駅から始まる
ここ、糠壁駅は関東郊外にある地方都市の中心駅だが、東京都心まで直通で結ばれているため近年人口が増加を続け駅の拡張工事が行われた。
開業当初、上りと下り各2面の島型ホームが有るだけの典型的な地方都市の駅だった。
今では、待避線を含め島型ホームが4つ、計8面のホームと通過線が4本ある地方都市にしては大きすぎる駅になっている。
南北に狭く、東西に広い糠壁の町であるが交通の要衝だったため南北の連絡は整備されているが東西を結ぶ公共交通は存在していなかった。
糠壁の西端にある天然ダム湖の糠壁湖。戦時中にその水面の静かさを見込んだ海軍の水上機部隊の基地が計画され仮称:糠壁~糠壁湖線が着工されるも終戦までに完成せず、朝鮮戦争による物資不足のため敷設済みの線路は回収された。
駅拡張と共に再度東西線が計画され40年の難工事を経てついに糠壁市の東端の草壁地区と西端の糠壁湖地区が結ばれる。
工事自体は難しくないが、糠壁中央駅の工事予定地であった場所が江戸時代の処刑場跡地だったり草壁駅の場所が2転3転したりと別の要素で工事が難航した。
糠壁駅の7番・8番ホームは5番・6番ホームと隣接するはずだったのに20メートル西に離れて建設された。
本来の予定地は基礎工事中に、新しい遺骨が発掘され工事がストップし周囲をさらに調査した結果、縄文時代初期という日本史を書き換える石器加工工場が発見され永久保蔵が決定。
ホームを減らし竣工するも、西線のホームが不足し結果保存エリアの西に新たに土地を取得し拡張された。
跨線橋に作られた待合室はこの旧4番ホームの真上にあり…ちょうど遺骨が見つかった場所の真上である。
開業前日に死亡事故があり、開業が延期された糠壁駅。この駅は「旧駅長室」「現駅前ロータリー」「給水塔跡地」「駅前防空壕」「客車の墓場」「首吊り柳」という心霊スポットがあったため「跨線橋の待合室」が増えたため「糠壁駅の七不思議」が完成してしまいマニアに有名になってしまった。
「旧駅長室」終戦直後、進駐軍が婦女子を全員連行するといううわさが流れ避難していた女性の一斉自決があった。
「現駅前ロータリー」戦時中は市内電車の電停ターミナルだったため空襲を受け乗客と共に路面電車が炎上した。
「給水塔跡地」蒸気機関車が現役だった時代、蒸気機関車に水を補給する給水塔の陰で恋人同士が落ちあっていた。交際を認めぬ父親が娘の交際相手を襲撃したつもりで赤の他人の女性を射殺してしまった。
「駅前防空壕」横壁町だった当時、発見された遺跡を戦時中に防空壕として利用していたもの。発見当時から不思議なことが起こるとうわさされ戦時中に空襲の目標だった糠壁駅は人が近寄らず防空壕として使われていなかったが戦後の調査で多数の遺体が発見された。
「客車の墓場」糠壁駅で秘密兵器が積み込まれていると誤認され空襲が徹底的に行われたため終戦時は燃え残った客車が駅周辺に放置されていたため。
「首吊り柳」この柳の木で定期的に首つり自殺が起きた。
そして「跨線橋の待合室」ここの待合室はいつの間にか人が増えるとうわさされる。
糠壁大学心霊研究会のお調子者がこれほど話題の多い糠壁駅を見逃すはずはなく、毎年夏になると駅に忍び込んだり…駅で隠れて居残ったりと問題を起こすのが風物詩になっていた。
そして今年もまた…6人の男女が。
あるものは、なたで体を傷つけられ…あるものは四肢をロープで引きちぎられ…あるものは待合室の窓から地面にたたきつけられ…血みどろになって死に絶えた。
そしていつもの朝…当直の駅員は恐怖に塗り込められた学生たちを警察と救急に引き渡し待合室のゴミを片付ける。
「まぁ命は無事だしね、命だけは…」
7/30に指摘があり修正いたしました。