじ「それで?強かったのか?父さんは?」

ゲン「強いとかいう次元じゃない。あいつらは反則だ。格闘する武蔵と援護する葵。どうあがいても7mまで近付くのが限界だ。それ以上は何もさせてもらえなかった。」

こじ「そ、そんなにだったのか?全然知らなかった。でも、そんなに強かったのなら何で?」

ゲン「邪魔が入ったんだよ。別の賞金首が乱入してきたんだ。2人組で。」

こじ「別の?2人?」

ゲン「あぁ。1人はすぐに帰った。が、もう1人がとんでもないヤツだった。」

こじ「…」

ゲン「そいつは能力を使い、お前の両親を文字どおり消したんだ。」

こじ「…は?」

ゲン「だから。消したんだよ。どんな能力かは分からんが跡形もなく。」

こじ「そいつの能力は純粋に相手を消す、ってのか?」

ゲン「恐らくそうだ。俺もその現場にいたが、ホントに光になって消えちまった。」

こじ「…それこそ反則じゃないか。」

ゲン「まぁな。で、だ。その時武蔵たちが最初に闘ってた賞金首のトレードマークがこの…」

こじ「この狼の紋章だ、ってのか?」

ゲン「そうだ。ヴァイスリッターという組織の紋章だ。」

こじ「また物騒な名前だな。」

ゲン「まぁ、名前なんてどうでもいいじゃねぇか。ただ、問題というか真相というか…」

こじ「父さんたちと闘った賞金首は出てこないだろうが、どうなったか知ってるヤツがいるかもしれない、ってわけか。」

ゲン「そういうこった。」

こじ「じゃ、そいつらから父さんの事も聞き出すか。あ、そうだ。調べて欲しい事があるんだけど。」

ゲン「何だ?」

こじ「実は、この間のブルドーザーなんだけど。制御CPUにペンダントがかけてあったんだ。」

ゲン「で?」

こじ「暴走を止めて調べてたらペンダントごと消えて無くなったんだ。」

ゲン「ほぅ。」

こじ「もしかしたらペンダントに何か力を込める能力のあるやつのしわざなんじゃないかな、と思って。」

ゲン「ん~。」

こじ「それに、似てたんだ。瑠璃と同じ消え方をしたんだ。もしかしたら、と思って。」

ゲン「わかった。他のハンターオフィスに連絡して聞いておいてやる。今月中には出るだろう。」

こじ「助かる。んじゃ、今日の用はこれだけだ。」

ゲン「で、この依頼、いつ行くんだ?」

こじ「来週あたり。」

ゲン「おう。じゃあな。」


セミが鳴く。みーんみーん。空港。

こじ「んじゃ、ちょっと行ってくる。」

涼介「あぁ。気をつけろよ。はるかを頼む。」

こじ「まかせろ。」

はる「さくら、兄さんとふたりっきりなんだ。いいなぁー。」

くら「いいでしょ。いーっぱい甘えるもん。何してもらおうかなぁ…」

はる「ちぇっ。いいなぁ。」

くら「ふふっ。おみやげよろしくね。」

はる「はぁーい。まっかせなさい。」


ゲン「涼介。」


涼介「ん?何?」


ゲン「帰ったらすぐに次のハントの準備をしておいてくれ。」


涼介「?なんで?」


ゲン「俺の勘が正しければ、戻ってすぐに次に出かける。」


涼介「まぁ、いいけど。相手は?」


ゲン「人間だと思う。まぁ、ひととおりやっといてくれ。」


涼介「わかった。」

こじ「おーい、置いていくぞー。」

ゲン「やれやれ…んじゃ、行ってくる。」

はる「兄さん、いってきます。」

涼介「あぁ。気をつけろよ。」

はる「うん!」

こじ「みやげはカニだぞぉー。」

涼介「はいはい。」

飛行機、飛ぶ。

涼介「どうやら、本丸が近いみたいだな。」

くら「?」

涼介「なんでもないよ。さ、帰ろう。」

くら「うん。」



目的地に到着。

こじ「さて。まずは宿へ行くか。」

はる「うん。」

ゲン「強盗団はいつ現れるか分からんから、今日はゆっくり休むか。」

こじ「お、温泉があるじゃねぇか。」

はる「やった。早く行こう。」

こじ「わかった、わかった。」


宿へ到着。ガラガラ、とドアを引く。


ゲン「んじゃ、チェックインしてくる。」


こじ「あ、涼介に電話してくる。」


はる「うん。」


ゲン「ほい。カギ。はるかは個室だ。」


はる「やった。おーんせーん。じゃ、明日~。」


鼻歌歌いながらスキップで移動。


ゲン「やれやれ。まだまだガキだな。」


温泉。かぽーん。

はる「うわぁ。ひろいなぁ。」

ちゃぽん。つかる。

はる「誰もいないんだ。貸しきりみたい。ラッキー。これなら泳いでもバレないよね。」

泳ぐ。

部屋。男は黙って将棋の世界。

こじ「ん~。王手。」

ゲン「甘いわ。ふん。」

こじ「うぬう。なら、こうだ!」

ゲン「ほう、ならコレならどうする?」

こじ「わっ、ちょ、ちょ、ま、まってまって!」

ゲン「だめだ。もう待ったはナシ。」

こじ「ふぬぬぬぬぬ…なら、こうだっ!」

ゲン「苦し紛れよのぅ。ホレ、王手。詰みだな。」

こじ「えっ?…く、くそう…」

ゲン「じゃ、約束通り今度店を手伝えよ。」

こじ「くそう…今度は碁で勝負だっ!」

ゲン「いいだろう。じゃ、今度負けたら涼介も連れてこいよ。」

こじ「いいぜ。勝ちゃあいいんだ。」

ぱちぱちぱち。


次の日-

はる「あぁ~。よく寝た。…って2人とも、何してたの?」

こじ「お、男と…」

ゲン「漢の勝負だ…」

はる「はぁ…」

こじ「少し眠いが仕方がない。犯行の多い列車に乗るぞ。」

ゲン「あぁ。」

はる「よっし。」

駅-

がたんがたん。

夜-

こじ「今日は出なかったな。」

はる「そうだね。」

ゲン「ま、近いうちに出るだろう。」

翌日-

がたんがたん。

こじ「で、だ。具体的にどんな手法で来るんだ?」

ゲン「オーソドックスなやつだよ。一斉に押さえるってやつだ。」

こじ「割とシンプルだな。問題は乗客に被害が出ないようにする事だが…」

はる「どうするの?二階に座席のある所もあるし、せめて対策を練ろうよ。」

こじ「そうだな。基本的に俺は下。お前はゲンじぃと上だ。」

はる「それはいいけど、1人で大丈夫なの?」

こじ「何とかなるさ。」

ゲン「それならコレを使え。」

バッグから怪しい靴と箱を取り出す。

こじ「何だコレ?」

ゲン「空中移動用のスラスター。靴を履いてこの箱みたいなのを腰につけるんだ。」

こじ「腰?なんで?」

ゲン「足のバーニアだけだと姿勢制御できんぞ。そのための腰のバーニアだ。」

こじ「あぁ、なるほどね。で、使い方は?」

ゲン「このボタンを押すと飛ぶ。止めるのも同じボタンだ。後は体で覚えろ。ヒントは戦闘機だ。」

こじ「…せめて昨日の夜に渡してくれ。練習できたのに。」


悲鳴があがる。きゃぁ。

こじ「どうやら仕事みたいだ。」

ゲン「あぁ。んじゃ、頑張れよ。」

はる「小次郎、剣ちょうだい。」

こじ「あぁ。よ…っと。3本あれば足りるか。ホラ。」


はる「うん。じゃ、後で。」

はる、ゲン、2階へ行く。

強盗、現れる。

キン「オラオラ!動くんじゃねぇ!金目のモノを出しな!」

スペ「死にたくなかったら、おとなしく座ってな。」

強盗、金目のモノを集めていく。

こじ「待ちな。コレ以上はやらせねぇぜ。」

キン「何だテメェは?」

スペ「ハンター、か。」

こじ「あぁ。悪いがここで狩らせてもらう。覚悟しな。」

キング、懐からヌンチャクを取り出す。

キン「へっ!やれるモンならやってみな!」

スペ「やれやれ。面倒だな~。」

こじ「精製ッ!」

小次郎、グロックを作りマガジンを差し込む。

キン「んなっ!」

スペ「そ、それは反則でしょ~。」

こじ「さて、お縄につくか天寿を全うするか。好きな方を選びな。」

キン「どっちも選ばねぇよ!行くぜ!」

ヌンチャクを振るう。

こじ「お、っと。…あら?服が切れてる。カマイタチ、か。厄介だな。」

キン「おうよ!切り刻んでやらぁ!」

小次郎、避けながら2、3発撃つ。乗客から悲鳴が上がる。

こじ「ちっ!乗客に当たっちまうか。」

スペ「おやおや、優しいんですね。」

キン「んじゃ、その優しさにつけこみますか!オラァ!」

小次郎、避けるばかり。

こじ「くそっ!今回は銃はナシだっ!」

片手剣を作る。

こじ「確か、このボタンだったな!」

ボタンを押す。スラスター起動、バヒュッ!と前に飛ぶ。

キン「な、なに!?」

こじ「くっ!このぉぉっ!!」

すれ違い様にキングを切る。

キン「がはっ!…くそっ!」

こじ「遅い!」

キングが振り向こうとした時に剣を投げる。さくっと刺さる。

キン「ごはっ!」

キング、倒れる。スペイドを見る。

こじ「さて、次はお前の番だ。」

スペ「ん~。困ったな。まだ死にたくはないし…仕方ない、ちょっと頑張ろうか。」

ポケットからコインを取り出す。

スペ「いきますよ。」

一枚投げる。

こじ「なんだ?」

小次郎、避ける。

スペ「ふん!」

投げたコインが分割されて死角から飛んでくる。ゴン!と当たる。

こじ「いってぇ~!なんだ?どうなってるんだ?」

スペ「私は投げた物を途中で分割できるんですよ。だから…そりゃっ!」

6枚投げる。すぐに分割。散弾銃のように破片が飛ぶ。

こじ「うわわわっ!」

座席の後ろに隠れる。

スペ「どうです?今はコインですが、次から刃物でいきますよ。」

こじ「…まいったなぁ。ちょっと古風だけど盾でも作るか。」

スペ「出てこないのですか?ここからでも狙えますよ?ホラ!」

コインを投げる。

こじ「ちっ!調子に乗るなぁぁぁっ!」

突撃していく小次郎。それに向かってナイフを投げる。

スペ「もらった。」

こじ「甘いわ!」

作った盾で全部防ぐ。

スペ「な…」

こじ「終わりだっ!」

小次郎、蹴り飛ばす。

スペ「ごはっ。…ま、まいった。」

こじ「ふぅ。んじゃ、拘束させてもらうぜ。」

縄を作る。

スペ「それには及ばない。…見ろ。」

キングの方を指差す。キングの体が光ってカードになる。

こじ「な、なんだ?どうなってやがる?」

スペ「アイツは召喚された人間だ。当然、俺もだ。だから…」

スペイドの体が光って消えていく。

スペ「用済みになるとこうして消えていくのさ。じゃあな。」

完全に消える。カードが出る。

こじ「カード?どうやら黒幕がいるみたいだな。」

こじ「さて、この最後尾を安全車にするか。おーい、皆さん、ちょっとお願いが…」


はるるんサイド。

はる「2階に来たけど…」

ゲン「既に回収された後、って感じだな。」

はる「うん。」

奥から人陰。

電波「あ~っ!まだ元気なのがいる~!」

ジャ「おぅ。そうみたいだな。」

はる「な、なにあれ?」

ゲン「どうやらアレが犯人みたいだな。」

電波「んふ。それじゃあ、わたしの歌をきけぇぇぇぇぇっっ!!」

電波、毒電波を発信。

ゲン「な、なんじゃ?」

はる「あ、アタマが痛い。割れるぅぅぅぅぅ。。。」

電波「あっはっは~。そーれそのまま気絶しちゃいなさ~い!」

ゲン「ちっ!そのギターが発信源かっ!」

銃でギターのネックを打ち落とす。

電波「あっ!ギターが…」

はる「あっ。止まった。」

ゲン「終わりだ。」

容赦なく一撃で電波をしとめる。

ジャ「なっ!い、一瞬で?」

はる「でやぁっ!」

走って斬り掛かる。ジャック後ろへ逃げる。銃を取り出す。

ジャ「くそっ!くらえっ!」

2発撃つ。はるか、飛び退く。

はる「至近距離なら当たらないよ!」

ジャ「甘い!」

撃った弾丸の軌道を変化させ、はるかの髪の毛をかすめる。

はる「た、弾が曲がる?」

ジャ「そう、俺の能力は飛び道具の軌道変化。どこにいても狙えるぜ。覚悟はいいな。」

ゲン「おもしれぇじゃねえか。おい、俺と勝負だ!」

はる「いいっ?」

ジャ「よかろう。さぁ、来い!」

はるか、ゲンの後ろへ行く。ジャック、ゲンは座席に隠れる。

ゲン「さて、と。どう動いてくるか。」

ジャ「来ないのか?ならこちらから行くぞ!」

天井に向かって撃ち、軌道変化で正面に飛ばす。

ゲン「ちっ!厄介な銃だぜ!」

ジャ「そらそら!どうした?勝負にならんではないか!」

ゲン「どうかな?全く見当違いの所に撃ってるぜ?確認してみな」

ジャ「なに?」

ジャック、アタマを出す。

ジャ「ならこれでどうだ!」

顔を出した状態で狙う。

はる「あ、顔出てる。」

ゲン「かかった。はるか、鏡持ってるか?」

はる「えっ?う、うん。あるけど。」

ゲン「よし。ちょっと貸せ。」

鏡でジャックの位置をさぐる。

ジャ「どうした?まさか流れ弾にでも当たったか?」

ゲン「ぬかせ。…よし。」

鏡を返す。

ゲン「仕留める前に聞いておこう。お前の名前は?」

ジャ「我が名はジャック。だが為留められるのは貴様だ。」

ゲン「どうかな。…ふん!」

銃口だけを向けて一気に打ち抜く。命中。

ジャ「な、そ、そんな。」

ゲン「踏んでる場数が違うな。絶対ガンナーは姿を見せないのが鉄則だ。」

ジャ「ちっ。ドジったぜ。」

はる「やった!」

仕留めた2人に近寄る。

ゲン「…ん?」

はる「あっ。消えていく。」

消える。カードが残る。

ゲン「カード、か。」

はる「知ってるの?」

ゲン「噂だけの存在だが、もしいるんなら先月付けで5000万の賞金首だ。」

はる「ひ、ひぃー…じゃ、じゃあ…」

ゲン「あぁ。エライ事になるかもな。さぁ、グズグズしてねぇで行くぞ!」

はる「う、うん。」


小次郎サイド

こじ「さて、次の車両は…」

弁慶「がははははっ!待っていたぞ!!」

こじ「えっ?」

弁慶「いざ、尋常に 勝負ッ!」

こじ「ま、待て待て!」

弁慶「問答無用ッ!覚悟ッ!」

弁慶、暴れる。

こじ「うわわわっ!何なんだよ、一体!」

弁慶「がはははっ!」

こじ「うっとおしいなぁ。…そりゃっ!フライパンだっ!」

小次郎、フライパンを作って投げる。命中。

弁慶「あたっ!何を、こしゃくな!!」

こじ「んじゃ次はコレだっ!椅子っ」

弁慶「あいたっ!何をっ!回転っ!!」

弁慶、グルグル回る。

こじ「な、なんじゃそりゃ?目、回って自爆するだけじゃん?」

弁慶「はっはっは。ワレは絶対に目を回さぬ!端に追い込んでミンチにしてくれようぞ!」

こじ「やべっ!そんなのアリかよ~。」

弁慶「覚悟せい!」

こじ「しょうがない。斬馬刀、精製ッ!」

弁慶「なんだそのデカイ刀は?」

こじ「よ、っと。くらえっ!一刀両断っ!!」

上から振り降ろす。命中。

弁慶「ごはっ!み、見事なり。」

こじ「おし。手応えバッチリ。」

弁慶「ワレの負けだ。」

こじ「さて、消える前に聞かせな。お前の主人は誰だ?」

弁慶「ふっふっふ。いずれ分かるさ。さらばだ。」

カードになる弁慶。

こじ「ん~。何か、厄介な仕事に巻き込まれたような…」



はるるんサイド

はる「次の車両は…」

ゲン「お、乗客がいねぇじゃねえか。」

はる「もしかして、みんな逃げたのかな?」

2人、真ん中まで歩く。

はる「やっぱり人の気配がない。」

空間「そりゃそうです。私が消し去りましたから。」

ゲン「後ろだっ!」

ゲン、銃を撃つ。はずれ。

服装「へぇ~。結構優秀なんですね。」

はる「て、敵?」

空間「はい。そうなるでしょうね。」

服装「ここで終わり。分かる?人生の墓場、ってやつ。」

ゲン「けっ!墓場にしちゃあチンケな場所だぜ。」

はる「ふんだ。まだやられないよ~だ!」

服装「強がっていられるのも今だけです。さあ!コレを見てひれ伏しなさい!」

クィーン、服装をゴージャスなのに変化。

服装「どうです!この世界最高の輝きを持つ服は!」

はる「え~…」

ゲン「あ~…」

服装「素晴らしい!この服の前では皆恐れをなして言葉を失う!」

ゲン「…撃っていいか?」

はる「…うん。」

どきゅうん。

服装「あ~れぇ~。そんな御無体な~…」

はる「…」

ゲン「何だったんだ、ありゃあ?」

はる「さ、さぁ…」

空間「そろそろ余興は終わりです。いいですか。」

ゲン「!」

ゲン、殴り飛ばされて吹っ飛ぶ。

ゲン「ごはっ!!」

はる「あっ!」

空間「お遊びは終わりです。私はこの役立たずとは違う。名はエース。」

ゲン「え、エースだとっ!?」

はる「知ってるの?」

ゲン「賞金2000万、危険度最大のSクラス。闘ったヤツはひとりたりとも帰ってこない。」

はる「そ、そんなに!?」

空間「わざわざ説明をどうも。さて、では消えてもらいましょうか。」

はる「くっ!」

天使の翼で後ろへ下がる。エース、前に突っ込んでくる。

空間「無駄です。」

はる「は、早い!」

空間「もらった。」

エース、ボディーブロー。はるか空中で前転してかわす。

空間「くっ。その翼、やっかいですね。消えてもらいましょう。」

はる「えっ!?」

エース、零距離空間消去を後ろ回し蹴り軌道で発動。

空間「ふん!」

はる「きゃあっ!」

はるか、地面に落下。

はる「わ、わたしの翼が…」

ゲン「消えた!?」

空間「そう。私の能力は空間消去。その名のとおり一定範囲の空間内全てを消し去ります。」

はる「そ、そんな…」

ゲン「そうか、それで闘ったヤツはみんな消し去っていやがったのか。」

空間「えぇ。もっとも、みなさん勝手に飛び込んでいくんですけどね。」

はる「わたしの…はね。いちばん、気に入ってたのに…」

空間「そうでしたか。それはお気の毒に。」

はる「許せない!えぇい!」

はるか、鷹の翼を展開。

空間「再生した?いや、種類が違う。」

はる「このバカぁぁぁっ!」

はるか、突っ込む。

空間「ですが。私と接近戦をやるのは負けを認めるようなものですよ!」

はる「このぉっ!」

エース、はるかの縦斬りにカウンターで後ろ回し蹴り。はるかに当たる。

空間「まだまだですね。」

はる「うっ…」

空間「さて、そろそろ消えてもらいましょうか。まだ1人残ってますし。」

エース、はるかの首を掴む。

空間「さぁ、遺言はありますか?せめて最期の言葉ぐらいは聞いてあげましょう。」

はる「こ、このぉ…」

空間「はい?」

はる「調子に乗るなぁっ!」

はるか、ドラゴンの翼モード。エースごと持ち上げる。

空間「なっ!一体何種類の翼があるのですかっ!!」

はる「わたしは、兄さんのためにも!さくらのためにも!小次郎のためにも負けられないんだぁっ!!」

エースの首に足をかけ、フランケンシュタイナー。

空間「がっ!」

アタマから落下、エース、片膝を立てた状態で起き上がる。

はる「これで終わりだぁっ!シャイニングウィザード背面斬りぃぃぃっ!!」

シャイニングウィザード。すれ違った後に空中で横に回転、前転しながら叩き斬る。

空間「がはっ!」

はる「はぁ、ふぅ。」

ゲン「やりやがった…!」

空間「んふっ。どうやら私の負けのようですね。」

はる「はぁ、はぁ。」

空間「なかなか強かったですよ、あなた。そうだ、お名前は?」

はる「わ、私は。大下はるか。」

空間「そう、はるか。いい冥土の土産になる。」

ゲン「おっと。カードになる前に聞かせろ。アイツはこの列車に乗ってるのか?」

空間「カード?あぁ、私はカードにはなりませんよ。ちゃんと生きてますから。」

はる「えっ?ど、どういう事?」

ゲン「んな事はどうでもいい。あのカーズは乗ってるのか?」

空間「さぁ。どうでしょう。でも、いずれ会いたいのであれば出会えますよ。」

ゲン「ちっ。教える気はねぇのか。」

空間「いえ、単純に知らないだけです。…そうだ、はるか。」

はる「…何?」

空間「あなたの白い翼、もしかしたらまた生えるかもしれません。それだけ再生をくり返せるのなら。」

はる「えっ!?」

はるか、生やしてみる。無事に出てくる。

はる「ほ、本当だ。よかったぁ。」

空間「…では、そろそろお別れです。なかなか楽しかったですよ。」

エース、自分を消し去る。

はる「自分で自分を消しちゃった…」

ゲン「まぁいい。とりあえず賞金の受取人はお前にしておく。」

はる「うん。もういないのかな?」

ゲン「分からんな。ひとまず小次郎と合流しよう。もう2階はねぇみたいだ。」

はる「うん。」


小次郎サイド。

こじ「ここが最後。動力車か。はるかたちはうまくやってるのか心配だが…」

ドアを開ける。

こじ「…何もない。ここには来てないのか?いや、そんな事はありえない。」

歩いていく。

こじ「ん?誰だ?」

ダイ「…」

こじ「お前が親玉か!」

ダイ「…」

こじ「無視かよ!」

ダイ「五月蝿い。」

切符の束を刃にして投げ付ける。

こじ「おわっ!か、紙が刃物みたいになってやがる!」

ダイ「はずした。もう一度。」


こじ「くそっ!銃は…弾切れかっ!余分に持ってくるんだった。」


はるか、ゲンが追い付く。

はる「小次郎!」

ゲン「ん~?戦闘中か。」

こじ「おぉ、お前ら。気をつけろ、アイツ、強いぞ。」

はる「えっ!…か、かわいい女の子じゃない?」

こじ「かわいくても、紙を刃物みたいに硬くして投げてきたら敵じゃねぇか。」

はる「そ、そうか。」

ゲン「ん?あ、ありゃあダイヤじゃねぇか。」

こじ「知り合いか?」

ゲン「いや、知り合いというか…まぁ、基本的に無口、無反応。が、ヤツにだけ懐いてたんだ。」

はる「ヤツ、って?」

ゲン「俺に引退を決意させ、武蔵と葵が消えた真相を知ってる可能性があるヤツ。」

こじ「なんだって!?」

ゲン「落ち着け。けどダイヤがここにいる、ってのはどういう事だ?アイツは行方不明のはずなんだが。」

カー「お答えしようか?」

ダイヤの後ろからカーズが出てくる。

こじ「何だ、テメェは!?」

カー「我が名はカーズ。このダイヤの主人。」

ゲン「か、カーズだと?実在してやがったのか!」

カー「当然。噂だけの存在なんてありはしない。」

はる「じゃあ、この列車強盗は…」

カー「もちろん。私がトランプ部隊に指示したもの。」

こじ「トランプ?」

カー「そう、トランプ。我が能力は召喚。カードに名前を書くだけであらゆる物を召喚できる。」

カー「そこで名前がトランプの絵柄の名前、という奴をそろえたからトランプ部隊、ってわけ。」

こじ「ストレートだなおい。」

カー「で、この子が一応最後のダイヤ、というわけ。」

ダイ「…」

ゲン「おい、今、一応、と言ったな。」

カー「えぇ。だって、トランプよ。」

ゲン「おい小次郎。カード拾ってきたか?」

こじ「あぁ。コレだ。」

はる「カードは全部でキング、スペイド、ハート、ジャック、クラブ、クィーン、だね。」

こじ「そんなもんか。あと何かあったっけ?」


はる「エースがあるよ。」

ゲン「エースはカードじゃなく実際の賞金首だった。」

こじ「他はまぁ、数字だから目の前のダイヤを入れて基本的に名前があるのは揃ってるじゃねぇか。」

カー「そう。ブラックジャックをやるにはそのカードで十分。でもね、ポーカーだと…」

ゲン「ポーカーだと?……!」

ジョ「そう、俺が最強だ。」

ジョーカー、はるかを斬る。

はる「きゃぁぁぁっ!」

こじ「はるかっ!?」


はる「うぅ。腕を斬られた。」


ジョ「今のはほんの挨拶だ。」

カー「あぁ、紹介がまだだったね。彼はジョーカー。いわゆる切り札ってヤツさ。」

はる「うぅぅっ…」

こじ「ちっ!」

ゲン「なっ!ジョーカーだとっ!お前は…」

カー「おやおや、知ってるのかい?」

ゲン「お前の名前はヴァイスリッターのはずだ!光学迷彩はヤツの能力!ナイフに刻まれている狼の紋章!その声も忘れはしねぇ!」


ジョ「昔は昔、今は今だ」


こじ「ちっ!とにかく全員ブッ倒す!」


カー「残念だけど、私はここで倒れるわけにはいかないのでね。帰らせてもらうよ。」


こじ「待ちやがれ!誰が逃がすか!」


カー「まぁ、そう慌てるなよ。お前の事を報告に行かなきゃならないんでな。」


こじ「報告?」


カー「あぁ。そのクリエイトの能力。あのお方が欲しているのだ。」


こじ「あのお方?欲している?」


カー「そう。能力を与えるプラグインはあっても、自分に付加できないのであればあまり意味はないでしょ?だから」


こじ「ぷ、プラグイン、だと?」


カー「おや、知っていましたか。今は無き王族の天河家に代々次がれていた究極の能力。末代から頂いたわけですよ。」


こじ「な、んだと?」


カー「つまり、あのお方があの天河家を滅亡させたわけです。おかげで我が部隊も能力の宝庫に。」


こじ「そいつはどこだぁっ!」


ゲン「おい小次郎!落ち着け!」


こじ「うるせぇ!これが落ち着いていられるか!おい貴様!今すぐ教えろ!」


カー「教えてあげますよ。王家のいた城です。」


こじ「そんな所にいやがったのか。首を洗って待っていやがれ!」


カー「無事に生きて帰るつもり?この2人に殺されてしまいなさい。じゃあ、生きててたらまた会いましょう、ボウヤ。」


こじ「待ちやがれ!」


カーズ、帰る。


こじ「くそっ!こんな強盗の依頼なんざパスだ!すぐに乗り込むぞ!」


ダイ「だめー。」


ジョ「今の貴様では無理だ。」


こじ「なんだと!」


ジョ「せめて限定解除をしてからだ。」


ダイ「してからだー。」


こじ「な、なんだって?」


ゲン「お前、どういうつもりだ?」


ジョ「武蔵との約束を守るためだ。」


こじ「父さんとの約束?」


ジョ「そうか、お前はアイツの息子か。」


こじ「もしかして、父さんが消えた理由も知ってるのか?」


ジョ「あぁ。」


ゲン「どうなったんだあの2人は?」


ジョ「あの2人は…」


ダイ「じょーかー。話してる事バレた。」


ジョ「ちっ。これ以上は無理か。…見逃してやる。俺たちも帰る。」


ダイ「かえるー。」


こじ「ま、待て!まだ聞きたい事が!」


ジョ「城へ来い。生きてたどりつけば話してやる。」


ジョーカー、迷彩でダイヤごと消えてなくなる。


はる「こ、こじろう。」


こじ「…城、か。」


ゲン「…ひとまずこの依頼は終わりだな。戻るぞ。」


はる「う、うん。…いたっ!」


ゲン「大丈夫か?最後のはきいただろ?」


はる「うん。でもちょっと傷が長いだけで血はほとんど止まってるよ。打ち身のほうがひどいかな。」


ゲン「そうか。峰打ちが鋭過ぎて身が裂けたのか。…おい、小次郎。包帯よこせ。」


小次郎、無言で包帯を作って渡す。


ゲン「…よし。後は家でさくらに治してもらえ。」


はる「うん。…あ~ぁ、また怒られるなぁ。」


こじ「…待ってろよ、瑠璃。もうすぐだ。」


ゲン「おい、行くぜ。」


こじ「…あぁ。」

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